「夢の工房」/ Dreaming Factory Idem Paris 【伊勢丹新宿店】
- 04.09 Thu -05.06 Wed
- 伊勢丹新宿店 本館2階 イセタン ザ・スペース
ピカソやマティスの時代から続くパリの印刷工房「Idem Paris」、そのとなりに併設するギャラリー「Item Editions」
両レーベルのコレクションから厳選した34点のエディション作品を展示販売し、その歴史と、数々の著名アーティストたちの制作活動をご紹介します。
1881年、地図印刷業者エミール・デュフレノワによって建てられた「Idem Paris」は、パリ・モンパルナス地区の中心で第二次世界大戦までアトリエとして運営されてきました。同工房には、マティス、ピカソ、ミロ、シャガール、ブラック、ジャコメッティら20世紀の巨匠たちと共演したフェルナン・ムルロの石版印刷機が所蔵され、伝統的な石版によるリトグラフ制作を今日まで継承しています。
100年以上の歴史を持つプレス機と作業環境を守り続ける、まさに “夢の工房” として知られています。
1990年代には現オーナーのパトリス・フォレストが工房を継承し、名称を「Idem Paris」へ。ソフィー・カル、JR、加藤泉、ウィリアム・ケントリッジ、ポール・マッカーシー、レイモンド・ペティボンといった新世代の現代アーティストたちが、今なおこの場所で作品制作を続けています。
Statement
idem――書かずにはいられない場所
「idemを初めて訪れたのは、もう15年以上前のことになる。それでも、あの場所に足を踏み入れた瞬間を、まるで昨日のことのように鮮明に覚えている。
緑色にペイントされた扉を開けて入っていくと、ギイイ、ガッシャン、ギイイ、ガッシャン……鉄のプレス機がぶつかり合うリズミカルな音が聞こえてくる。美術教室を思い出させる、どこか懐かしいインクのにおい。古いガラスがはめ込まれた天井から穏やかな光が降り注ぐ中、ずらりと並んだ黒光りするプレス機がテンポよく動いている。ギイイ、ガッシャン、ギイイ、ガッシャン。ロールがひと回りするたびに、色鮮やかなリトグラフがふわりと飛び出してくる。プレス機の脇で待ち構える職人たちは、この世に誕生したばかりの大切な作品を一枚一枚受け止める。
ベル・エポックにタイムスリップしてしまったような場所で、訪問者をあたたかく歓迎するオーナーのパトリス。初めて会った時、彼はこう言った。――君は小説家(ロマンシエ)なのかい? だったら書かずにはいられないはずだ、この場所のことを。
パトリスの予言通り、私はこの場所を舞台にした小説「ロマンシエ」を書き上げた。その読者が、今でも時々idemの扉をノックするという。
あの音、あのにおい、あの空気感、個性あふれるリトグラフの数々。思い出しただけでもときめいてくる。
あの場所は今も確かに在る。そしていつまでも在り続けてほしい。idemを訪問したすべての人の願いは、それだけだ。 」
原田マハ(小説家)
Artist
【Idem Paris】
Akira Minagawa
『Idem Paris への想い』
「idemは私にとって制作の場であると同時に同志の集まる親愛なる居場所である。そこに流れる空気にはかつてのピカソ、マティス、シャガールなどの名だたる芸術家から脈々と流れる創造性とそれを支え続けてきたアルチザンの意気込みが漂っている。現在のidem もその伝統を携えたままアーティストを温かく迎え制作を尊重するオーナーのパトリスと彼を支える素晴らしい支援者によって工房は情熱の鼓動を打ち続けている。私はParis の早朝、ホテルから歩いて工房に向かうあいだこれから制作する新しい創造との出会いの喜びとidemの仲間たちに会うことのうれしさで満たされている。この度、フランスの誇るidem Paris という版画工房とそこから生まれた素晴らしいアーティストの作品が日本にあらためて紹介される機会を心から歓迎します。」
皆川 明(minä perhonen デザイナー/アーティスト)
Jean Jullien
Jean-Philippe Delhomme
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Lea with Notebook
2025
H60 x W73.5 cm
Edition of 60 on BFK Rives paper
