テーラー 根本 修×スタイリスト 羽鳥 幸彦

既製品で済ますことがほとんどのコートをあえて誂える。この究極の贅沢を、いまこそ味わってみようじゃないか。


ビジネスにおけるスーツの必然性が低下したからといって、スーツそのものの需要がなくなるわけではない。これからはむしろ、自己プロデュースのための「コスチューム」としての役割が大きくなっていくに違いない。そんな考えのもと、メンズ館5階=メイド トゥ メジャーでは、哲学をもったテーラーともコラボレートしている。ここではスーツのほかにも、ジャケットやスラックスも扱っているが、コートのオーダーも受け付けているのはご存じだろうか。

羽鳥幸彦 店頭で大々的に打ち出しているわけではないのですが、ディスプレイや接客の流れのなかで、さり気なくお伝えしています。すでにスーツを2、3着オーダーされていて、私たちもお客さまの趣味嗜好やスタイルの理解を深めたところで、次はコートをお試しになりませんか、となるケースが多いですね。
根本修 スーツがある程度揃ってからという方は、最後の味付けのようなイメージを持ってる場合が多いですよね。でも、なかにはオーダー初体験で、いきなりコートという方もいらっしゃいます。そういう方は目的が明確。生地も普通のウールやツイードではなく、キャメルヘアのコートとか、カシミヤのコートが欲しいからオーダーしにきた、といったモチベーションの方が多い気がします。


根本修

1972年生まれ。東京・渋谷の名店、ボストンテーラーで研鑽を積み、テーラー・ケイドを経て2006年に西荻窪にリッドテーラーをオープン。

羽鳥 コートのスタイルは、クラシコイタリアが好きだとか、ブリティッシュが好きだとか、アメリカンが好きだとか、基本的にはお客さまがお好みのスーツスタイルに合わせて選ばれる方がほとんど。先ほど、スーツを何着かオーダーしたあとにおすすめすることが多いと申し上げましたが、先にスーツをオーダーいただいていれば、その型のフィッティングの好みがわかっているので、最適なコートを提案できるという利点があります。
根本 だから、いきなりコートという場合は、どういう用途で着るのかを詳しくヒアリングします。スーツに合わせるのであれば、オーダーの際は自分のテイストがわかるように、好みのスーツを着てご来店いただいた方が話は早い。それに、オンで着るのか、オフで着るのかでもフィッティングは変わります。両方のシーンで着たいとなると、ジャケットを中に着ることを前提にするしかない。ただ、それも素材を極力薄くしたジャケットの上からカシミヤコートをはおるとか、着こなしによって解決できるので、そういった提案もできます。

自分だけのコートを誂える醍醐味とは


英国の名門マーチャントのものをはじめ、多彩な生地を取り揃えている。

──スーツとコートのオーダーで大きな違いはありますか?

根本 私見ではありますが、スーツ10着に対してコート1着ぐらいのバランスで考えるのがちょうどいいと思います。コートを10着持っている男性はあまりいませんが、せっかく誂えたコートだったら、どのスーツにも合わせたいじゃないですか。そうすると、必然的にチャコールグレーやネイビー、あとは少し遊んでブラウンやライトグレーになってきます。必然的に色が限定されるので、あとはクオリティで差をつけるしかありません。でも、もっと遊びたいという方には、同じコットンでもミリタリー調のベンタイル生地とか、それに少し柄が入った生地をおすすめします。
羽鳥 メンズ館の場合、今シーズン力を入れているトレンチコートでは、ネイビーや黒をおすすめすることが多いですね。あとはお客さまのスタイルを拝見して、色や素材を一緒に考えていきます。特にフィッティングは好みがそれぞれあるので、実際にサイズゲージを試着していただきながら、調整していきます。スーツと比べると変更箇所は少なくて、基本的には着丈と袖丈、身幅の調整がメイン。ただフィッティングに関しては、SからLLまでの4サイズのなかで、ゆったりめが好きな方には1サイズ大きめを選んで身幅を詰めるとか、逆に1サイズ小さめを選んで身幅を出しましょう、といった提案はよくさせていただきます。今だとの納期は、だいたい注文をいただいてから、1か月後くらいですかね。

バックルやボタンの種類も選択可能。

根本 コートの場合、オーダーの利点としていちばんわかりやすいのが着丈の調整でしょうね。ただ、それも今いろんなブランドでやりはじめていますよね。
羽鳥 でも、オーダーだといろんな部分に目を配ることができますよね。たとえば、袖丈も既製品だと合わないという方は少なくありません。特に、トレンチコートだと袖口のベルトの適正位置があるので、簡単にお直しができないですし、着用の際にグローブをするとかしないかとかでも違ってくる。そのへんを自分仕様にできるのは大きいですね。
根本 確かに。あとは同じトレンチコートでも、ダブルとシングル、ラグランとセットインでも印象が大きく変わってくる。僕が監修したコートでは、基本的にクラシックなディテイルを選んでつくっているので、すごく襟が大きいとか、返りが低い、高いはないんですよ。でも、その分、組み合わせの面白さはありますよね。ラグランだったらオーバーサイズで着るのがいいとか、セットインだったら肩幅ぴったりに合わせるのがカッコいいとか。
羽鳥 若い方だったら、シングルで腰ベルトなしもいいですよね。バルマカーンコート感覚では着れますし。
根本 気軽に楽しんでほしいですよね。もちろん既製品に比べると少し値は張りますが、それでもどんなスタイルにも合わせられるコートを手に入れられる。汎用性が広いことが条件だと、どうしても無難な感じにはなってしまいますが、オーダーの楽しみはその過程にこそあるのだと思います。できあがるまでの時間も、喜びの一部だと思っていただけるとうれしいですね。


<リッドテーラー>主宰の根本氏監修のコートコレクション。こちらはコットンギャバジン製だが、前合わせやショルダーの種類だけではなく、エポレットやD環の有無など、細かいところまで対応が可能。
<リッドテーラー>コート仕立上り 140,400円から
*お渡し:約5週間後から

*価格はすべて、税込です。

お問い合わせ
メンズ館5階=メイド トゥ メジャー
03-3352-1111(大代表)