2018.09.10 update

Vol.05 Yohaku|妖怪とヒップホップ。相容れないもの同士の融合(1/2)

ISETAN MEN'S netにて新たに始まった連載企画「ART UP by International Creators」。本企画では、従来より密接な関係にある「ファッション」と「アート」にスポットを当て、様々なアーティストをキュレーション&紹介していく。

第5弾は城下町の趣も残す「小江戸」としても知られる川越出身のペインターでありBudamunkの作品のアートワークを手がけるなど、国内ヒップホップ・シーンとも繋がりが深いYohaku。和テイストとヒップホップ、ストリートカルチャーを融合させる彼の作品は、どのようにして生まれたのか。

イベント情報

Yohaku ライブペインティング

□9月12日(水)11時~18時
□本館6階=催物場/C-7柱

Yohaku

埼玉県川越氏出身のペインター。老舗ヒップホップ・クラブ、池袋BEDでのライブペインティングや、オーストラリアでの活動を経て、自らのスタイルを確立。山形出身のペインター/デザイナー・SOLIDと共にDOPE JAP WORKSとしての活動でも知られる。

負の感情とも向き合い、炙り出すことが大事


「大学時代にDJサークルに入って。元々ヒップホップは聴いてたんですけど、そこでより深くそのカルチャーにハマるようになりました。その当時、僕は個人的にヒップホップから初期衝動感のようなものを感じて。ラップが下手でも、とりあえずやってみる。絵が下手でも、グラフィティとかをやってみる、みたいな。そういう部分に一番感化されました」

親の画集や複製画を見て育ち、美大を志したこともあるなど、昔から絵は好きだったが本格的に描き始めるキッカケを見い出せないまま歳を重ねたYohaku。彼の尻尾に火を付けたのはまさしくヒップホップのD.I.Y.精神。ターンテーブルが壊れたことを機に、元々興味のあった絵を描くようになる。


「昔から多趣味で。スポーツも好きだしスケートも好きだったし、ヨーヨーとか小さい頃に流行ったものは大体手を付けました。ただ、大体ある程度できるようになると飽きちゃうんですよね。でも、絵だけはどんなにやっても飽きなかったんです。疲れて帰ってきても絵は描きたいって思うし、すごく上手い絵を見ても『頑張れば描けそう』って燃えてきたりするし」




大学卒業後は広告会社で就職。クリエイティブな仕事ができることを期待したものの、思い描いていたイメージとは異なり、辞めることに。その後は飲食店で働きながらも池袋の老舗ヒップホップ・クラブ、BEDに出入りするようになり、そこでライブペインティングを頻繁に行うようになる。

「クラブのお客さんって、自分で絵描けなくてもガンガン意見を言ってくるんですよ。それこそ最初は『うるせえな』って思ったりもしたんですけど(笑)。まだまだ絵を描き始めた頃だったので、そういう場があったのは幸運なことでしたね。お客さんとかラッパーの似顔絵とかも描きましたし、すごい良い経験が積めました。当時のBED店長のJOMOさんには色々な人を紹介してもらったり、すごいお世話になっています」


その後、Yohakuはワーキングホリデーを使い、グラフィティが盛なオーストラリアのメルボルンへ渡る。そこで看板や壁へペイントしながらも、現地のグラフィティを吸収していく。

「日本と比べると向こうはアートがより身近な存在なんです。例えば日本で鬼とかを壁に描くと、『怖い』とか『治安が悪くなる』とか言われがちなんですけど、向こうだと絵が上手ければとにかく褒めてくれる。上手い絵を壁に描くと、下手クソな落書きをされなくなるみたいなんですよ。落書きする方も、上手い作品の上には絶対描かないみたいで。結構家の壁とかに描かせてもらいましたね」


また、妖怪や宗教的なものをモチーフにすることも多いYohakuだが、そのまま描くのではなく、そこに一捻りも二捻りも加えるのが彼のスタイル。

「描く前には絶対に調べます。ただ、調べた上でそういう決まりや概念を敢えて壊したりもします。アメリカのヒップホップ・グループで、ウータン・クラン(Wu-Tang Clan)っているじゃないですか。彼らって、カンフーと忍者を勘違いしてたんですよ。でも、それがウケた。日本でも『面白いじゃん』『カッコいいじゃん』ってなった。例えば『布袋様は右手に徳利を持って〜』とか、キッチリするのも大事だと思うんですけど、それをそのまま描いても自分の絵にならないなって思ったんです」

そこから妖怪や神道や仏教といった宗教的な要素と、ヒップホップやストリートのエッセンスを混ぜる、オリジナリティ溢れる画風を確立していくことに。そして、次なる目標はオリジナリティ溢れる自分のキャラクターを生み出すことだという。

「僕の好きなグラフィティライターって、みんなしっかりとした自分のキャラクターを持っているじゃないですか。僕ももっと自分の個性を反映させたオリジナルキャラクターを確立させたいですね。あとは、絵を描く上で、日々の生活の中での不安や負の感情を炙り出したいんです。そういうドロドロとした感情はアウトプットしないと消せないと思うし、そこに真剣に向き合うのが大事なことだと思うんですよね。


NEXT>『SOUL CAMP 2018 at ISETAN』のライブペイントに向けて