「私は、直感的で直接的な方法で作業するのが好きです。Idemのアトリエでは、そのような方法で作業することができ、とても自由な表現が可能で、機械を操作するマルタンとも非常に円滑に協力することができ、色や細部の調整において、彼と深い信頼関係を築くことさえできました。私は様々な媒体を使い分けられるのが好きで、リトグラフは私の絵画制作の延長線上にあるものであり、さらに多くの経験を積みたいと思っています。孤独な絵画制作とは対照的に、私は機械を囲んでチームで作業することを楽しんでいます。
また、石、紙、インクの輝きと透明感(その匂いも)、そして石や版を濡らすために多用される水など、さまざまな要素が関わりあっていることもとても気に入っています。水を使うと、まるで船に乗っているような気分になることもあります。
リトグラフは、私に異なる考え方をもたらしてくれます。並行して進めている絵画は、しばしば一回のセッションなのに対し、リトグラフはより長いプロセスで、時には数日かかることもあります。これにより、色を分解してニュアンスが互いにどのように作用するかを確認し、より長い時間をかけてニュアンスを選ぶことができます。また、印刷が進むにつれて驚きも生まれ、これもまた精神を大いに刺激します。そして最後に、Idemでは、歴史に満ちた場所で制作でき、19世紀以来これらの機械で印刷を行ってきた多くの芸術家たちの長い伝統に連なる喜びがあります。」
Jean-Philippe Delhomme(アーティスト)
Momoko Ando
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Back home
2009
101 x 75 cm
Edition of 42 on BFK Rives paper
Philippe Weisbecker
Clair ObscurⅠ
2025
H66 × W52 cm
Edition of 30 on handmade Japanese paper
「ある時、昔、私の好きな浮世絵の本を眺めていると、日常の情景が営まれる「場」の風景に目が引き寄せられた。伝統的な日本家屋の建築に魅了され、人の気配のないその場がどのように見えるかを考え始めたのだ。土壁、障子、床の間、腰掛け、そして常に在る畳が配された部屋や縁側、廊下は、調和と静けさに満ちた落ち着きを醸し出していることに気づき、そこから「畳」シリーズが生まれたのである。
最近では谷崎潤一郎の『陰翳礼讃』を再読するうちに、25年前に訪れた京都御所での体験がよみがえった。今なお、薄暗さにすっと包まれるようなあの感覚が心に残っている。その感覚こそを、リトグラフの「Clair‑Obscure」シリーズで表現したいと考えている。
今回の作品制作にあたり、パトリス・フォレストとIdemの素晴らしいスタッフから招かれて制作の場を得たが、過去・現在・未来の記憶が折り重なるこの場所ほど相応しい場はないと感じている。」
Philippe Weisbecker(アーティスト)
Stanley Donwood/ Thom Yorke
Get Out Before Saturday
2025
H76 x W76 cm
Edition of 99 on BFK Rives paper
「これらのリトグラフは、パリ中心部にある19世紀創業の版画工房Idemで制作しました。Idemは、モンパルナス通り沿いの控えめな小径を抜け、質素な金属の扉を開けてはじめて姿を現す、まるで不思議の国のような場所です。扉の先には自然光に満たされた広大な工房が広がり、巨大な印刷機が並び、機械が織りなす印刷のリズムと空気感で満ちています。今回の版画は、この目的のためにIdemへ送られた原画をもとに、ここで直接制作されました。
作品は、色を幾重にも重ねたレイヤーで丁寧に構成され、工程の各段階は、版画が原画と完全に対応することを確かめるため、絶えずチェックされながら緻密に管理されます。高度な熟練を要する、超自然的な錬金術のようなプロセスです。」
Stanley Donwood(アーティスト / ライター)
Toeko Tatsuno
AIWIP – 21
2012
H65 x W48 cm
Edition of 35 on BFK Rives paper
Yuumi Domoto
Chimata 6
2024
H44 x W53 cm
Edition of 30 on BFK Rives paper
