2023.04.26 update

メンズ館で出会った、シャツマニア 松木鉄兵さん オーダーシャツ スタイリスト 「シャツは脇役。だからこそ情熱を傾けることができるのです」


目利きのお客さまを迎えるメンズ館のスタイリストは、お客様に負けず劣らぬ目利き揃い。マニアックな知識と見識をもつ彼らに、その知識とこだわり、深い薀蓄を思う存分語ってもらいました。第2回となる今回は、シャツマニアではなく「シャツ○○マニア」です。




  1. シャツはスーツの印象を左右する名脇役(バイプレイヤー)
  2. シャツも自分も脇役に徹してこそと心得たり
  3. 今春、真のシャツマニアが手掛ける「アルチザン」モデルが登場



シャツはスーツの印象を左右する名脇役(バイプレイヤー)

松木鉄兵さん

三越伊勢丹 新宿店メンズ館5階 オーダーシャツ スタイリスト



松木鉄兵さんは、5階オーダーシャツでスタイリストを務めています。所属先は日本有数のシャツメーカーですが、キャリアのスタートは、某DCの有名ブランドでした。

「20歳で入社しました。モード系のスーツが中心のメゾンで、私がいた頃はモノトーンのスタイルが中心で、細身のスーツに黒のシャツ、黒いナロータイといったスタイルでした。店長として地域をまとめるまでになっていたのですが、28歳のとき一念発起してコンサルティング会社に転職。百貨店が立ち上げたヤング向けオリジナルスーツ企画に携わったのは、前職のキャリアがあったからですが、その後、伊勢丹新宿店のオーダーシャツに関わることになりました。」

ちょうど時代は「クールビズ」を掲げ、脱ネクタイ、脱スーツへと傾倒していった時期。伊勢丹で松木さんが取り組んだ仕事は、「クールビズ向けのオーダーシャツ」というプロジェクトでした。




「店頭にいた頃は、花形であるジャケットやスーツにばかり目がいっていたので、シャツの重要性を感じる事はあまりなかったです」と率直に話す松木さんに下ったのは、当時大流行していた「ポロシャツ素材のシャツ」のオーダーシステム構築。門外漢だったシャツのことを知らねばと、勉強のため工場の生産ラインを見学しに足を運ぶと、それまでの考えを改めることとなりました。



「シャツって細かな仕様の変化で、こんなにも何もかもが変わってしまうアイテムだということをそこで初めて知ったんです。台衿の高さや衿羽根・カフスの長さがミリ単位で変わると、見た目も着用感も、スーツとの相性までも変わります。芯地の違いで衿羽根の表情に変化が生まれ、ボタンの厚みや付け方ひとつで付け外しの感覚も変わる。こだわればこだわるほど、既成品では得られない満足感が高まるなんて、シャツってとても奥が深いんです。」

これ以来、松木さんのシャツに対する考え方と共に、接客スタイルが徐々に変わっていきました。

「アパレル販売員って、花形のシーズンアウターをお勧めしたり、ラグジュアリーブランドで勤務する事がステータスでありやりがいであると感じることが多いと思うんです。でも、主役は販売員じゃない。あくまでお客様ですよね。そのことに気づいてからというもの、脇役の重要さを感じるようになりました。自分で言うには恥ずかしいのですが、もともと真面目で一度決めたことは納得いくまでやり通す性格です。シャツに特化して情熱を捧げることは、自分の性格にも合っていると感じるようになりました。」




脇がしっかり固まっていてこそ、メインが引き立つ。シャツがしっかりしているからこそ、スーツが引き立つことを知った松木さん。シャツから学んだその意識が、自身の仕事にも反映されていました。




シャツも自分も脇役に徹してこそと心得たり

主張するのはスーツであって、シャツではない。だからこそシャツが重要という考え方は、自身のワードローブにも反映されていました。仕事柄、店頭に立つ時は必ずスーツにタイドアップという松木さん。シャツのラインナップを拝見すると、非常にオーソドックスな色柄を揃えています。

「クローゼットの中の半分は白シャツ。残りの半分がサックスブルーかストライプ。素材は様々ですが、あくまでドレスシャツなのでとくに変わったものはないんです。カラーシャツもいろいろと試してみたのですが、ベーシックな色柄に帰ってきてしまいました。これ以外のシャツですか? カジュアル用のシャツはオックスフォードのボタンダウンシャツぐらいですね。あのゴリっと硬い生地感が好きなんです。」

