2019.08.17 update

【特集|インタビュー】ファッション×アート×機能。<MINOTAUR INST./ミノトール インスト>が目指す、時代が求める服作り。(1/2)

ファッションと機能性の両立は今でこそ当たり前となっているが、いち早く時代のムードを察知し、その融合を目指したのが、東京・中目黒を拠点とする<MINOTAUR INST./ミノトール インスト>だ。同ブランドのクリエイティブ・ディレクターである泉栄一は、先見の明をもったイノベーターでもあるし、型にハマらず”ワクワク”を提供してくれる発明家でもあるし、いい公園を見つけたらひと滑りしないと気が済まないスケーターでもある。

世界中にファンを持ち、今年で16年目を迎える同ブランドが、8月21日(水)からメンズ館6階=メンズコンテンポラリーにてポップアップを開催する。今回は、泉氏にポップアップの見所はもちろん、デザインに対する哲学、大事にしている”周辺”のこと、パリに拠点を移した理由など、ざっくばらんに語って頂いた。

 


泉 栄一

<ミノトール>クリエイティブ・ディレクター
福岡・今泉にある老舗セレクショップ「ダイス&ダイス」のバイヤーからキャリアをスタート。取締役を経て、2004年に「ミノトール」を立ち上げる。現在は「ミノトール」のほか、大手家電メーカーの仕事着や、アイウェアブランドのストアユニフォームなどのディレクションも行っている。

 

イベント情報
<ミノトール インスト>ポップアップストア
□8月21日(水)~9月3日(火)
□メンズ館6階=メンズコンテンポラリー
▶詳しくはこちら
 

ファッションだけでなく、生き方まで提案する

 

──今回のポップアップは、6階=メンズコンテポラリーが掲げる「アート×ファッション」がテーマです。泉さんにとってアートとファッションはどのような距離感で捉えていらっしゃいますか。

僕は洋服”だけ”がカッコいいというのは本当のお洒落ではないと思っています。アートもカルチャーも着ているものも、ライフスタイルすべてフラットな目線で見つめた時にその人から感じ取ることができるもの。それがカッコよさだと思っています。例えばアンディ・ウォーホールも、アート界での評価のみならず、ファッションや写真から受け取るイメージがあるからこそ、時代を超えたアイコンであり続けていると思います。

──個性や自分らしさを持っている人はカッコいいですよね。

着飾ることがカッコよさに繋がるわけではないですからね。白Tシャツにデニムでかっこよく見える人はそれでいいんだと思います。でもそうではない人が圧倒的なわけで。「じゃあカッコイイとは何なの」となった時に、やはり”その人らしさ”なんじゃないかなと思います。<ミノトール インスト>の服はそんな”現代のかっこいい人”をサポートするのが目的です。着る人の時間を生み出したり、できるだけストレスを感じさせない着心地だったり、そういう意味での機能性を毎シーズン追求しています。


──働き方も多種多様になり、様々な面で自由度が増しているように思います。

仕事中は1分1秒が惜しいのに対して、2時間かけて鎌倉行きたいと思う休日もあるわけで。時間の捉え方も劇的に変化していっています。今、ショーン・ステューシーの再評価が高まっているのもそこにあると思います。サーフィンを軸に生活を考えること、トライブ=部族という横のつながりを大事にすることなど、彼らは”ファッション”ではなく”生き方”を提案していました。ライフスタイルが多様化する中で、既存のルールに縛られない服、オンオフの制約を取り払うような服も必要になっているのではないかなと思いますね。

──ポップアップの目玉のひとつが、伊勢丹新宿店限定で展開されるグラフィックアイテムです。幾何学的なモチーフが特徴となっています。


パーカ 28,080円、Tシャツ 15,120円
*伊勢丹新宿店限定



<ミノトール インスト>が目指すのは、都市生活者のための機能服。ここ数年は”着ればわかる”から、”着なくてもわかる”というところに重点を置いていて、機能性やコンセプトをいかにしてビジュアルで見せるか、そういったところにチャレンジしていました。

今回のグラフィックはジェネレータでヴィジュアル生成しています。アブストラクトペインティングと人工知能の融合と言いますか、SNS上でハッシュタグがつけられた渋谷の街並みをコンピューターに取り込んで、抽象的なグラフィックとして表現しています。


実はこれは地下鉄の路線図から着想を得ていて、水平に伸びる線と45度の線が交わる法則性を応用したプログラムが自動生成したグラフィックなんです。また、90年代のストリートカルチャーが下敷きなっているとも言えます。街に根付いた”グラフィティアート”というものを<ミノトール インスト>のやり方で、現代的に解釈してみました。

──グラフィックの下の数字は緯度と経度を示しているそうですね。

インラインが渋谷なので、メンズ館とのコラボでは伊勢丹の本拠地である新宿の象徴的な街並みを取り上げようということで、SNS上に無数に散らばる歌舞伎町の街並みを同じ手法でグラフィックにしています。街をアートとして表現することで、街とともに暮らす人々がその土地のローカライズされること、トップダウン的なものではなく横のつながりを感じていただければ嬉しいですね。

昨年からパリに拠点を移したのもあり、改めて日本を代表する街である渋谷と新宿を見つめ直すいい機会にもなりました。

 

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