山下英介さんと歩く「秋冬のメンズ館」前編|永遠のアイコン、ウディ・アレンの着こなしに憧れて

雑誌『メンズプレシャス』のファッションディレクターを務める山下英介さんが「ファッションの達人のあの人とメンズ館散歩」でショッピング&スタイリング!――
メンズ館の各階をぶらりと散歩する本企画。まず山下さんと向かったのは、7階=メンズオーセンティックと、5階=メンズテーラードクロージングです。


  1. 7階|<バラクータ>の永遠の定番「G9」のアオハル的思い出
  2. 7階|「普通のものが似合う人間になりたいなと思っています」
  3. 7階|冬は、大きいコートにジョッパーズパンツと膝丈ブーツ
  4. 5階|羽織った瞬間にバチッとくる服との出合いが多くなった
  5. 5階|イタリア本国でもマニアックなものがメンズ館には揃っている




7階|<バラクータ>の永遠の定番「G9」のアオハル的思い出

雑誌『メンズプレシャス』では、メンズ館5階にあるブランドをよく掲載していますが、7階は久しぶりに来ました。7階はリモデル前のイメージが強いですが、こうやって見ると欲しいモノがいっぱいあって新鮮な気分ですね。

<バラクータ>「G9」のカラーバリエーションがとても豊富で驚きました。ショート丈ブルゾンに注目しているので、改めて欲しいアイテムです。
今の気分なら、丈の短さを強調したいので、ワイドドパンツなどを合わせて着こなしたいですね。


 
 

「G9」は大学生のときに、原宿のショップ「キャシディ」でどうしても買いたくて。買いに行った時、もう店には3XLしかなかったのですが、購入した思い出があります。オーバーサイズでコートのような着丈でしたが、そういうアイテムを「どうやって着ようかな」と知恵を絞るのが好きです。

こういう「男にとっての永遠のアイテム」は、着方によってダサくも、今っぽくも表現できるハードルが高いもので、決まると本当にカッコよくなる。チャレンジしがいがあるアイテムの一つだと思います。

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7階|「普通のものが似合う人間になりたいなと思っています」

<ブルックス ブラザーズ>は、初めてニューヨークの本店に行ったときは感動しました。
今、70年代後半から80年代のNYトラッドに興味があって、久しぶりに金ボタンのブレザーを着たいなと思っています。年代モノのボタンダウンシャツを探しているのですが、当時のロングポイント気味の襟の形が見つからないので、どうしても70年代的な気分が反映できないのが残念です。




それぞれの人が持つ“時代感”というのは大切で、若いときにはクラシコイタリアのような手の凝った「クオリティ原理主義」になってしまうこともあります。そういう道を辿ってきているからこそ、最近はNYトラッドの良さを改めて噛みしめていますね。

自分の永遠のアイコンがウディ・アレンで、「普通のものが似合う人間になりたい」と思っていますが、なかなかそういう人間になれていないので、変な服を着ちゃうんですよね(笑)。



<カンタータ>ブルゾン 209,000円 関連記事はこちら
■メンズ館7階=メンズオーセンティック


7階|冬は、大きいコートにジョッパーズパンツと膝丈ブーツ

<カンタータ>のMA-1タイプをメンズサイズで別注したというブルゾンはカッコイイですね。ミリタリー系ですが配色がきれいで、上質感があって好きですね。こうやって恐れずに高いモノを作る気概が共感できます。

<シーピーカンパニー><ストーンアイランド>は大学生の頃に好きでよく着ていました。当時はイタリアのカッコイイおじさんの代名詞的ブランドでしたね。当時も今もモノ作りは変わっていませんが、今は若い人たちが着ていて、時代は変わったなと思います。



<エンジニアード ガーメンツ>コート 74,800円
■メンズ館7階=メンズオーセンティック

<エンジニアドガーメンツ>のコートはデザインが好きでよく着ていますが、このブリティッシュアーミーのメディカルガウンをアレンジしてアップデートしたというコートもいいですね。

