【対談】デザイナー草野健一×バイヤー柴田信友「なぜ今“RRL”なのか」(1/2)

6月7日(火)まで、アメリカンヴィンテージのスピリットを体現する<Double RL/ダブルアールエル(以下RRL)>がメンズ館1階=プロモーションに期間限定のポップアップストアをオープンしています。メンズ館7階=オーセンティックカジュアル担当のバイヤー柴田信友が<RRL>の魅力を語り合う相手として指名したのが、ブランド<KENNETH FIELD/ケネス・フィールド>を主宰する草野健一さん。さて、どんな話が飛び出すでしょうか。(イベント情報はこちら


イセタンメンズに<RRL>復活!

柴田信友 今回、時代を超えて愛されるアメリカ服の本質に迫る「USAウィーク」の一環として、以前メンズ館8階=イセタンメンズ レジデンスにあった<RRL>が復活しました。
草野健一 なぜ今<RRL>なんですか?
柴田 日本の百貨店やセレクトショップには多種多様なブランドがあって、さまざまな提案をしていますが、今ここで「強い個性」をあえて打ち出したいなと。いわゆる“濃い味”が持ち味だったブランドや着こなしは、トレンドになったノームコアによって一時消されてしまいましたが、自分が担当するメンズ館7階=オーセンティック カジュアルにおいては、実は「何が流行ろうが根本は変わらない」ということをアピールしたかったんです。
草野 その根本にあるのが<RRL>なんだと。
柴田 そうです。いつの時代にも変わらない選択肢として<ラルフ ローレン>があって、彼のパーソナルな好みがストレートに出ていて、メッセージ性の強いブランドが<RRL>だと解釈しています。
草野 服の背景にあるものまでを含めて着て楽しめるブランドの一つですね。


柴田 <RRL>を語る相手として草野さんにお願いしたのは、<RRL>も<ケネス・フィールド>も、自分の知らない世界の扉を開けてくれる服なんですね。自分はバイヤーとして、洋服以外のことに目を向けさせてくれるきっかけを与えてくれるものを大事にしていて、たとえば<RRL>を着たら、馬に乗りたくなったり、うまいバーボンを飲みたくなったり、本を読んだり、アメリカへ行ってみたくなったりする。
草野 それはよくわかります。僕もアメカジを知って、80年代後半にアメリカに行ってしまいました。
柴田 それなんですよ。<ケネス・フィールド>を着たら、草野さんと同じように釣りに行きたくなったり。服が何かを伝えて行動させるというのは、ファッションのとても大事な役割だと思います。そういう意味で、<RRL>にも<ケネス・フィールド>にも勉強させてもらっています。


豊かで素敵なアメリカを体現している服

草野 柴田さんのバイヤー目線からの<RRL>はどういう位置づけですか。
柴田 ヴィンテージを扱うブランドとして<RRL>は、お客さまにわかりやすくその世界の楽しみ感じてもらえるブランドで、自分の中でもこれほど学びがある事に正直、楽しさを感じるブランドです。<ラルフ ローレン>はいつの時代にも男のクローゼットの中に存在する服ですが、「奥さんのリッキー・ローレンさんの名前を付けた<RRL>ってなんだろう?」と思ったのが<RRL>への興味の始まりで、そのブランドを立ち上げた背景にまず関心を持ちました。そこにデザイナーとしてのラルフ・ローレンのルーツがあるのだろうし、いわゆるアメリカン・ドリームの原点となる表現もあるのだろうと。
草野 なるほど。柴田さんは『ラルフ・ローレン物語』は読みましたか?
柴田 読みました。モノをつくる、生み出す楽しみと喜び、ファッションビジネスに関わる人間としての心構えをひしひしと感じました。デザイナーという目線から、草野さんは<RRL>をどう見ますか。
草野 <ラルフ ローレン>はアングロサクソン系の人が憧れる英国服をベースに、アメリカを洋服で表現した人で、「アメリカって豊かで素敵でしょ」というメッセージをストレートに伝えます。また、<RRL>のルーツは西部開拓時代の労働着であり、『大草原の小さな家』のようなアットホームな感じもあります。
柴田 そのインプレッションはよくわかります。「古き良きアメリカ」ですよね。
草野 服の作り手の僕から見た<RRL>は、まず素材が良くて、妥協して作っていない。モノづくりが上手いし、とても理にかなっています。


二人が<RRL>を着てみての感想とは

柴田 実際に<RRL>を着てみていかがですか。
草野 良い意味で、今のスタイルにフィットさせない感じがあります。僕は<RRL>の1960年代をモチーフにしたスーツを買ったのですが、素材は英国の<フォックスブラザーズ>で、縫製は<コルネリアーニ>という今の時代の代表のようなもの。それと自分が所有している60年代の古着を着比べてみたのですが、パンツの股上やわたりの太さなどかなり近いんです。正直、「上手いな」と思いましたね。これなら、“次の時代のアーカイヴ”になり得るなと思いました。
柴田 実は今日、<RRL>を着ていますが、草野さんの言うシルエットの忠実な再現性は、ブランドのポリシーだと解釈しています。<RRL>を着ることはアメリカンヴィンテージ、アメリカントラディショナルを着ることで、「雰囲気を纏う」ことができるのと同時に、どういうふうに着たらもっと格好良くなれるのかなと「着て勉強する」こともできる。<ケネス・フィールド>を着こなすのもかなり難しいですが。
草野 なかなか万人受けはしないですよね(笑)。でもブランドが目指しているのは、より多くのお客さまのクローゼットのお役に立ちたいということ。それができれば僕は服作りをやめてもいいと思っています。
柴田 その「より多くのお客さまのクローゼットのお役に立ちたい」というのはオーセンティック カジュアルのコンセプトとまったく同じです。
草野 クローゼットの中にあって、思わず毎日手が伸びる服を作りたいと思っています。


ルールを学んだ上で、もっとこう着たいと思わせるブランドは大切

柴田 今の世の中には、今風に着こなせるイージーな服がたくさんありますが、<RRL>や<ケネス・フィールド>のような難しい服は、どんなサイズやバランスで着たらいいか、「着ること」を考えさせられます。でも、両ブランドとも服の普遍的な部分を大切にしているので、着ていて硬くないし、立ち位置がしっかりしているので居心地も良い。
草野 <RRL>は考えて着たくなるブランドですね。
柴田 今日は二人ともジャケットの袖口をめくっているし、気が合うな、考えてるな(笑)と。ルールを学んだ上で、もっとこう着たいと思わせるブランドは大切です。<ケネス・フィールド>もアメリカントラディショナルがベースですよね。
草野 はい。僕は80年代後半にアメリカに行ったのですが、自分が体験した80年代以降のアメリカントラディショナルの服を中心に、各年代のさまざまな国や地域のカルチャーに着目してデザインしています。
柴田 <ケネス・フィールド>は2012年秋冬シーズンのデビュー以来、順調ですね。
草野 ありがとうございます。ジャケット、トラウザーズ、シャツ、タイを中心に、デビューから同じ素材を使っているアイテムもあり、当初から考えていた通りの服作りができています。

NEXT≫<RRL>対談後編では、服が伝える力について語り合います。