ウェブメディア『Shoegazing(シューゲイジング)』が開催する、靴づくり世界選手権とは。

先のページのダニエル・ウィガン氏が1位を獲得した、靴づくりの世界選手権大会。ISETAN靴博でも展示が行われるその内容について、主催者に聞いた。



Jesper Ingevaldssonによるウェブメディア『Shoegazing』

2013年にスウェーデン(スウェーデン語)でスタートした、クラシックなクオリティシューズを扱うウェブメディア。2016年からは英語版も始まり、一気に世界的なメディアとなった。また、ストックホルムやロンドンにて世界各国の靴を紹介する「Super Trunk Show」を開催し、近年はそこで『World Championship in Shoemaking』『World Championship in Shoe Shinning』『World Championship in Shoe Patina』などの選手権大会を行なっている。


2018年に第1回が開催された、『World Championship in Shoemaking(靴づくり世界選手権大会)』。この大会を発案し実行したのが、スウェーデン発のウェブメディア『シューゲイジング』を主宰するジェスパー・インゲヴァルドソン氏である。

もともとジャーナリストとして活動していたジェスパー氏は、あるクラシックなウールコートの購入をきっかけに、紳士の装いに関心を持つようになり、早速メンズスタイルに関するウェブサイトを始めた。ほどなくしてロークの靴との出合いから紳士靴の世界を追求し始め、『シューゲイジング』を立ち上げたのだった。

そんな彼が靴づくりの選手権を始めるにあたって念頭にあったのは、古き良き時代のコンテストだったという。
「写真や実物で、100年以上も前のコンテストの靴を数多く見ました。20世紀初頭には靴のコンテストは大きなイベントで、多くの靴職人たちがすばらしい靴を出品していました。私はその時代に回帰したいと思ったのです」

このように語るジェスパー氏。また彼は、より多くの人にハンドメイドの靴を知ってもらい、それが現代に有意義なものであると理解してもらいたかった、とも。ゆえに世界各国で上位者の展示を行えたことは、大きな成果だったと話す。

第1回はブラックのキャップトウオックスフォードが課題靴で、世界から30の靴職人が作品を応募した。第2回の課題はブラウンのフルブローグオックスフォード、前回を超える40名の参加があった。

「参加者たちから、選手権の靴をつくったことで、よりよい靴職人になれた、という声を聞いてうれしく感じました。それはまた、彼らの将来の顧客が享受する価値をもたらしたことになるのですから」

現在は靴づくりの選手権のほかに、靴磨きとカラーリングの選手権も同時に行なっている。「靴磨きの選手権は、靴のマニアではない人たちにも訴求するので、3大会の組み合わせは実に有効だと思います」とジェスパー氏。今後はアーティスティックな靴づくりの選手権もやってみたいと、さらなる意欲を見せていた。


World Championship in Shoemaking


1st DANIEL WEGAN




ブラウンのフルブローグオックスフォードが課題だった第2回の靴づくり選手権大会。第1位を獲得したのは、前回第2位だったダニエル・ウィガン氏。細身でダイナミックなシルエットが目を惹くが、特筆すべきはアッパーのクロージング(縫製)で、ウィガン氏の手作業で縫われている、1インチ21ステッチは通常ミシンよりも細かいという。

ダニエル・ウィガン

英国『ガジアーノ&ガーリング(G&G)』のビスポーク部門の責任者でありラストメイカー。オフタイムはフリーの靴職人としても活動している。9年前にスウェーデンから英国に渡り、G&Gにて修業した。


2nd CHRISTOPHE CORTHAY




ウィガン氏同様2回目の出品。前回は極めてアーティスティックな作品だったが、今回はオーセンティックなスタイルをベースに、ディテールに独自の美意識を盛り込んで順位を上げた。アッパーに現れる曲線を引き継ぐようなヒール底部の形状や、各所に配されたオレンジのカラーリングが、彼の個性を物語っている。

クリストフ・コルテ

パリの靴店で修業した後、兄のピエール・コルテ氏とメゾン・コルテを立ち上げる。数年前にクリストフ・アルガンズ氏と『アトリエ・ドゥ・トランチェット』を設立。靴に限らない、芸術的な革作品を手がけている。


3rd EIJI MURATA




「あたかもコンピュータか、3Dプリンターでつくったような精確さ」とジェスパー氏が評した、日本人靴職人が手がけた作品。ラストシルエットやスタイルは先の2作に比べオーセンティックだが、ディテールは実に繊細。ごくスムーズに仕上げられたヒールの積み上げ、破綻のないライン。それらは靴に「静けさ」を生み出している。

村田英治

千葉・松戸のビスポーク靴店『Main d’Or(マンドール)』を営む靴職人。靴学校で学んだ後、靴メーカーを経て、靴学校講師の傍らほぼ独学で手製靴を習得。既存オーダーが多く、現在は受注を控えているそう。


イベント情報
World Championship in Shoemaking 上位作品をISETAN靴博2019で展示。
9月11日(水)夜には「shoegazing」編集長ジェスパー・インゲルヴァルドソン氏と上位3名によるトークショーを開催予定。

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