冬は、大きいコートにジョッパーズパンツを穿いて膝丈ブーツを履くというシンプルな着こなしが多いので、こういう個性的なシルエットが出るコートは重宝します。



<グレンフェル>スウィングトップブルゾン
107,800円 *伊勢丹新宿店別注品 商品を見る
■メンズ館5階=メンズテーラードクロージング

5階|羽織った瞬間にバチッとくる服との出合いが多くなった

プライベートな買い物は、クルマで移動している合間にします。好きな店の感じは、古着屋を含めて、こだわりの店主がいる店ですね。試着もします!ただ、お直しは細かくはしません。オリジナルフィットを楽しみたい気分の時もあって、サイズが合わないものを着るのも面白いと思っています。

この<グレンフェル>のチェックブルゾンはいいですね。<グレンフェル>は歴史あるブランドですが、数年前にクリエイティブディレクターが変わって、トレンドを敏感に反映するようになり注目しているブランドの一つです。これも欲しいな、カッコイイですよね!


 
 

<グレンフェル>はピッティ・イマジネ・ウオモでも注目度がアップしていますが、他にも日本のマーケットを意識するブランドが年々増えて、日本人のフィット感を重視するようになりました。羽織った瞬間にバチッとくる服と出会えることが多くなり、良い時代になったなと思います。

今、一番気になっているのは、80年代のフレンチアイビーですね。この前、十数年ぶりにホワイトジーンズを展示会で注文しました。




5階|イタリア本国でもマニアックなものがメンズ館には揃っている

リヴェラーノ&リヴェラーノ>がこんなに揃っているのには驚きました。このドライタッチのビンテージ風の生地、最高ですね。スーツは<リヴェラーノ&リヴェラーノ>が多くて、10年ぐらい前にビスポークもしました。

ジャケットの肩が大きくて、クラシックながら独特のムードを持ち、着ていくと格好良さがわかっていく服です。最近、自社の縫製工場を作ったので、既製服のクオリティが格段に上がっていますね。

イタリアのサルトは仕事でもよく着ますが、単なるファッションのパーツを買っている感覚ではなく、文化を共有・体感している感じが強いです。着心地の良いスーツは世の中にたくさんありますが、そういうモノとは違う感覚です。

例えば、<リヴェラーノ&リヴェラーノ>のスーツを着て、著名なデザイナーにインタビューをすると、「良い服を着ているね」と、互いに通じるものがあり、分かる人には分かります。


 

<リヴェラーノ&リヴェラーノ>スーツ 539,000円
メンズ館5階=メンズテーラードクロージング
 

またイタリア・ナポリの、<チェザレ アットリーニ>も好きです。<チェザレ アットリーニ>は抜群にクオリティが高くて、設計が圧倒的に素晴らしい。多少サイズが大きくてもおかしく見えないところに凄みを感じます。

<チェザレ アットリーニ>のファクトリーを見たことがあるんですが、アイロン担当の職人が、ピアノを弾くように生地をほんのちょっとずつ指で弾きながらアイロンの具合を調整していて、その独特な動きが印象に残っています。工場の中にサルトリアの文化がしっかり残っていましたね。

5階の印象は、他にはないモノが圧倒的にありますね。イギリスやイタリアでもマニアックなモノがメンズ館にあるのはさすがです。


■山下さんが散歩中に選んだスタイリング例はこちらから
【特別編】注目のフレンチトラッド&冬コーデをスタイリング!




■ファッションディレクター 山下英介
1976年埼玉県生まれ。大学卒業後いくつかの出版社勤務を経て、2008年からフリーのファッションエディターとして活動。
ファッションディレクターとして創刊時から参画している「MEN’S Precious(小学館) / http://mensprecious.jp」を中心に、カタログの編集、原稿の執筆が主な業務。住まいは築50年のマンション、出没地域は神保町や浅草、谷根千。古いものが大好きで、ファッションにおいてもビスポークテーラリング、トラッド、モード、アメリカンカジュアル……。背景にクラシックな文化を感じさせるものなら、なんにでも飛びついてしまうのが悪いくせ。
趣味の街歩きをさらに充実させるべく、近年は『ライカM』を入手、旅先での写真撮影に夢中。まだ世界に残された、知られざる名品やファッション文化を伝えるのが夢。
■Instagram:@eisuke_yamashita

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Text:ISETAN MEN‘S net
Photo:TAKU FUJII

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