今回取り上げるのは、英国の雄<Church‘s/チャーチ>、<CROCKETT&JONES/クロケット アンド ジョーンズ>、スペインメイドの<CARMINA/カルミーナ>、そして国産を貫く<三陽山長>の4ブランド。ブランドの成り立ちや木型(ラスト)、レザー、デザインなどがまったく違う4ブランドの定番&人気モデルをピックアップした。

福田 以前ご紹介した19,000円や3万円台の紳士靴の魅力の一つは、誰もが履きやすいと感じる最大公約数的な履き心地の確かさにありますが、足型というのは百人いたら百の足のカタチがあります。今回取り上げる4ブランドの靴は、定評ある履き心地に加えて、ブランドのアイデンティティーや靴が纏っている雰囲気など、“感情的なシンパシー”が加わってきます。
田畑 確かに“感情的なシンパシー”というのは高級靴の持つ価値を表すものですね。
福田 その価値の一つが「モデル名」で、<チャーチ>の「コンサル」を履きたい、国産が好きだから<三陽山長>の「友二郎」を選ぶなど、名前が付くことにより愛着が湧いてきます。また、作り手の職人の「より良いコンサルを作ろう」という気持ちも伝わってきますね。
田代 英国の靴では「ペットネーム」と言われますが、これらのグレードから個々のモデルに名称が付いてきます。大量生産ベースの型番から、固有のペットネームが付いてくることで、たとえば「どこの靴を履いているの?」と尋ねられたら、『<クロケット&ジョーンズ>の「オードリー」です』と答えることができて、特別な気分になりますよね。
齋藤 言葉にしなくても「良い靴を履いている」という自信にも繋がります。


田代 今回選んだ靴は、生産効率よりブランドやデザインの価値に重きが置かれるので、好みが分かれてきますが、自分の足にフィットする木型に出合うと、「このブランドのこの靴を履きたい」という思いが強くなります。
田畑 私は入社して14年目ですが、このグレードの靴はメンテナンスをしながら履いていて、捨てた靴はありません。10年選手ばかりで、どれも現役です。グッドイヤーウエルト製法なので、自分の足裏の立体感に合わせて中底が沈んでカタチを変え、フィット感が上がっていくところから楽しくなります。
田代 確かに、この辺の靴は買って5~6年してから「買ってよかったなぁ」と思える靴なんですよね。そうして毎朝の靴選びの先発ローテーションに仲間入りして、10年目ぐらいから徐々に履く頻度は減りますが、しっかり抑えに回ってくれます。
齋藤 それでたまに履くと、買ったときの思いが蘇ってくるんですよね(笑)
田畑 19,000円や3万円台の靴は最初から履きやすくて、“即戦力の逸材”ですが、このグレードの靴はじっくり育てて頭角を現していって、5年目ぐらいに“先発&最多勝投手”という感じでしょうか。
福田 その例えはいいですね。最初はアッパーの革の硬さやレザーソールなどが気になるかもしれませんが、自分の足に馴染んでくると、時間とともに育てた自分だけのマスターピースになります。

 

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