松木さん私物のシャツ(本人提供)


襟型はレギュラー、セミワイド、ワイド、ホリゾンタルの4種類と、お手本のようなシャツの揃え方。ラウンドカラーのピンホールシャツが1枚あるが、変わり種はこれはぐらいだと、照れくさそうに話されます。しかし、ひとつひとつよくみてみると、台衿の高さや衿羽根の長さなど、少しずつカスタムされていて、これまで様々に試されてきたことが伝わってきました。

 

「オーダーシャツですから、いろいろと調整することはできます。でもすべてをカスタムすることが必ずしもベストではないということも知っています。サンプルでご用意しているシャツは、制作過程で様々に試行錯誤されているので、これぞベストバランスという設定がされているんです。それを勝手にいじっても、あまりいいことはないんですよ。もちろん体型の特徴にあわせてカフスや台衿を調整することは可能ですので、そのようなご希望には対応させていただいておりますが。」


今春、真のシャツマニアが手掛ける「アルチザン」モデルが登場

「伊勢丹でシャツをオーダーされるお客様はファッション性よりも、スーツ姿をきちっと見せたいためにシャツを大事にしたいと考えている方が多いです。ほとんどのお客様が、生地は上質なものを選ばれて、非常にベーシックなシャツをオーダーされます。主張するのはあくまでもスーツ。そのうえでシャツが、とても重要なアイテムであることをわかっていらっしゃる。今の私もまったく同意です。スーツを引き立てるシャツのように、私もお客様を輝かせる脇役という重要な存在である事に魅力と誇りを感じています。」

 

お客様がベストバランスのシャツをチョイスするお手伝いをする自分はあくまで脇役で、立てるべきはお客様であると松木さんは断言します。だからこそ、お客様の希望を丁寧に聞くことを大切にしているのです。

 

「私の仕事は、お客様に喜んで貰えるシャツの要望を会話の中から引き出し、適切な生地とデザインの提案を行い、快適に感じて戴ける寸法を工場の職人に伝えることです。その結果、シャツを着用すると気分が良くなったり、気持ちが引き締まったり、お客様のスイッチのきっかけになれば良いと思い日々努めています。私はシャツが縫えるわけでも、ましてやビスポーク職人でもありません。スタイリストなのです。」

この春、松木さんが担当するオーダーシャツに、日本人ビスポークシャツ職人が監修する「アルチザン」モデルがローンチしました。南祐太、山神正則、両氏は共にシャツの世界では日本屈指の職人として名を馳せる人物。そのこだわりが詰まった一枚を世界で唯一、伊勢丹新宿店ではパターンオーダーで仕立てることができるというもの。すでに各方面から注目を集めていて、松木さんも大きな期待を寄せているそうです。

 

<イセタンメンズ×ヤマガミマサノリ>


「すでにたくさんのお客様からお問合わせいただいていて、注目度は非常に高いと感じています。南さんのシャツは以前からお取り扱いがありますが、山神さんは初お目見え。先日は山神さんのシャツをすでに12着お持ちという方がおいでになられました。山神さんご本人にもお会いしましたが、衿型がすべて山の名前になっていて、しかもその多くが、山神さんのご出身である四国地方の山の名とは。さすがは山の神様だけあります。あの方こそ、真のシャツマニアですよね。」


「マニア」とは「コレクター」とは意味合いが違い、「ひとつのことに熱狂的に取り組んでいる人」のことと辞書にありました。たしかに山神さんも、南さんもシャツに熱狂的に取り組んでいる点でマニアといえるでしょう。そしてその意味で言えば、松木さんはシャツ「スタイリスト」マニアでした。

 

ちなみにそんな松木さんには、もうひとつ「猫マニア」の顔も。取材に先立って、いただいていたアンケートにこう書かれています。

 「猫が大好き。三度の飯より猫。愛猫であるマル君の下僕としてわがままや甘えに応える家での何気ない時間が至福の時、部屋で過ごすときはつねに自分の脚でリラックスし、寝る時も一緒です。」

松木家の主役は猫なのだそうです。

愛猫マル君(本人提供)

 

 


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Photograph:Tatsuya Ozawa
Text:Yasuyuki Ikeda

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