「とくに意識したのはパーマネントやアルチザンといった、メンズ館の春夏キーワードにもなっているテーマ性です。伊勢丹メンズ館はつねに世界中から良いものを買い付けていますが、そのベースには魂というか、妥協のないモノづくりがされているものを伝えたいという想いがあります。たとえばそれは、職人が手で仕立てることに意味がある服。単に設備投資されていないことを理由に手作業を行っているだけの工場は少なくありません。手で縫うことに意味があるからこそ、ミシンを使わない職人の矜持ある服を紹介したいのです」


<リヴェラーノ リヴェラーノ>ジャケット432,000円、<ボリエッロ>シャツ38,880円、<セブンフォールド>ネクタイ30,240円

山浦の想いが伝わるのは、そのバイイング。昨秋はフィレンツェの名店・<リヴェラーノ リヴェラーノ>のレディメイド(既製服)を買い付けている。同店のオーナー、アントニオはマエストロの異名を持つイタリアテーラー界の重鎮で、その唯一無二といわれる独自の型紙は門外不出の逸品で、世界中のウェルドレッサー憧れの的である。フルハンドで仕立てることに意味があるこのスーツを、日本で展開するにあたりバイイングの苦労は計り知れないものがある。さらに今季から伊勢丹メンズに登場する新たな作り手への思いも深い。


<シモノゴダール>ポケットチーフ8,100円


「フランスにシモノゴダールというハンカチーフ、ポケットチーフの有名なメーカーがあります。創業は18世紀という老舗ですが、そのチーフの縁はすべて手作業で巻き縫いされているんです。最高峰の素材だけを使い、200年以上も歴史があって、世界的にもトップメーカーなのに、縁の巻き縫いだけは効率化しないで頑なに手でまつっている。そうすることで美しいドレープの入った、やわらかな表情が実現するからです」

本物を届けるための売場作りも、これまでにない試みがある。メンズ館5階は、メンズテーラードクロージングと改称され、山浦が手掛けた通称"il Barbiere"と題したクローズドのサロンスペースを新設される。長尺のカウンターを設え、フィッティングルームの奥にはVIP向けのドレッシングルームを用意。フロアの三分の一程を半個室化できる移動式ウォールを備えているため、トランクショーの後には顧客向けのカクテルパーティを開くこともできるという。


「こだわりあるお客さまとメンズ館との関係性を、より密にしていける場所にしたいんです。ネットで簡単にモノが買える時代に、あえて商品をじっくり見ながら語らえる場所、男の語り場をつくりたいと思っています。本当に良いものをお求めのお客さまには、最高の商品と最高の時間を提供したい。そのためには、わざわざ足を運んでいただく価値ある場所でなくてはならないとも考えています」

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