<WH/ダブルエイチ>|ふたりの洒落者がつくる、現代に有効な靴とは。


タイトに攻めたブーツシャフトはテーパードさせたパンツと相性抜群。ペコスブーツをベースにしつつ、贅肉を落としたシルエット&オールブラックで仕上げたカラーパレットにより洗練された印象に。プルストラップはプロダクトデザイナーの吉田眞紀が監修。ペコスブーツ56,160円


──イセタンメンズ別注モデルがISETAN靴博に登場するそうですね。

干場 ぼくはプレーントウを好んで履きます。ミリタリー由来のシューズなので、キャップトウほどかしこまらないで済むからです。そんなぼくが冬に履きたいとかねてリクエストしてきたのがジップアップのブーツでした。
坪内 ペコスブーツをモチーフとしつつ、ステッチまでブラックで染めて、木型もいちからつくりました。
干場 ご覧いただければわかるように、筒がとっても細い。テーパードさせたデニムとの相性は申し分がありません。
坪内 今日はサンプルが間に合わなかったけれど、干場さんが大好きなプレーントウももちろん仕込んでいますよ。ミッドソールにレッドをかませたプレーントウです。
干場 インソールも真っ赤っかなので、座敷に上がるようなシチュエーションに履いていけば女子受けも抜群です(笑)。

ツーといえば、カー。

──それにつけてもドレス顔のアッパーにスニーカーソールを履かせるという発想にはしびれました。


坪内 履き心地を追求したシューズって、それまで野暮ったいイメージしかなかった。しかし、やりようはあると思っていました。遡れば90年代のイタリアにはその兆しがみてとれた。そろそろやりたいなと策を練っていたところ、<コールハーン>の「ルナグランド」が出た。
干場 あれは衝撃でした。ただ、ぼくにいわせればすこしカジュアル過ぎた。いまのビジネスシーンで履けるシューズができないかって悶々としていました。


──そんなときに坪内さんとご一緒する機会があったわけですね。

干場 ええ。これ幸いと思いの丈をぶちまけました。ツボさん行きつけの立ち呑み屋からはじまった初会合はカラオケまで堪能するフルコースでした(笑)。腰を抜かしたのは、想像と寸分違わぬサンプルが上がってきたこと。打ち合わせ自体は10分かそこらだったのに(笑)。

──それは60歳を過ぎても衰えることのない強靭な感性、そして40年かけて蓄えた経験の賜物ですね。

干場 ツボさんだからできたことだと間違いなく思うんですが、WHにはプレーントウだけで6型あります(笑)。
坪内 ファーストコレクションはよりドレッシーな顔つきを意識しました。コバはウェルトをかませたようなツラにして、張り出しも抑えた。干場さんやお客さんの声に応えているうち木型もソールもボリューミーになっていきました。
干場 張り出したコバはいろんな意味で(笑)、男の憧れですから(誌面では書けないのですが、心理学者のフロイトも顔負けの考察でした。気になるかたは靴博の対談で尋ねてみてください)。

──WHはどこか遊び心が感じられるのもいい。ふたりは業界で1、2を争うモテ男ですが、共通項はチャーミングなところ。マインドが表れているんですね。


下駄箱はほとんどWHに───干場義雅

干場義雅
『FORZA STYLE』編集長。1973年、東京駒込で3代続くテーラーの家に生まれる。さまざまな雑誌でキャリアを積み、『LEON』創刊に参画。“ちょい悪オヤジ”のブームを生む。テレビやラジオでも活躍するメンズファッション業界の伝道師。





「それまで大切にしてきた靴はだいぶん譲ってしまって、シュークローゼットのほとんどはWHに。20足近くあるんじゃないかな。お客さんにもそういう人が多いんですよ。格好良くて楽チンで、脚長効果も期待できますから(笑)」


靴に色気を生む茶目っ気。───坪内浩

坪内浩
シューデザイナー。1953年、名古屋生まれ。エスペランサ靴学院第3期生。コンサルティング会社を経てインポーター、マグナム創立に参画。「プレミアータ ウォモ」や「エンツォ・ボナフェ」を日本に紹介した。2008年、みずからの名を冠した「ヒロシ ツボウチ」をローンチ。


「日本を代表する靴職人、関信義さんは夜遊びをしないで靴がつくれると思うなっていう人でした。靴の色気ってのは、つくり手の感性そのものですからね。ぼくの感性は地元の立ち呑み屋とスナックで日々、育まれています(笑)」

Text:Kei Takegawa
Photo:Yoshihiro Tsuruoka

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