2022.09.14 update

匠の技が息づく浅草職人探訪【前編】NO.1~NO.4|ISETAN靴博2022


日本での革加工や靴づくりの原点とされる東京・浅草。近年、新鋭の靴メーカーが数多く生まれており、「革靴の街」として、あらためて注目を集めている。その一翼を担うのが類い稀な技を持つ職人たちだ。
今回『ISETAN靴博2022』では浅草の靴職人による特別コンテンツが実現、その一足にかける心意気をとくとご覧いただこう。

匠の技が息づく浅草職人探訪【前編】NO.1-NO.4

  1. NO.1 NO.1 RENDO(レンド)
  2. NO.2 's(ズ)
  3. NO.3 SANTARI(サンタリ)
  4. NO.4 When(ウェン)

 


NO.1 RENDO(レンド)

出店:9月28日(水)~10月4日(火)
幾度と引いたパターンから導き出された日本人の足型の最適解。



代表を務める吉見鉄平さんが独立を機にパターン会社を設立。
2013年、グッドイヤー製法のドレス靴を軸とした<レンド>をスタートし、同時にアトリエ兼ショップをオープンさせる。現在は、若手注目株の吉田祥之さんが、店長・吉見さんの脇をかためる。

クラシックに寄り過ぎては固苦しくなり、逸脱し過ぎては野暮になる。その微妙な塩梅を表現する<レンド>の一足は、普遍的ながらモダンさを漂わせる。

「これまで受けてきた無数のオーダーに加え、ファッションブランドとの協業から得た膨大な型紙のアーカイブがあるからこそ、お客様への要望にも柔軟に対応し、それらを背景とした既製靴にもすんなり足を通してもらえると思います」。緻密に練り上げられたパターンをベースに、浅草の腕利きの職人と密にコミュニケーションをとりながら製作。ブランド名の由来にもなった双方の“連動”による一足は20代の服好きも手に取るケースが多いのだとか。

「若い方の足型に合う細身のラストも用意していますし、セミオーダーも6万円代から。敷居は低いと思いますので、初めての方でも気軽にお試しください」。



精度次第で仕上がりも変わる型紙は、経験がモノを言う革靴の設計図。それをベースに、パーツに最適な部分の革を選別していく。

裁断時には革の硬軟も意識して刃を入れる。


パタンナーとして豊富な経験を誇る吉見さんのもと、修行を重ねてきた吉田さん。継承してきた経験と知識は、事細かに採寸した型紙をベースに裏革を裁断する際にも活かされる。


簡易オーダーの軸となるサンプル木型を型紙に合わせ、補正箇所を念入りに洗い出し数値化。それによりオンリーワンの型紙が完成する。また、エキゾチックレザーの使用や端材を生かしたパッチワークデザインも好評。

靴博での特別コンテンツ―RENDO
・エキゾチックレザーを豊富に揃えたパーソナルオーダー
・既製モデルの販売


NO.2 's(ズ)

出店:9月28日(水)~10月4日(火)

機械や流れ作業では出ない職人の持ち味を随所に込めて。



浅草靴の高いポテンシャルを世に知らしめるべく、2022年4月にスタート。定番デザインのなかに職人メイドならではの技を込めた本格靴は、履くほどに深い味わい。長年浅草にて企画・営業を務めた秋好俊彦さんがブランドの代表。


短期的な価格競争ではなく、浅草メイドの真骨頂を適正プライスで楽しんで欲しい。そうすることで職人育成にも効果的。ある意味、持続的なコンセプトのもとスタートした<'S/ズ>。代表を務める秋好俊彦さんは、浅草で約70年の歴史を誇る「セントラル靴」にてキャリアを積んだエキスパートだ。渾身の新ブランドは、オーソドックスな黒靴ながら、カジュアルにも履きやすいよう随所に“軽さ”を込めた作り。

