2023.04.04 update

【特集】最高峰のビスポーク職人が監修するオーダーシャツ「アルチザン」モデルとは|THE GENTLEMEN CLOTHING SPRING & SUMMER 2023


イセタンメンズが発刊するカタログ『THE GENTLEMEN CLOTHING SPRING & SUMMER 2023
P21「オーダーシャツ」コンテンツを掘り下げてご紹介!

この3月から、伊勢丹新宿店5階のオーダーシャツコーナーに「アルチザンモデル」が登場している。「アルチザン」とは「職人」の意。日本を代表する2名のシャツ職人に監修を依頼し、これまでイセタンメンズのオーダーシャツを手掛けてきた高い技術力を持つ国内ファクトリーが縫製を行うことで、こだわりのシャツオーダーを可能にしたものだ。今回、このアルチザンモデルを実現に導いたアシスタントバイヤー宮嶋と、件の職人たちに実現までの道のりや、あらためてシャツへの思いを聞くことができた。

画像左/宮嶋 希
伊勢丹新宿店メンズ館5階、テーラードクロージング部門アシスタントバイヤー。日本橋三越のオーダー部門でキャリアをスタートし、国内外最高級のオーダー服に触れてきた。

画像中/山神 正則氏
独学でシャツ作りを始める。その後、所属したストラスブルゴ南青山店のオーダーシャツ職人としてその名を知られるように。21年に独立。現在ビスポークシャツのオーダーは会員限定。

画像右/南 祐太氏
オーダーシャツのファクトリーで研鑽を積み独立。東京・日本橋にアトリエを、千葉県・流山に工房を構えている。一昨年より福島県の復興事業として、現地で綿花栽培にも従事している。

  1. 孤高のアルチザンを白日の下に
  2. 手仕事のビスポークシャツを工場仕立てで実現するまで
  3. アルチザンモデルが譲れなかったこだわりのポイントとは


孤高のアルチザンを白日の下に


オーダースーツの職人は花形だが、オーダーシャツの職人は、どちらかといえば裏方で、職人として名前が挙がることは少ないのではないだろうか。しかし、クラシックファンの間では日本を代表するシャツ職人として必ずや挙がる2名の職人の名がある。TOP OF TOP のビスポークシャツ、両雄の名は南祐太氏と山神正則氏だ。


南祐太氏が手掛けるシャツは「お客様の希望を叶えるシャツ」だ。百貨店の高級オーダーシャツを手掛ける工場で腕を磨き、独立するとすぐにクラシックスタイル愛好家の間で噂が広がった。折からSNSの時代、「ミナミシャツが凄い」という声が業界中に伝わると、セレクトショップや高級百貨店からも声が掛かるように。中でも日本橋三越は早い段階からコンタクトをとっており、常設オーダーの窓口を開いている。今も南氏のアトリエは日本橋三越から徒歩圏内にあり、頻繁に足を運ぶことができる距離にあるのだが、その後、伊勢丹新宿店メンズ館のリニューアルからは新宿でもミナミシャツのオーダーが可能となった。


「私のシャツは、ハウススタイルがないのがハウススタイルなので」と言う南氏は、ドレスシャツと共にカジュアルシャツのオーダーも器用にこなす。彼が仕立てるシャツの特徴は、国内ではあまり見られなかったギャザーを使う縫製仕様だ。背ヨークや肩、袖の縫い合わせ部に不均衡なシワ=ギャザーを寄せて膨らませることで可動域をとる方式は、ヨーロッパのハンドメイドシャツで多用される技法。この技術をもつ南氏が、顧客の希望に合わせたオーダーシャツの仕様にもこのギャザーを用いることで、アイコンとして機能することになる。ふとした折にジャケットを脱いだとき、ギャザーを見れば南氏のシャツを着ていることが明らかとなり、それがオーダーシャツであることを雄弁に物語るだろう。


