さる2月16日(土)、靴磨き選手権大会2019が銀座三越9階のテラスコートで行われた。



2代目王者は寺島直希さん。石見さんに続き『TWTG』が連覇



靴磨き選手権大会──昨年はじまったばかりのイベントながら、はやくも靴磨きの盛り上がりを周知するイベントとして機能し、今年は軽く三桁の観客が決戦を見守った。モニターの向こうの視聴者を含めればその数はおそらく数万にのぼったにちがいない(大会の模様は昨年に引き続き、ニコニコ動画で放映された)。立ち見客が通路にもあふれる会場はほかのフロアより1〜2℃高かったような気がした。

今年より一般参加が可能となったが、そこは生業としているものの強みか、決勝にはいずれも靴磨きを語るときに欠かせない企業に属するシューシャイナーが残った。

あらためてそのルールを解説すれば、主催者が用意した靴を両足20分で磨く。審査基準は光沢感、全体のバランス、所作の3項目。

靴磨き選手権大会2019決勝
靴磨き選手権大会2019決勝進出者


決勝に進んだ4名。左から岡嶋翔太さん、新井田隆さん、安倍春輝さん、寺島直希さん。


46人のシューシャイナーがのぞんだ予選、準決勝を経て、決勝に進んだのは寺島直希さん、岡嶋翔太さん、新井田隆さん、安倍春輝さんの4人。いずれも腕に覚えありな、歴戦のシューシャイナーの頂点に立ったのは寺島直希さん。昨年の石見豪さんに続き、大阪を拠点に活動する靴磨き専門店「THE WAY THINGS GO」のシューシャイナーが連続で制する結果となった。

優勝インタビューで思わず涙をみせた寺島さんはあたたかい拍手に包まれた。それはまるでオーケストラを聴き終えた観客のスタンディングオベーションに似て、靴磨きを文化に──という思いで日々研鑽を積んできたシューシャイナーの苦労がしのばれた瞬間だった。


シューカラーリング部門を制した斗谷 諒さん。

今大会では新たにシューカラーリング・エキシビションマッチなるイベントも行われた。こちらは磨きではなく、染め。“銀座の艶と華”をテーマに、画家さながら靴をキャンバスに見立てて染め上げるというもの。ステージにあがったのはジョン・チョンさん、小島由枝さん、三橋弘明さん、そして斗谷諒さん。いずれ劣らぬ手さばきに見とれているうちに制限時間の90分はあっという間にすぎた。仕上がった靴はまさに芸術といっていい域にあり、観客の息を呑む音が聞こえてきそうだった。甲乙つけがたい作品のなかでチャンピオンに選ばれたのは斗谷さんだった。

ここでは優勝を飾った寺島さんはじめ、決勝に残ったシューシャイナーたちのコメントを再録したい。

寺島直希(THE WAY THINGS GO)──人差し指と中指を交互に使いました



寺島直希(THE WAY THINGS GO)

 

ぼくの父は料理人です。休みの日は決まって包丁を研いでいた。手入れの大切さは父の背中から学びました。ぼくは野球少年だったんですが、毎日のようにグローブを磨きましたね。そうして小学校から高校までひとつのグローブを使いつづけました。靴磨きに開眼したのはフローシャイムのイペリアルを手に入れてから。野球部を引退して、髪を伸ばしはじめて最初に買った革靴でした。靴磨きをするようになって気づくんです。周りの大人はちっとも靴に気をつかっていないって(笑)。大学在学中に路上で靴を磨きはじめました。

寺島直希(THE WAY THINGS GO)
靴磨き選手権大会2019決勝


決勝戦は120%の出来です。(TWTGオーナーの)石見はフルメンテで度肝を抜きました。ぼくはぼくなりのアプローチで新しさを追求したかった。編み出したのが、人差し指と中指を交互に使う方法。人差し指で磨いているあいだは中指を休ませることができる。休ませているあいだに指表面の湿気が抜けて、その状態をリセットすることができるんです。


所作も美しくみえるよう、工夫しました。ぼくは指が太い。少しでも細くみえるよう、人差し指と中指を交互に重ねて磨きました。

両親揃って目の前に座っていました。たぶん、泣いていたと思う(笑)。今日中に京都に戻らなければならなかったので、8時の新幹線に乗って帰りました。

岡嶋翔太(R&D)──実際に履くことを考えて磨きました

 

岡嶋翔太(R&D)

 

2回目でようやく決勝に。仕上がりも満足いくものでしたが、一歩及ばなかった。

ぼくの強みは売り場併設の工房で働いていること。いち早くあらゆる靴の特性を知ることができます。自然とそれぞれの靴に応じた磨き方を身につけました。靴はカウンターひとつとっても千差万別。カウンターは鏡面磨きで意識する部材。芯が入った部位は割れる心配がないからしっかりと塗り込むことができる。競技でもただ光らせるだけじゃなく、実際に履くことも踏まえて磨きました。あくまで主役は靴であり、磨きは脇役ですからね。

入社して3年。まさか自分が現場に出ることになるとは思っていませんでしたが、これが楽しかった。成長がリアルに感じられる仕事です。

新井田隆(Brift H)──時間配分のミスが悔やまれるが、全力が出せた


新井田隆(Brift H)


予選も緊張感がありましたが、決勝はそれ以上。観客の熱が違いました。3位通過だったものの、予選は良い出来だった。惜しむらくは時間配分のミス。決勝はつま先にかける時間が足りなかった。

予選よりも薄いブラウンの靴で色がどんどん入っていきましたが、躊躇せず塗り込むことができた。これは良かったと思う。

ドレッドヘアで靴を磨く長谷川(ブリフトアッシュ代表)をYouTubeで見て、目が釘付けになりました。高校を卒業してリーガルに就職しましたが、21歳のときに募集があっておかげさまで採用されました。今回が初挑戦。来年も出たいですね。

 

安倍春輝(92-NINETYTWO-)──あと1分、仕上げに時間をかけたかった


安倍春輝(92-NINETYTWO-)

 

こんなにたくさんの観客がいるとは思わず緊張したけれど、磨きはじめれば集中することができた。ただ、決勝は安パイを狙ってしまった。ワックスを塗る時間が準決勝に比べて1分短かった。指の感覚でいけると踏んだんですが。決勝ではサフィールからコロンブスのハイシャインに変更。新品の状態なら、こっちのほうがより光らせることができると踏んだ。

もともとぼくは介護福祉士をしながら路上ライブをしていました。目の前でギターを弾いていたご同輩のブーツが格好よくて、それでこの世界に飛び込みました。昨年は準決勝の12人に選ばれ、今年は決勝まで。徐々に階段を上がっています。もちろん、来年も出るつもりです。


Photo:Tatsuya Ozawa
Text:Kei Takegawa

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