木桶リターンズ!#2|残したいから、後継者になる──成長する「木桶職人復活プロジェクト」

日本酒や醤油、味噌などを仕込む際に使われる木桶。なかでも、竹箍(たが)を編み、それで締める伝統的な大桶を製作できる桶屋は、今では日本全国に1社のみ(!)だといいます。木が呼吸することで、奥行きのある味わいを育てる豊かな微生物が棲み着くという木桶。時代とともに、生産効率などの理由から淘汰されてきましたが、いまその魅力を見直す若い世代の職人たちが現れはじめています!こだわりの味わいと先人の叡智を受け継ぐために。発酵食品に欠かせない最高のパートナーとして、木桶に新たな風を吹き込む、次世代たちの想いをご紹介します。


ヤマロク醤油 5代目 山本康夫さん
江戸時代末期から明治時代初期に創業したといわれる小豆島の老舗〈ヤマロク醤油〉。5代目・山本康夫さんは「小豆島 木桶職人復活プロジェクト」を立ち上げ、同業他社にも木桶仕込み醤油の復活を呼びかけます。

「木桶は、微生物が発酵する最高の環境」と語るのは、〈ヤマロク醤油〉5代目の山本康夫さん。古くから木桶は、日本酒の酒蔵で使用された後、醤油、味噌、漬物屋で仕込み桶に再活用されるなど、長く使い継がれてきました。しかし、生産効率や衛生管理といった理由から、木桶仕込みを行う蔵元が減少。需要が減っていくにつれ木桶を造る職人も少なくなり、現在では伝統的な製造技術が失われつつあります。


そんな状況に立ち上がったのが、山本さんです。2011年に「小豆島 木桶職人復活プロジェクト」を立ち上げました。山本さんの目的は、「後世に残すこと」。木桶で基礎調味料を造ることができなくなってしまった時、その問題に直面するのは自分たちより子どもや孫たちの代です。その時に向けて、何ができるのか。まず山本さんが行ったのは、木桶を自分たちで造れるようになるというものでした。「藤井製桶所」に3つの新桶を発注し、小豆島の大工とともにその新桶を使って造り方を教えてもらうという「木桶職人修行」を開始。2013年に、小豆島にてはじめて自分たちの手だけで新桶を完成させました。

 

左:〈ヤマロク醤油〉
鶴醤(145ml)486円
約2年熟成させ完成した生醤油を、再び材料を加えてさらに2年仕込む「再仕込み製法」で、深いコクとまろやかさを追求したブランド自信作。

右:〈森田醤油〉
三年熟成しょうゆ(150ml)432円
奥出雲のわき水を使用し、自然な環境で醤油を造る〈森田醤油〉。国産大豆、国産小麦を使った、旨みや甘みの深い再仕込み醤油です。
 

左:〈ミツル醤油〉
生成り、 濃口(100ml) 516円
熟成したもろみを搾って火入れしただけの純粋無垢な醤油の「生成り、」。2013年秋~2014年春に仕込んだ香りと味をお楽しみください。

右:〈谷川醸造〉
畑の肉みそ(80g) 551円
畑の肉こと、大豆ミートのおかずみそは、銀座〈六雁〉の料理長秋山能久氏が監修した万能みそです。ごはんにそのままかけても◎。

すべて■本館地下1階=食料品/シェフズセレクション

以来、毎年1月には〈ヤマロク醤油〉を会場に1 週間、木桶の製作作業を公開プロジェクトとして実施。参加者たちが知識や技術を共有しています。今年は、全国各地から約120名が参加するプロジェクトにまで成長。参加者は、島根県〈森田醤油〉、石川県〈谷川醸造〉、福岡県〈ミツル醤油〉などの蔵元をはじめ、料理研究家、学者、ラーメン店店主など多彩な顔ぶれが集まり、熱気に包まれました。

さらにはこのプロジェクトをきっかけに、生活桶(寿司桶などの小さな桶)を製作していた桶職人が大桶を手がける組織を結成(!)。少しずつ、「木桶コミュニティ」の輪が広がりを見せています。技術を残し、日本の食文化を未来に繋げたいという山本さんの活動が始動してから7年目。三越伊勢丹は、この活動をこれからも応援していきます!

*価格はすべて、税込です。

お問い合わせ
伊勢丹新宿店本館地下1階=食料品/シェフズセレクション
03-3352-1111(大代表)