2025.10.31 update

バイヤー溝田、初めてのイタリア出張。イタリア名門工場で生まれる、特別なネクタイを求めて|ISETAN MEN'S Buyer’s blog 溝田 将法 vol.1


伊勢丹メンズ館のバイヤーによる「ISETAN MEN'S Buyer’s blog」は、商品の企画から店頭に並ぶまでの裏側を、バイヤー自身の言葉で伝える連載企画。普段は見えにくいものづくりの現場をブログ形式で発信していきます。


第一回目は、 ネクタイを担当する新任バイヤーの海外出張記をお届けします。本連載は、今回のネイビーコレクションを起点に、初めて訪れたイタリア出張での体験を綴ります。現地の工場や素材選び、職人とのやり取り、そしてそこで得た発見を、現場の視点でレポートします!

 

プロフィール
溝田 将法(みぞた まさのり)
新宿紳士商品部 メンズテーラードクロージング バイヤー
2018年(株)三越伊勢丹に入社。入社後、紳士領域でシャツタイの販売を担当し、婦人領域に異動。販売やアシスタントバイヤーを勤め、その後、紳士領域ドレスクロージングのアシスタントバイヤーを経て、現在はメンズテーラードクロージング(ドレスシャツ・ネクタイ・シーズン雑貨)のバイヤーとして、よりパーソナルで自分らしい個性の出るスタイルをお客さまに提案している。

  1. 目指したのは、“上質なのに手に取りやすい”一本
  2. コモ湖は“避暑地”以上の魅力
  3. コモの老舗シルク工場「フェルモ・フォサッティ社」
  4. 言葉の壁と“おもてなし”の心
  5. 現地で知った「水と料理の関係」
  6. “世界の今”を知る時間

こんにちは。伊勢丹メンズ館でネクタイを担当しているバイヤー、溝田です。
今回は、初めてのイタリア出張と、その中で訪れた特別な工場についてレポートします。

目指したのは、“上質なのに手に取りやすい”一本

 

今回の出張の大きな目的は、2026年春夏シーズンに展開する<ISETAN MEN'S>のネクタイコレクション「ネイビーコレクション」に、新たな一本を加えるため。

テーマは、「上質でありながら価格を抑え、お客さまに気軽に手に取っていただけるネクタイ」です。

背景には、近年のブランドネクタイの価格高騰があります。
数年前まで2万円台だった人気ブランドのフレスコ織りネクタイが、今や3万円台に。店頭でも「欲しいけど高い」というお客さまの声を多く聞くようになりました。

同等のクオリティを保ちつつ、できるだけ手に取りやすい価格帯で作れないか——そんなことを考えながら今回の企画は始まりました。

コモ湖は“避暑地”以上の魅力


訪れたのはイタリア北部・コモです。コモ湖が有名ですが世界的にも有名なリゾート地で、街全体がゆったりとした空気に包まれています。
湖畔には世界中から富裕層の旅行客が訪れ、ラグジュアリーなホテルやレストランが並んでいました。
仕事の合間に関係者と湖畔のレストランで食事を楽しむ時間もあり、その景色と雰囲気は仕事の緊張を一瞬だけ忘れさせてくれるものでした。

コモの老舗シルク工場「フェルモ・フォサッティ社」

今回、ネクタイの生地をお願いしたのはコモ湖の側にある「フェルモ・フォサッティ社」。ネクタイの生地屋としては名門中の名門です。
特にそこで織られている「フレスコ織り」と呼ばれる織物は、世界にわずか数台しかない織機で生産しています。通常の織機よりも時間と手間がかかる織り方のため、他では再現できないシャリ感がありつつ、もっちりとした風合いが出るのが特徴です。
伊勢丹メンズ館で展開している人気ブランドのネクタイもここで織られたものもあります。
今回、このフレスコ織りを求めて初めてこの工場を訪れました。


*世界に数台しかない貴重な織機による「フレスコ織り」は他では再現できない豊かな風合いを作り出す。


言葉の壁と“おもてなし”の心

今回私自身としては初めてのイタリア出張、そしてトランジット込みで約17時間の移動。
現地の方と商談の時は通訳がつきますが、カジュアルな場では自力でコミュニケーションを取る場面もあり、最初は緊張の連続でした。正直、この出張で一番きつかったのはこの瞬間かもしれません(笑)。

それでも、イタリアの方々はとてもフレンドリー。おすすめ料理を勧めてくれたり、街の楽しみ方を教えてくれたりと、温かく迎えてくれました。



現地で知った「水と料理の関係」

食事の中で特に印象に残ったのは、エビを使った料理とパスタ。
同じ銘柄のパスタでも、日本で食べた時とイタリアで食べた時では全く別物でした。

理由は「水」。イタリアは硬水、日本は軟水です。硬水で茹でたパスタは芯がしっかり残り、驚くほど美味しく仕上がります。
お土産で持ち帰ったパスタも、日本の軟水で茹でると現地の味にはならない——そんな当たり前のようで知らなかった事実に驚きました。
商品の良し悪しを考えるとき、こうしたちょっとした“現地の暮らし”の違いがヒントになることもあります。




“世界の今”を知る時間

今回の出張では、商品のことだけでなく、世界のドレス業界の動向や、日本市場の現状についても現地の人と意見交換ができました。
ただ物を買い付けるだけでなく、世界の空気を肌で感じることが、バイヤーという仕事の醍醐味だと改めて実感しましたし、それを日本のお客さまのためにどう落とし込むかという点が大切だと改めて感じています。

次回の記事では、この工場での生地選びの様子と、ネクタイに込めた細部へのこだわりについてご紹介します。
 

Photograph&Text:Mizota Masanori 


*価格はすべて、税込です。
*本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。商品の情報は予告なく改定、変更させていただく場合がございます。

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