アシスタントバイヤーの宮嶋は、南氏のシャツについてこう語る。

「南さんのシャツには色気があるんです。ギャザーはもちろん、たとえばボタンダウンカラーは剣先がシャープで、アメリカントラッドともイタリアンクラシコとも異なるオリジナルのバランス感覚があります。襟羽根が描くロールの曲線も、実に嫋やかで美しいです。ドレスシャツだけでなく、カジュアルシャツのオーダーも得意な方ですので、そのあたりのバランス感覚に優れているのでしょう。フォーマル用のウィングカラーは、剣先の大きさや立ち上がりの角度も研究されていて、ボウタイのおさまりはもちろん、ノータイでデニムに合わせてもカジュアルにも着られるようになっています。クラシックなドレスシャツでありながら、モダンなデザイナーズシャツでもある、南さんの個性がきちんと形になっているので、同じシャツを他で作ることはできないと思います。」



もうひとりのアルチザン・山神正則氏は、独学でシャツ作りを手掛けてきたなか、「スーツを知らなければシャツは作れない」と、テーラーの工房に入りオーダースーツ作りに従事した経験や、「人間の骨格や体格を知ろう」と人間工学を学ぶなど、様々な角度から人生をシャツ作りに捧げてきた。ストラスブルゴ南青山店のシャツオーダー部門に勤め、自身の名を冠したプレタを手掛けながらも一昨年に独立。現在、山神氏のビスポークオーダーシャツはメンバーシップ制で、サロンへ入会することで可能となっている。


「いま、午前中と午後とでシャツを着替えることをSNSで発信しているんです」という山神氏は基本的にいつもスリーピース姿だ。休日もスーツで過ごすことでも知られていて、お子さんの保育園の運動会では親子競技にスーツで参加したとか、キャンプ場にスーツで遊びに行ったという逸話はもはや伝説となっている。「スーツを着るから、シャツが必要なだけなんですが」と笑うが、そのシャツにミリ単位でこだわっているところこそ、氏のアルチザンとしての矜持。彼を知る人は密かに「シャツ魔人」と呼ぶ。


「山神さんと伊勢丹とは2年ほど前に丹青会でご紹介させていただいたのが最初なのですが、以前から注目させていただいていました。独立直後から、一緒にお取り組みができないかと模索し続け、ようやくかたちになった次第です。スーツの需要が低下しているといわれる時代ですが、私はその分、スーツスタイルの価値が上がっていると感じます。だからこそ希少な機会にハイクオリティで感度の高いシャツを求めるお客さまは増えていますし、数字にも表れています。イセタンメンズでは、お客さまの好みを反映しながら、こだわりの一着の1枚のドレスシャツを楽しむ機会を創出できればと考えているのです。」と宮嶋は語る。

左:<ミナミシャツ>オーダーシャツ 22,000円から
右:<イセタンメンズ×ヤマガミマサノリ>オーダーシャツ 22,000円から
□伊勢丹新宿店 メンズ館5階 メンズテーラードクロージング


手仕事のビスポークシャツを工場仕立てで実現するまで


宮嶋 3月からスタートしたアルチザンモデル。通常のイセタンメンズ・オリジナルシャツからアップチャージ5000円で、有名シャツ職人のシャツが手に入るとあって、すでに話題となっています。南さんのシャツは以前からメンズ館でオーダーできましたが、今回はそのバージョンアップができました。


三越さんでご一緒させていただいてから、伊勢丹でもご一緒させていただいて。縫製工場もこれまでどおり福島県郡山ですし、タグの「SEWN IN KORIYAMA」も継続することができました。今回は肩の袖付け部にもギャザーを入れることができたので、オウンメイクのビスポークシャツに近い仕上がりになったと思っています。

宮嶋 山神さんとは、何度も打合わせさせていただいて、2年掛けてようやくここまでくることができました。
山神 これまでもいろんなところからお声がけを頂いていたのですが、なかなか実現できなかったんです。今回、宮嶋さんにご紹介いただいた長野の縫製工場さんが、とても頑張ってくださって、私のがわがままをきいていただき感謝しています。


