2018.03.28 update

【インタビュー】<オールドホームステッダー>福原聡|こだわりと美学──とことん突き詰めたアンダーウェアは、”下着”の概念を変えていく(1/2)

身につけるアイテムのどこにこだわりを持つか。”下着”というものにこだわることができる人は、”細部まで抜かりなく”という点において、豊かなライフスタイルを送っているであろうことは容易に想像がつく。しかし、コートやジャケットなど、人の目に直接触れるアイテムには気を使っているが、下着はそうでもないという人がほとんどだろう。

<Olde Homesteader/オールドホームステッダー>は、そんな風潮に一石を投じるブランドになるだろう。仕立ての良いシャツのような、美しいステッチワーク。リラックス感のあるシルエット、素朴で味わいのある生地。そして、肌に触れたときに感じる心地よさ。今回は、同ブランドの仕掛け人である福原聡氏にインタビューを敢行。ブランド立ち上げの経緯からこれまでについて、ものづくりへの思いなどを聞いた。
日常で何気なく使われている「モノ」の本質に向き合い、本当にいいと思えるプロダクトだけを作っていきたい。わたしたちの商品を通して、そんな想いに触れてもらえたら幸いです。


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──まずは、ブランドを立ち上げるに至った経緯などを教えてください。

元々は古着を扱うセレクトショップに勤めていました。そこでオリジナルブランドを手がけることがありまして、洋服をずっと作っていました。その時になんとなくですが、半年周期で変わってしまうファッションサイクルに疑問を持ってしまって…。改めて俯瞰してアパレルについて、ファッションについて見つめ直す必要があるなと思いました。

そこで現在の会社(株式会社ノーム。カーテンからラグ、下着まで、様々なファブリックを扱う。200年以上続く播州織りがベースにある)に入って、衣食住の一部としてのファッション──、ファッションも”暮らし”の一部なんだよなと、気づくことができました。そして、ちょうど時を同じくして、一枚のトランクスと出会いました。それが全ての始まりですね。

──そのトランクスの何が特別だったのでしょうか?

1940年代くらいのビンテージのデッドストック、アメリカのストアブランドのものでした。素朴だけど肌触りが良くて丈夫そうな生地、そして細かいステッチで縫われた縫製。日用品である下着ですが、とても丁寧に作られていて、思わず心奪われてしまいました。

現在下着市場ではボクサータイプのパンツが主流なんです。ですが、このトランクスと出会った時に、トランクス本来の良さを知ってもらいたいなと強く思いました。これは絶対伝えるべきだと。今思うと、最初は思い込みですよね。しかし、思い込みが強かったからこそ、いまの縫製工場をはじめ、いろんな方々とつながることができました。


──デザインはそのトランクスがベースになっているということでしょうか?

デザインは、ビンテージのものから着想を得ています。点が線になるイメージですね、20世紀初頭のものから、前述のきっかけとなったものなど、これまでリサーチしてきた全てのアンダーウェアの集積が、一枚のトランクスで表現されている、そんなイメージです。

コンセプトの助けになったのが、20世紀初頭のアメリカのあるストアブランドのカタログです。このカタログには、日用品はもちろん、家まで掲載されていて、トータルで世界観が表現されていました。フォントだったり、イラストだったり、すごい熱量で作られているなと感じました。そんな風に人々の生活を下支えするような存在でありたいと、当時を想起させるヴィジュアル作りにもこだわっています。

──おっしゃっる通り、パッケージやフライヤーなどもとても素敵だと思います。

それこそ20世紀初頭って、下着一つとっても貴重なわけです。今みたいに物資的に豊かというわけではないですから。だから作ったものをいかに届けるかということも当時の人は頭を捻っていたんだと思います。


──下着にも知られざる歴史があるんですね

調べれば調べるほど、面白いことが出てくるんですよ。下着ってこんなに歴史があるんだって。大量生産に移行する前のトランクスは非常にものがいいんです。とはいえ、例えば腰のゴムなどは今の方が確実に良かったりする。だから、古き良き部分は大事にしつつ、今にフィードバックするという感じですね。

──ここまでこだわる理由ってなんなんでしょう。

単純に面白いからですよ(笑)。それって絶対、人に伝わるんです。下着って、肌に直接触れるアイテムなので、素材の良さをダイレクトに感じていただけます。ステッチやシルエットなどもそうですが、まずは素材の良さを感じていただきたいですね。

パーソナルな楽しみってこれからすごく大事になると思います。「ああ、これって自分に必要なんだ』って思うもの。それって決して華美なものでなく、普遍的なものだと思うんです。もちろん一つのものに決めつけているわけではなくて、いいものを幾つも知ることが大事だと思っています。その結果、大量生産のものを選ぶか、人の手がたくさん入って作っているものを選ぶかは、その人の自由です。

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