【インタビュー】<LID TAILOR>根本 修|修業時代をともに乗り越えた戦友(1/2)

当連載第一回を飾るのはリッドテーラーの根本修。根本が対談相手に選んだのは、20代の苦楽をともにしたユニオンワークスの櫻井博喜だ。ユニオンワークスといえば従来の靴修理のイメージを小気味よいほど裏切り、若者が憧れる職業に押し上げた立役者であり、櫻井はその右腕である。ビジネスクロージングの羽鳥幸彦が司会を務める。

左/根本修 <リッドテーラー>店主、中/櫻井博喜 <ユニオンワークス>工場長、右/羽鳥幸彦 メイド トゥ メジャー スタイリスト


20代は手を動かしてなんぼ

羽鳥 おふたりは20年来のお付き合いということですが、そもそものきっかけを教えていただけますか。
根本 ぼくの中学の後輩に時計修理の職人がいるんですが、ボストンテーラー(根本さんの修業先)にふらりとシャツをつくりにきたんです。ぼくが働いていることを知らなかったんだから、偶然とはほんとうに面白いものです。ネットワークの広い男で、ユニオンワークスはかれの紹介でした。ちょっとすごい靴修理の店があるから一緒にいこうって。中川(一康。ユニオンワークス代表)さんが忙しくなってはじめて雇ったのが櫻井さん。同い年だったのもあってすぐ意気投合しました。仕事終わりにユニオンワークスへいって仕事の邪魔をするのが常でしたね。で、お互い酒が呑めないんで…。
羽鳥 根本さんはともかく、櫻井さんの風体でそれは意外な。
櫻井 (根本さんとともに苦笑しながら)そうなんです。
根本 その後輩も連れてご飯を食べにいくんですが、手づくりが見直されてきた時代とはいえ、そうそう近しい境遇の人間がいるわけじゃない。職人を志す同世代として、なんでもさらけ出したものです。
櫻井 夢や愚痴を延々語り合いましたね。
根本 ビルを一棟借りしてフロアごとにスーツ、靴、時計の店をやるぞって夜な夜な気炎をあげていた。
櫻井 青臭いけど、そういうのは必要ですよね。
根本 でもたまに食事をするくらいで、じつはほとんど遊んでいないんですよね。ぼくらは自分でいうのもなんだけど、手を動かしてなんぼの時代をとことんストイックに過ごしたと思う。


羽鳥 ツーリングが共通の趣味とうかがっていますが。
根本 けっきょく数えるほどしかいっていないですが、夜中に集合して、気づいたら山梨だったというのは忘れられない思い出ですね。とっても気持ちよくて、走りすぎた。
櫻井 買ったばかりのBSA(=バーミンガム・スモール・アームズ。コレクター垂涎のビンテージバイク)はコンディションが不安で、いま考えても恐ろしいツーリングでした。
羽鳥 最近はどうですか。
根本 アトリエのディスプレイ用にベスパは残しているけれど、ふたりで走ったハーレーのアイアンスポーツは開業資金で売っちゃったから、とんとご無沙汰しています。櫻井さんも処分しちゃったんだって?
櫻井 100万かけて直らなかったので、泣く泣く。まぁ、40すぎてまたあんまり遊ぶ余裕もありませんしね。子どもが小さいんで、休みの日はずっと一緒。家で音楽を聴く時間すらなくなりましたが、これはこれで悪くない。
根本 子育てはいまならではの楽しみだからね。ぼくのところは上が小3だけど、いまだに一緒に寝ますもん。だから休みの日の仕事の電話はとてもテンションが下がります。櫻井 ふたりしてイクメンですね(笑)

後篇へつづく≫