宮嶋 いまファクトリーは様々なチャレンジに取り組んでいるところです。シャツ職人のこだわりを、いかに再現できるか砕心されているところへ、お二人に舵取りをしていただき、こだわりの仕立てを実現すつことができ、私達もとても刺激になりました。

シャツ職人がもっとも大切にしている襟型は、お客さまが見てもわかりやすく丁寧に再現できています。手仕事を多用している部分も、技術力でカバーできていて、日本の工場ってすごいなとあらためて感じました。

山神 私は前職がイタリアのセレクトショップだったので、イタリアのシャツをいっぱい見てきています。イタリアのシャツはとてもやわらかくて、私も同じぐらい、いやそれ以上のやわらかさを重視してきたのですが、日本の工場でもここまで表現ができるんだっていうことを知ることができました。その他にも、こだわっているボタンの掛け外しのしやすさのため、すり鉢状ボタンを採用していたり、ボタンホールを涙型にすることも実現してもらえました。


私もボタンにはこだわっていて、ビスポークでは奈良県製の貝ボタンを使っているのですが、今回これも採用することができました。裏にオリジナルの刻印を施したこのボタンを使ったことで、福島県の縫製、奈良のボタンなど、いま私が取り組んでいる地方創生にも役立てることができました。



宮嶋 南さんは福島で綿花の栽培もされているんですよね。

震災復興のプロジェクトで津波後の土地の塩抜きを綿花で行っているのですが、自分でも何か協力したいと思い、いま南相馬市で綿花を栽培しています。一年目はごく僅かだったのですが、昨年は30kgの綿花が採れました。今年はそれを布に織り上げて、シャツに仕立てたいと思っています。


アルチザンモデルが譲れなかったこだわりのポイントとは



宮嶋 それでは今回のアルチザンモデル、お二人のこだわりポイントをご紹介いただけますか?

まず、襟型ですが、ここにあるサンプルは7種類です。


<ミナミシャツ>オーダー可能な襟型の種類(全7種類)
左上から:ホリゾンタルカラー、カッタウェイ、ウィングカラー、タブカラー
左下から:レギュラー、ワイドカラ―、ボタンダウン


レギュラー、ワイドカラー、カッタウェイ、ホリゾンタルカラー、ボタンダウンときて、タブカラーやウィングカラーのラインナップも。ワイドカラーの襟羽根をラウンドカーブさせた襟型は、ほかではちょっと見られない型だと思います。

宮嶋 背ヨークとカフスのギャザーはやはり特長的ですね。


ミナミシャツのアイコンにもなっているギャザーですが、今回このギャザーを肩の袖付け部分にも用いています。それと同時に左右に2本背ダーツが入るのも特長です。背中に丸くフィットしながらウェストをシェイプしているので、背中を見れば南シャツだとわかっていただけると思います。あとは先程も申し上げたボタンです。奈良県産の貝ボタンを採用しています。奈良県は海がないのに、貝ボタンの生産では日本一なんです。

宮嶋 山神さんのシャツは襟型が9種類です。どれも個性的な名前が付けられています。

山神 襟型は、これまで私が登った山の名前を付けました。イタリアのスーツブランドではジャケットの形に、イギリスの靴ブランドではデザインごとにモデル名がありますよね。シャツの襟型にもモデル名があってもいいんじゃないかって思ったので。

山神さんって、登山好きだったんですか?