「行程をすべて機械による流れ作業ではなく、吊り込みも手直ししつつ進めたり、すくい縫いやコルク張り行程の後は、一人の職人が仕上げまで面倒をみるなど、画一的な顔ではない質感の高い仕上りを重視しています」。手作りゆえに重厚感があるものの、ベビーカーフなど厳選素材を用いた靴は非常に軽快。毎日履ける新世代シューズだ。



ソールの仕上げも機械ではなく「こくり棒」と呼ばれる木製器具で擦り上げて艶を出す。「‘」を模した形状のヒールゴムもユニーク。

渾身の手作業だからこそ醸し出る高い質感に注目。


昔ながらの職人技にて丁寧に作り上げられる<ズ>のシューズ。写真は秋好さんが生産を依頼しているセントラル靴所属の職人さん。ソールのチャネル切りも堂々のハンドだ。


左から:サイドゴア 137,500円、プレーントゥ 132.000円、ストレートチップ  132.000円

<ズ>の主力3型。靴博ではさらにローファーも登場。高級なベビーカーフをアッパーに、裏にはデュプイを奢る贅沢仕立て。

靴博での特別コンテンツ―'s
・今年デビューを飾った<ズ>のフルラインナップが登場
・新作のローファーが今季の靴博で初お目見え



NO.3 SANTARI(サンタリ)

出店:9月21日(水)~10月4日(火)

ありそうでなかった佇まいと極上の履き心地を育む。




数多くのOEM製作に携わってきた舘篤史さんが満を持して、2018年に自身のブランドを設立。精密に仕上げられた婦人靴のラストを主に使用する独自のこだわりや卓越した吊り込み技術による履き心地の良さで早くも注目度は高い


「羽根の開き具合ひとつで履いた時の見え方は格段に違ってくる。そんな細かい部分にまで気を配れるのがブランドの強み」と語るのは、様々なシューメーカーやブランドと協業して革靴を製作してきた、代表の舘篤史さん。

「羽根の開きは1~1.5㎝がベスト。採寸やディスカッションを繰り返しミリ単位で調整します」。可能な限りの要望に応えつつ、先を見据えて問題が起きそうな箇所は真摯に指摘し、代替案を提案する引き出しの多さも、舘さんが多くの靴メーカーから信頼を得てきた要因だ。それだけではなく、デザインのアプローチも実にユニーク。他のブランドと確かな差を生む要因にもなっている。

「ありそうでなかったところをデザイン的に狙っています。例えば、今でこそ当たり前になりましたが、レイジーマン型(靴紐がイミテーションとなったサイドエラスティックの内羽根デザイン)を、実際の靴紐に変更することで美しい羽根の開きに微調整できるようにアップデートしたのは、<サンタリ>が初めてじゃないかと」。結果、大いに人気を博してブランドを代表するモデルへと成長。そのアイデアもブランドのアイデンティティだ。



婦人靴木型を得意とするメーカーで開発した木型を使用。


微調整をしながら手作業で吊り込んでいく職人技の見せどころ。



<サンタリ>の靴はすべて手吊り込み。ハンドならではの力加減で生まれる微妙なゆとりが自然な着用感を演出する。同じグッドイヤー製法でも一般のそれとは履き心地が変わってくる


代表作のレイジーマン型。甲部はイミテーションではなく、あえて実際の靴紐を通した内羽根式。
 

スリッポン 29,700円
ライナーにリアルムートンを採用した靴博先行発売のスリッポン。アッパーのヌバックにワックスを充填し圧縮することでやや毛羽だった風合いに。


靴博での特別コンテンツ―SANTARI
・ブランド初のレースアップブーツを含む、新作3型の先行受注
・パーソナルオーダー会
・既製品の販売



NO.4 When(ウェン)


出店:9月21日(水)~27日(火)

注目の若き靴職人が作る一足はアート的であり最良の道具でもある。



若干20歳で独立、現在はビスポーク靴職人の若手有望株として期待を集める小林晃太さんが代表。<ウェン>を通して革靴の魅力を知った大人は大多数。靴磨きの名店「ブリフトアッシュ」とのコラボモデルを現在製作中