「モンパルナスの版画工房idemには、本棚のように石板が壁いっぱいに並べられている。石はドイツのバイエルン地方・ゾルンホフェンで採掘される石灰岩である。炭酸カルシウムを多く含むキメの細かい石で、恐竜の化石が発掘されることでも知られる。この上を恐竜たちが走っていたのだろうか。冷たい石板にそっと手を当て太古に想いを馳せれば、ここはまるで地球図書館。偉大なアーティスト達はこの石を削っては絵を描き、刷ってはまた削り、幾重にも絵を重ねた。石に記憶を刻印してきたのである、なんと素敵なことだろう。
フランスでは版画をオリジナル作品と考える。部数が設定されていること(エディション)、直筆のサインがあること、刷った後の版を廃棄することでオリジナルと見なされるのだ。日本では「一点もの=価値が高いもの」と捉える傾向にあるが、フランスでは一点ものかどうかではなく、創作の主体が誰なのかが基準となる。刷り師は優れた技術を持つ名匠として尊ばれ、作家と刷り師と工房は三位一体なのである。また、16世紀以降フランス国内で作られた版画は全てBFA(フランス国立図書館)に登録、所蔵されている。フランスの版画とはそういうものなのである。
idemとの最初の出会いは2021年。無印良品クリエイティブディレクターの小池一子氏に招かれて版画を制作するチャンスをいただいた。アートを日常に届ける「日常芸術」がテーマ。この企画には4人のアーティストが招かれたが、折しもコロナが猛威を振るった、いわゆるロックダウンの最中である。idemに赴いた作家は私だけだった。idemで版画が刷れるなら死んでもいい、くらいの覚悟だった。どうしても自らの手で版に絵を描き、刷り師とともに制作してみたかったのである。飛行機も、パリの街中も、美術館も閑散としていた。制作が終わると毎日ルーブルに通ったが人っこ一人いない。かのモナリザ(レオナルド・ダ・ヴィンチ)とカナの婚宴(パオロ・ヴェロネーゼ)が向かい合う、普段なら絵も見えないほどの人で溢れる大部屋も独り占め。誰も居ない廊下にずらりと並ぶ名画の前に呆然と立ち尽くし、自分の無力さをたっぷりと思い知らされて深い溜息をつく。贅沢すぎて二度と経験できないご褒美つきだった。
リトグラフの魅力にすっかり心を奪われてしまった私は、3度もidemを訪ねている。」
堂本 右美(アーティスト)
Artist
【Item Editions】
Izumi Kato
Untitled 7, I
2016
H91 x W64 cm
Edition of 36 on BFK Rives paper
「キュレーターの高橋瑞木さんに紹介されて工房を訪問したのがきっかけで、仕事するようになり約10年経ちました。なにより工房の雰囲気が良く、アーティストに対してリスペクトがあり、僕の好きなアーティスト達が仕事していたのも好印象でした。当初、版画に興味が無かったのですが、一緒に仕事してみたら、楽しく、たくさんの発見があり、作品の展開にも役立ちました。こういう場所が無くならずに残っていくといいなと思います。」
加藤 泉(アーティスト)
Raymond Pettibon
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No title
2019
H76 × W54.5 cm
Edition of 40 on BFK Rives paper
この企画は以前ISETAN THE SPACEで展示を行ったジャンフィリップ デローム氏とのご縁からIdemのパトリスより連絡を受けたことからスタートした企画です。
足を踏み入れた途端時代を飛び越えるような感覚と、そこにある見たことない大きなプレス機。現代のアーティストに愛され続ける理由がそこにありました。長く続く貴重な工房への、アーティストや働く工房の人々の思いを乗せて、この企画をみなさんに届けたいと思っています。
大田 彩(バイヤー/キュレーター)
- 開催期間:4月9日(木)~5月6日(水・振替休日)
- 開催場所:伊勢丹新宿店 本館2階 イセタン ザ・スペース
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イセタン ザ・スペース
本館2階 | 婦人服,婦人雑貨
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記事提供元
伊勢丹 新宿店|三越伊勢丹店舗情報