2016.05.26 update

【インタビュー】慶伊道彦(<フェアファクス>代表取締役)|60年代の映画の中の男たちに感じるメンズスタイル

フェアファクスコレクティブ代表取締役で、日本のネクタイ業界の第一人者である慶伊道彦さんを招いて、6月4日(土)にメンズ館1階=ドレスシャツ・ネクタイでトークショーを開催します。トークショーのテーマはずばり、「男の格好良い着こなし方」。慶伊さんが大好きな60年代の映画の中の男のスタイルを見本に、メンズスタイルの“HOW TO”を解説していただきます。ぜひご参加ください!


トークショーは、簡単な言葉でわかりやすく

――今回のトークショーは「USAウィーク」の一環として、“アメリカなら慶伊さん!”というご指名ですが、メンズスタイルのHOW TOをお話いただけるとか。

そうですね。6月4日(土)は、「60年代の映画から感じるメンズスタイルのHOW TO」と題して、今一番関心の高い“クールビズの装い方”をはじめ、ポケットチーフの魅力、白シャツの魅力、ハットの魅力、そして着心地に通じるミディアムフィットまでお話できればと思います。

――慶伊さんが60年代の映画に惹かれる理由は?

60年代から70年代にかけては自分の青春時代で、夢中で映画を観たし、日本のメンズファッションの夜明けでもありました。また、ここ最近は、アイビーを中心としたアメリカン・トラディショナルの風も吹いていて、60年代の映画は着こなしの良いお手本になると思います。当日は難しい話ではなく、簡単な言葉でわかりやすくお話します。

――なぜ60年代のスタイルが今参考になるのですか。

この2~3年、当時の映画をまた見直しているのですが、60年代の男の着こなしをベースに、今日風に味つけをするのが、今の男の賢いおしゃれに繋がります。


『アパートの鍵貸します』は必見です!

――当時の映画で、1本だけ選ぶとすると何になりますか。

難しい質問ですが、1960年公開の『アパートの鍵貸します』ですね。ジェントリースタイルという意味で、完璧なトラッドルックが観られます。

――完璧なトラッドルックとは?

映画はアカデミー賞作品賞などを受賞した名作で、ニューヨークの保険会社に勤めるさえない平社員をジャック・レモンが演じます。彼は既製服のアイビースタイルが良く似合いますが、上司の部長はオーダーメイドのスーツで、その対比も面白い。当時、アイビーがスタイルのトレンドになってきて、既製服がおしゃれになっていくのですが、若いときはわからなかったけれど、今見直すと、そんな新しい発見があります。


映画の場面からカッコイイ基準を知ろう

――慶伊さんはご自身のブログの中で、「クールビズの定義は難しい」と綴っていますが、あえて定義すると、どう表現されますか。

アメリカ的な感覚でジェントルマンスタイルを考えると、「自分の立場、場面を考えて、自分が最も心地良いスタイル」が、その人のクールビズだと言えます。日本ではネクタイを締めるか締めないかみたいな話になりますが、そうじゃない。カッコイイかどうかです。

――ということは、十人十色のクールビズがあると。

大事なのは、自分の地位、仕事の場面、他人の目。それがOKならどんな格好でもいい。そんなお話も交えて語ります。


アメリカンスタイルは黒がカッコイイ

――今日の慶伊さんの着こなしをご説明いただけますか。

今日は黒のネクタイ、黒のベルト、そして黒縁の眼鏡。昨年から“黒で締める”のが自分が一番心地良い格好ですね。


――なぜ黒なのですか?

50~60年代のモノクロ映画では、男たちは黒が決まる着こなしをしていて、『007』のジェームズ・ボンドはカラーになっても白シャツに黒のニットタイを締めていました。80年代の日本のDC(デザイナーキャラクター)ブランドブームでは黒のスリムタイが流行ったり、白に黒はスタンダードで、特にアメリカンスタイルには黒がカッコイイ。


今は、ファッションも“飽食の時代”です

――フェアファクスコレクティブ創業40周年おめでとうございます。慶伊さんには最近の男性のファッションはどう映っていますか。

今は、お金もモノも情報もあって、自分に似合わないモノまで買って着てしまうという“ファッションの飽食の時代”だと思います。人が見てカッコイイというのに絞り切れていない。こういう時代だからこそ、自分のスタイルを見つけないともったいないですよ。


――慶伊さんが似合うスタイルと出会ったのは?

私は50歳を過ぎてですよ。50歳まではアメリカンアイビーをファッション=トレンドと考えていましたから、いろんな格好をしてきた。それが50歳を過ぎてトレンドを気にしなくなり、我が道をいけるようになった。

――我が道というのは?

ファッションがスタイルになったということですね。50歳を超えて着こなしが楽になって、深く考察するようになり、60歳を超えるとまたテクニックが上達して、スタイルがどんどん狭く、より深く入っていきました。


削ぎ落としてシックにすればするほど魅力が増す時代

――でも慶伊さんも流行を追いかけていた時代もありますよね。

もちろん。30代、40代は流行を追いかけるのも大事だし、若気の至りも大切です。あと、時代性もありますね。今はいろんなモノがありますが、気分としては削ぎ落とすのがカッコイイ。女性もそうですが、トレンドのてんこ盛りの格好は見ていてもお腹いっぱいになりますよね。今はより上質な着こなしを求めて、モノと精神がアップしている時代。削ぎ落としてシックにすればするほど魅力が増していきます。

――お話はよく理解できますが、なかなかその境地は難しいです。

自分も今までたくさん失敗してきたからこそ言えることです。フェアファクスは「TOKYO HIGH STANDARD」をテーマにしていますが、それは「常に普通でありたいが、そこに変化をつけたい」ということ。今は、スタイルとして引き算する、絞り込むことがカッコイイ時代です。

慶伊道彦トークショー「男の格好良い着こなし方」
□6月4日(土)15時から(45分程度)
□メンズ館1階=ドレスシャツ・ネクタイ


慶伊道彦
<フェアファクス>代表取締役。1976年、青山にてネクタイブランド<フェアファクス>を創業。東京発“ボールドトラディショナル”を切り口にし、現在では、ドレスシャツも手がける。<フェアファクス>という社名は、当時ワシントンにあったフェアファクスホテルからインスパイア。小さくても知性、品格、歴史の感じられるブランドを目指す一方、現在は、カジュアルシャツ、スーツと分野を広げている。


お問い合わせ
メンズ館1階=ドレスシャツ・ネクタイ
03-3352-1111(大代表)