若干27歳にも関わらず、そのキャリアは8年にも及ぶ靴職人の小林晃太さん。もちろん業界内では圧倒的に若手の部類だが、その技術や経験は確かなものがある。<ウェン>を愛好する顧客の多くは、本質を弁えた各界の経営者たちであるというのも、特筆すべき点だ。

「普段はスーツでお仕事をされるような方でも、これまで革靴には別段こだわりのなかった方々に、革靴の魅力を伝えるべく向き合ってきたことが<ウェン>の強みです。それは木型にも表れていて。本格靴といえども、最初は肩ひじ張らずに履いていただきたいので、背筋が伸びるというよりは落ち着いてもらえるような、そんな木型を目指しました」。

その木型の特徴は、指先に程よいゆとりを作り、土踏まずと甲と踵の辺りでホールドさせるという理論に基づくもの。それにより、踵が抜ける感覚は皆無で靴擦れも少ないという。とはいえ小林さんは、独特な風情や空気感を纏う彫刻が備える造形美をモノ作りの根底に抱く。「有益な道具であることが大前提ですが、アートピースのような存在感のある一足を作りたいです」。革靴業界の未来を担うだろう、彼の今後の動向に目を配りたい。




コバの処理をハンドで丹念に行い、出方ひとつとっても数ミリ単位でこだわる。その機微により、エレガントさが自ずと漂ってくる。


ある部分でホールドせず全体で足を支える感覚。


タイトフィッティングが常道といわれるが、ウェンの木型はボールガースで締めることを考えて作られていない。トゥに程よい丸みをもたせた絶妙な遊び、それが足入れ時に心地いいと感じられる要因。



176,000円~
希少なパイソン革を使用したVフロント(右)とUチップ(左)。

 

導き出された無二の木型ゆえ仕上がりはご覧の通り。アトリエに並ぶ無数の木型からもそれを実感する。アトリエに並ぶ無数の木型からもそれを実感する。


靴博での特別コンテンツ―When
・セミオーダー会
・ブランドでは珍しいサイドゴアブーツ、チャッカブーツのオーダーも可能

 
■【後編】はこちら!
匠の技が息づく浅草職人探訪【後編】NO.5~NO.8|ISETAN靴博2022

 

イベント情報
「ISETAN靴博2022」
  • 開催期間:9月21日(水)~10月4日(火)
  • 開催場所:伊勢丹新宿店 メンズ館1階 プロモーション、メンズ館地下1階 紳士靴

コンテンツ情報
「浅草職人」
  • 第一弾:9月21日(水)~27日(火)
  • 出店ブランド:<The Ruttshoes &Co.>/<SANTARI>/<Arch Kerry>/<When>/<BROTHER BRIDGE>/<Arch Kerry>
  • 第二弾:9月28日(水)~10月4日(火)
  • 出店ブランド:<SANTARI>/<Arch Kerry>/<DOUBLEFOOTWEAR>/<RENDO>/<’S>
  • 開催場所:伊勢丹新宿店 メンズ館1階 プロモーション

・混雑状況により、入場の順番を決める抽選を行う場合がございます。

・混雑状況により、購入点数を制限させていただく場合がございます。

・一部商品は三越伊勢丹オンラインストアでも販売を予定しております。

*三越伊勢丹オンラインストアは9月21日(水)午前10時頃より順次販売開始予定です。

 

Photo: Takuya Furusue, Yoshika Amino
Text: Tsuyoshi Hasegawa, Ryo Kikuchi


*価格はすべて、税込です。
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*新型コロナウイルス感染拡大予防の観点から、お客さまのご入場を制限させていただく場合がございます。予めご了承くださいませ。


お問い合わせ
伊勢丹新宿店 メンズ館地下1階 紳士靴
電話03-3352-1111 大代表
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