木桶リターンズ!#1|木桶仕込みに挑戦する新世代酒蔵〈せんきん〉──未来に進むための原点回帰(1/3)

日本酒や醤油、味噌などを仕込む際に使われる木桶。なかでも、竹箍(たが)を編み、それで締める伝統的な大桶を製作できる桶屋は、今では日本全国に1社のみ(!)だといいます。木が呼吸することで、奥行きのある味わいを育てる豊かな微生物が棲み着くという木桶。時代とともに、生産効率などの理由から淘汰されてきましたが、いまその魅力を見直す若い世代の職人たちが現れはじめています!こだわりの味わいと先人の叡智を受け継ぐために。発酵食品に欠かせない最高のパートナーとして、木桶に新たな風を吹き込む、次世代たちの想いをご紹介します。


せんきん11代目 薄井一樹さん
1806年(文化3年)、栃木県さくら市にて創業した〈せんきん〉の11代目。効率を重視した酒造りではなく、伝統の生酛仕込みにこだわり、さくら市産の「亀の尾」を使用するなど徹底したドメーヌ化によって注目を集める若手酒造家の1人です。

かつて、木桶仕込みが一般的だった日本酒。しかし、管理のしやすいプラスチックや金属容器の登場により、木桶で造る日本酒は激減の一途を辿っています。そんななか、木桶を使ってユニークな酒を醸す酒蔵があると聞いて訪ねたのが、栃木県にある1806年創業の蔵元〈せんきん〉。木桶仕込みを導入したのは、現11代目代表を務める薄井一樹さんです。

ホーロータンクを使い普通酒の大量生産を行っていたという生家に、東京でソムリエとして活躍していた薄井さんが戻ってきたのが2004年。「昔は普通酒を5000石くらい造る大規模生産メーカーでした。ですが僕が帰ってきた時はまだ今みたいに日本酒ブームじゃなかったし、廃業寸前だったんです」。危機感を覚えた薄井さんは、金属製タンクから木桶に変え、生酛造りを始めるなど抜本的な改革を実行。そうして生まれた新しい「仙禽」シリーズは「甘酸っぱくて、品がある」と評され、一躍日本酒ファンの間で話題に。伝統的な酒造りに立ち返る注目の蔵元として、見事な再生を遂げました。そんな薄井さんの狙いは、原点回帰することにあったといいます。