2019.09.25 update

Vol.10 島津冬樹|財布を通じて感じる段ボールのアート性と温もり

10.02 Wed -10.15 Tue
メンズ館2階=メンズクリエーターズ/アートアップ
伊勢丹新宿店メンズ館2階=メンズクリエーターズ内「ART UP(アートアップ)」において、アーティストの島津冬樹さんによるポップアップ「Carton Stand Isetan」を10月2日(水)より開催。

世界中の落ちている段ボールから財布を作る活動をしており、ユニークかつファッショナブルな作品と、環境に優しいアート活動で国内外から注目を集めている。

2019年現在、巡った国は35カ国。「不要なものから大切なものへ」。段ボールの魅力に加え、段ボールを通じて伝えたいことなどを聞いた。

イベント情報
島津冬樹 「Carton Stand Isetan」
□10月2日(水)〜10月15日(火)
□メンズ館2階=メンズクリエーターズ
イベント詳細はこちら▶


財布は段ボールの魅力を伝えるための手段


段ボールで財布を作るきっかけになったのは、学生時代に起きた些細な出来事から。

「大学2年生の時に、自分の財布が壊れてしまったのです。当時はお金もなかったので、間に合わせで財布を作ったというのが最初ですね。1ヶ月くらい使えればいいなって思っていたんですけど、1年間使えたということに自分でもびっくりして。私は多摩美術大学に通っていたのですが、そこの芸祭(芸術祭)で販売しようっていうところから本格的に段ボールで財布を作るっていうことをスタートさせました」


段ボールを使って作るということは、最初から決めていたわけではなかったという。

「ただなんとなく、世の中に捨ててある段ボールが使いやすいんじゃないかなって思って。最初に段ボールで作った財布は、ガムテープとホチキスを使って作ったかなりラフなもので、お金を入れれば財布だろうくらいの考えしかなかったですから」

ただ、もの作り自体の素地は昔からあったそう。

「昔から絵も工作も好きで、物心をついたときからものを作るということはしていました。実家が湘南なのですが、子供の頃から海岸で貝拾いをしていて。貝拾いっていうのは今の段ボール拾いにつながるところがあるのかなって思います。拾って、それを形にすることが好きだったのは一環していますね。あときのこでも魚でも植物でも、何か自分で興味を持ったものを発見してはスケッチをしたり。なんとなくそういう軸は昔からありました」


そもそも今でこそアーティストとして個人で活動をしているが、それまでは大手広告代理店に勤務していた。入社するには日本屈指の狭き門と言われている企業に勤めていながら、自身のアート活動のためにそのキャリアを失うことに迷いはなかったのだろうか。

「最初から3年くらいでやめようと思って入社はしていたのですが、もちろん、面白かったら続けるつもりでした。ただ実際、創作活動のために会社を辞めるということとなった時は、経済的な面なども考えるとなかなか踏み切れなかったですね。3ヶ月くらい悩みました。ただ、会社にいる安定した生活の中で自分のやりたいことがしぼんでいくのがもったいなかったと言いますか、それで踏ん切りがつきました。とにかく一旦辞めてみないと何もわからないですからね」


さらに島津さんは、段ボール好きが高じて『旅するダンボール(監督:岡島龍介 / 配給:ピクチャーズ・デプト)』というドキュメンタリー映画まで撮った。これは段ボールでの財布作りと直接関係がなさそうに見えるが、これが島津さんにとってはすごく貴重な時間になったという。

「単純に段ボールを使って財布を作るという活動がある中で、映画を撮っていくうちに自分の中で色んなことが整理されていって。というのも、自分でも自分自身の活動が何だかわかっていなかったりとか、社会的に自分がどういうことをやっているのか客観的に見えなかったりしたんです。自分がなぜ段ボールで財布を作るのか、なぜ段ボールが好きなのかとか。映画の撮影を通じてそういう部分がすごいクリアになっていきました」


