2016.06.14 update

【インタビュー】<イシカワ>洋服ブラシ 石川和男|質の良いメンテナンスは道具選びが大切 、<イシカワ>のブラシは服の生地を傷めない一生もの

「大事なことは、しっかりブラッシングすること。帰宅したら生地の下から上に力いっぱいブラシをかけて、繊維の目の中のホコリが出たら、上から下へ毛並みを揃えて、クローゼットにしまってください。素材のツヤが変わりますよ」と流ちょうに説明しながら、立ち寄ったお客さまのニットやマフラーなどにブラッシングするのは、<イシカワ>洋服ブラシの石川和男氏。6月18日(土)と19日(日)の11時~18時まで、メンズ館8階=イセタンメンズ レジデンスで洋服ブラシ製作実演販売会を開催します。




良いブラシだから、しっかりブラッシングできる


「力いっぱいかけるというブラシはどこにもありません」というのは、<イシカワ>の石川和男氏。「ブラシの毛先の反発力を生地にしっかり伝えたいので、力いっぱいブラッシングしてくださいと言うんですが、皆さん、怖がるんですね。服にブラシをかけるのは、生地を一番良い状態に戻らせるためで、毛先の反発力を伝えないとホコリは落ちません」

そう言いながら、ブラシ作りの手を止めない石川氏は、「よく、ブラシは優しくソフトに手首を返しながら……と説明するブラシ屋がいますが、聞こえはいいけど、それではホコリは落ちません。繊維の目の中のホコリまでかき出すから、光沢が蘇るし、色合いも深くなってくる。うちのブラシに柄(え)がないのも力をしっかり込めたいからです」




習字の筆の毛になぜ目をつけたのか


<イシカワ>を知らない人がまず驚くのは、ブラッシングの前後の生地のツヤ感や風合いの違い。廉価な洋服ブラシは豚毛が多いが、<イシカワ>は、コシの強さと柔らかさを兼ね備えた馬の尾脇(おわき)毛を使用しています。

「馬の尻尾の長い毛は“本毛”といい、私たちが使っているのは、馬の尻尾の根元に生えている産毛=補助毛の“尾脇毛”です。フェザーとダウンの違いと同じですね。本毛は太くて堅くて長い毛で、バイオリンの弓などに使われています。尾脇毛は、習字の筆を作る材料で、高級筆に使われています」

石川氏が長い研究の末に、尾脇毛に着目したのは、「元はフワフワと柔らかいけれど、墨汁という粘着力のある液体をたっぷり含んで、留めたりはねたり押さえたり、自在に書けて、さらに、洗うとしっかり元通りになる」という毛の特性。「自分が求めていた、ブラシをかけたときの当たりの柔らかさと腰の強さという矛盾した条件を満たす唯一の毛だったのです」




ファッションの進化に追いつくためのブラシ


「本当にいろんな毛を試しましたが、柔らかいだけの毛だと、コシがなくてホコリが落ちない。堅い毛では、ホコリは落ちますが、生地を傷めます。そしてもう一つ、ファッションデザイナーが好んで使う生地が年々デリケートになっているのもポイントです」と石川氏。

「服の生地が粗く、街中に砂ぼこりや土煙があった時代なら、豚毛の堅い洋服ブラシでもいいでしょうが、そんな時代はとっくに過ぎていて、たとえばツイードなら昔の1/3ほどの厚さになっています。薄くて軽くて柔らかくて、繊維自体が細くなっている今の時代の洋服には、柔らかいけれど戻りがいい尾脇毛のブラシが最適です」



<イシカワ>洋服ブラシ 左:46,440円、右:54,000円


<イシカワ>洋服ブラシ 108,000円

ウールのスーツやコートに適した洋服ブラシが54,000円で、ワンランク上のカシミアニット、シルクストール、和服、毛皮まで使えるブラシは108,000円。さらに高級なビキューナ用や帽子用ブラシ、靴ブラシもラインナップ。「うちのブラシは、尾脇毛を1本1本手作業で植え込んでいて、すべて手作業で作っています。細くて良い毛なので、機械に任せられないのもあって高い。一度ブラシをかけていただければ違いが分かっていただけますが、花粉症などで困っている人からも好評で、一生使えます」

「生地が繊細でデリケートになっているので、日常のケアに困っている人が本当に多い。それでクリーニングに出すと、生地の風合いがガクッと落ちて、生地が薄くなって、堅くなって、石油臭くなって帰ってきます。ぜひ一度尾脇毛のブラシかけてみてください。生地の風合いを守りながらなめらかに仕上がって、長く大切に着られます」

大切な洋服の生地に負担をかけず、本来の風合いや光沢を保つことができる<イシカワ>の洋服ブラシ。ブラシ一本から日々のケアを始めましょう。



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