山神 そういうわけではないのですが、名前も山の神ですしね(笑)。



<イセタンメンズ×ヤマガミマサノリ>オーダー可能な襟型の種類(全9種類)
左上から:MIYAMA(ショートポイント)、UNPEN(ルームカラー)、GOKEN(カッタウェイ)、AONO(タブカラー)、YASHIMA(ラウンドカラー)
左下から:SHIRAKAMI(ワイドカラー)、KONPIRA(セミワイドカラ―)、FUJI(レギュラー)、SANUKIFUJI(ボタンダウン)

宮嶋 もっともスタンダードなレギュラーカラーは「FUJI(富士)」ですね。

山神 襟開きの角度で3種類を用意しています。もっとも開きが狭いのは「FUJI(富士)」その次に広いのは「KONPIRA(金毘羅)」といいます。一番広いのはワイドカラーですが「SHIRAKAMI(白神)」です。

宮嶋 こだわりが表れていますね。

山神 ショートポイントの「MIYAMA(御山)」、ラウンドカラーは「YASHIMA(屋島)」、タブカラーは「AONO(青ノ)」、カッタウェイ「GOKEN(五剣)」、それとノータイ用に合わせが広い「UNPEN(雲辺)」という。

宮嶋 どれも山神さんのご出身、四国にある山の名です。


山神 セミワイドは「KONPIRA(金毘羅)」というのですが、私自身が育った町の山で香川県でも有名な山の名をいただきました。

宮嶋 縫製面にもこだわりがあります。



山神 肩の袖付け部は上下の縫製幅を変えています。こうすることで肩が内側に入って着るときにやわらかさを感じられるようになるのです。背中にダーツを入れずにウェストを絞ったり、剣ボロにはボタンを付けていないのも、ジャケットを脱いだときにふわりとやわらかさが出せるにようにという意図からです。


宮嶋 お二人のアルチザンモデルは共に芯地もやわらかく、細部までこだわりが詰まっています。

山神 ビスポークモデルを活かしながら、いかに工場生産に落とし込むかという点は、はじめのうち苦労するかと思ったのですが、宮嶋さんが遠慮せずになんでも言ってくださいと仰るので、いろいろお願いしたところ、とても協力的にしていただいて安心しました。これまで好き放題やってきた自分をそのまま受け入れていただけた器の大きさには感謝していますし、日本のファクトリー製シャツのレベルがとても高いことを知ってもらえる機会になるのではないでしょうか。

以前から継続してきて、少しずつグレードが上がっていることを感じています。とくに私のアトリエは、丁寧に検索していかないと一見ではなかなかたどり着けないので、日本橋三越や伊勢丹新宿店メンズ館で、私の名前を知ってもらえることを嬉しく思っています。

宮嶋 伊勢丹こそハウスモデルとともに、オーダーシャツの幅が広がったことを嬉しく思っています。ここから日本最高峰のシャツ職人が手掛けるビスポークシャツの入り口になれたらと思いますし、お客さまにオーダーシャツの世界を存分に味わっていただきたいと思っています。


<ミナミシャツ><イセタンメンズ×ヤマガミマサノリ>オーダーシャツプログラム
  • 展開場所:伊勢丹新宿店メンズ館5階 オーダーシャツ

オーダー詳細

  • 襟型:<ミナミシャツ>7型、<イセタンメンズ×ヤマガミマサノリ>9型
  • 価格:22,000円から
  • お渡し:約4週間後


『THE GENTLEMEN CLOTHING SPRING & SUMMER 2023』

イセタンメンズが『春、“永く愛せる”を探しに』をテーマに、2023年初夏に選ぶべきファッションを紹介するカタログ『THE GENTLEMEN CLOTHING SPRING & SUMMER 2023』を発刊。
春の主役になる3大クラシックパンツや、ラグジュアリー素材&コンフォートなスーツ、紺ブレスタイルや、ベーシックスタイルに欠かせないアイテムなど、この春夏に取り入れたいさまざまなコンテンツをご提案します。

カタログに関する特集ページはこちら

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Text:Yasuyuki Ikeda
Photo:Tatsuya Ozawa


*価格はすべて、税込です。
*本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。商品の情報は予告なく改定、変更させていただく場合がございます。

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