最近では財布以外のアイテムも手がけているが、決して作品を作ること自体が目的ではないと断言する。

「最近は家具も作り始めてはいますが、形のあるものを作っていくことが活動の中心だと思っていて。財布も含めて、全ての作品は段ボールの魅力を伝えるための手段の一つです。だから財布以外で色んなものを作ってバリエーションを増やそうというよりは、形はなんであれ、段ボールの魅力を伝えるためにどうしたらいいんだろうって考える方が多いです。今よりももう少し、日常生活に段ボール自体が色んな形で溶け込んでいけるんじゃないかなって思っているんですよね」


夢は段ボールミュージアムを建てること


今回の展示のオファーが来た時は、色んなタイミングが重なったのだそう。

「伊勢丹新宿店メンズ館といえば、ファッション好きな人たちが集まるスポット。それまではずっとデザイン畑にいたので、ファッションやアパレルについてそれほど詳しくなかったんですけど、ちょうどここ1年くらいの間に自分もファッションに興味を持ち始めたので、そのタイミングでお話をいただいたので嬉しかったですね」


実は島津さん、以前段ボールで帽子を作ったことがあるそうなのだが…。

「ちょっとギャグみたいになっちゃって、自分では恥ずかしくて被らなかったです(笑)。でも将来的には世界のメゾンと何か作るなど、チャレンジはしてみたいですね。中でもヴァージル・アブローのデザインが好きなので、いつか実現できたら嬉しいです」

近年、ファッション業界を中心に『サスティナブル』という言葉が流行っているが、その流れに思うことはあるのだろうか。

「最近そのテーマでお仕事のオファーを受けることが多いですね。私の活動が、本来なら捨てられてしまう段ボールを使って、物作りをしていることからだと思うんですけど。ただ自分の活動のスタートが、サスティナブルだからとか環境に良いとかっていうところではないので、そこはしっかりと伝えていきたいです。ファッションもそうですけど、かっこいいとか、おしゃれだなとか、まずはそういう部分から入って、それで結果的に段ボールで財布を作っているっていうことが環境に優しいっていう風に、後からついてくればいい言葉かなと思っています。それを伝えるために段ボールに触れることを楽しでもらおうと、ワークショップを開催しています。楽しんで続けるっていうことが一番大事なことだと思うんですよね」


段ボールを探して世界を飛び回っているが、未踏の地がまだまだたくさんあるそう。

「北方には全然行けていないんです。あとは南米、それとコーカサス地方とか。行く国を選ぶ時はだいたい言語を基準に選ぶんです。グーグルマップを見ながら、現地で変わったアルファベットを使っていたりするのを発見すると、そこに目星をつける。それが段ボールに書かれている可能性もあるわけですから」


今回の展示には国内外から多くの人が訪れるが、作品を通じて何を伝えたいのだろうか。

「まず段ボールっていうものに、これだけの可能性があるんだよっていうことを伝えたいですね。段ボールの使い道って意外と世界で知られていないので。段ボールっていうと汚いとか邪魔なものっていうイメージがあると思いますが、そういうイメージを変えられるといいなって思います。あと財布以外に、今回はインテリアも展示するので、そちらもぜひ見て欲しいです」


そんな島津さんには将来、ファッション以外で段ボールを使って実現させたいことがある。

「貯めた段ボールをストックするだけじゃなくて、常に見てもらえるような場所を作りたいので、そのためにいつか段ボールミュージアムを作りたいですね。財布もそうですが、段ボールっていうものを通じて、様々なことを発信できたらいいなって思います」

イベント情報
島津冬樹「Carton Stand Isetan」
□10月2日(水)〜10月15日(火)
□メンズ館2階=メンズクリエーターズ

ワークショップ
□10月5日(土)・6日(日)・12日(土)・13日(日)各日15~18時
□メンズ館2階=メンズクリエーターズ
■参加費:7,000円 (所要時間:30分~1時間程度)
■予約:不要

*参加できる人数に限りがございます。予めご了承ください。
*都合により来店が中⽌又は変更になる場合がございます。また時間帯により不在の場合がございます。予めご了承ください。
*詳しくは係員にお問い合わせください。
イベント詳細はこちら▶


Text:Kei Osawa
Photo:TAGAWA YUTARO(CEKAI)


お問い合わせ
メンズ館2階=メンズクリエーターズ
03-3352-1111(大代表)