【Fun to Dress vol.1】バイヤー山浦と<三越プレミアム>4人のカッターが語るサロンの魅力|日本橋三越本店 パーソナルオーダーサロン

 

オーダーメイドの魅力を発信する本連載企画、日本橋三越本店から映えある第1回の俎上に載せたのは、伝統と格式を守りながらも進化を続ける<三越プレミアム>。鳴り物入りで登場したパーソナルオーダーサロンのかなめとなるオーダーメイドスーツです。バイヤーの山浦勇樹を案内役に、山岸修、萩原和明、郭浩然、佐藤慎悟という4人のカッターの思いもお伝えします。


山浦勇樹
日本橋三越本店本館2階 パーソナルオーダーサロン バイヤー兼店長
2006年入社、長らく三越伊勢丹メンズのクロージング部門のバイヤーを歴任。
Instagram:@yukiyamaura


まずは山浦バイヤーが考える、このサロンの見どころについて


2019年8月、30年ぶりに紳士服フロアをリフレッシュオープンしました。あらたに誕生したパーソナルオーダーサロンはあらゆるオーダーのサービスを取り揃えたサロンです。

世界に冠たるイタリアの<ルビナッチ>、フランスの<チフォネリ>、イギリスの<ヘンリー プール>、そしてサヴィル・ロウの老舗テーラーハウス<アンダーソン&シェパード>の洋品雑貨ショップ「ハバダッシャリー」が一堂に会するさまは壮観のひと言。世界中の服地がうずたかく、しかし整然と積み上げられたファブリックセラーも一見の価値があります。


最高峰の仕立てや服地もさることながら、パーソナルオーダーサロンの魅力はその品揃えにふさわしいホスピタリティあふれる空間や接客にあります。

カウンターやテーブル、ソファがそこかしこに設えられたフロアはまさにサロンの趣きです。なかでもVIPルームは自慢の空間。フィッティングスペースもたっぷりとっています。一般的なイメージからすれば倍近い大きさがあるのではないでしょうか。


VIPルームはおもに海外のトランクショーに利用していますが、けして用途を限定するものではありません。チーフひとつ選ぶのにつかっていただいてもなんら問題がないのです。このサロンは、すべての方に開かれた空間を目指しています。

われわれのサロンは中高年世代に評価されています。親から子へというかたちで若い世代のあいだでも支持されるようになっていますが、二の足を踏まれているお客さまがまだまだ多いのは否めません。敷居を低くする空間づくりは二歩目を踏み出していただくための工夫です。

 

カッターを4人揃えた<三越プレミアム>もまた、“敷居”問題の解決に大いに寄与しています。これだけのカッターが常駐していることもさることながら、彼らの親身な接客と110余年の歴史に裏打ちされた職人技を経験されれば足しげく通いたくなること請け合いです。

後半ではカッターの口から<三越プレミアム>の魅力を語ってもらいますが、その前にわたしからもう一点だけ。

われわれはフロアをリフレッシュオープンするタイミングにあわせて、ふたつのハウスモデルを完成させました。ひとつはフロントダーツに象徴されるメリハリのある英国的な型紙、もうひとつはゴージ位置が低く、丸みを帯びたイタリア的なスーツ。いずれも世界に通用するモダンな佇まいがありますが、なにより見逃せないのはボーダーレスなものづくりです。<三越プレミアム>なら、英国に範をとったハウスモデルをイタリアのスーツのように軽やかに仕立てることもできる。世界のテーラードを分け隔てなく学んできた日本のカッターの強みでしょう。

 

”仮縫い”へのこだわり

 

<三越プレミアム>カッター4名:(左から)佐藤慎悟、山岸修、萩原和明、郭浩然

 

──まずはチーフの山岸さんにうかがいます。どんなお客さまがご来店されますか。


 山岸:やはり中高年のお客さまが多いですね。上は90代までいらっしゃいます。

 

──90代でスーツをつくられる。なんとも粋ですね。


山岸:土地柄、みなさま粋でいらっしゃいます。そして着道楽。半年で5〜6着つくられるお客さまもいらっしゃるんですよ。食品売場のついでにのぞかれるらしいんですが、どちらがついでかわからないくらい(笑)、サロンでの時間を楽しんでいただいております。

下町で生まれ育ったお客さまはとにかくちゃっちゃとものごとをお進めになられます。それはスーツをつくられるときも例外ではありません。われわれのオーダーは仮縫いが前提となっておりますが、そういうお客さまのニーズを漏らさず汲み取るためだったのかも知れませんね(笑)。

 

──あらためて<三越プレミアム>の魅力を教えていただけますか。

 山岸:品質、納期、そして金額。手前味噌ながら、そのすべてが調和しているということでしょう。

人と人との付き合いも大切にしています。わたしもこの仕事に就いてすでに30年。常連のお客さまとはほとんど家族に近い感覚でお付き合いさせていただいております。

 

──ていねいなものづくりは業界でもつとに評判です。仮縫いの段階で襟もボタンも裏地も、ときには内ポケットも縫い込んでいるそうですね。

山岸:ハ刺し(表地と芯を馴染ませるための刺し縫い)がむき出しだと、ついそこに気をとられてしまう。襟をつけることでじっくりと全体を確認することができるというわけです。内ポケットは愛用のスマホや財布などをしまったときの具合を確認するのに役立ちます。

 

──スラックスのつくり込みもジャケットのそれに負けていませんね。

萩原:ファスナーやベルトループなどの付属物を取りつけた上で着せつけを行います。ループの位置はじっさいに穿かれた状態で確認し、股上とのバランスを見極めてポジションを定めます。これもほかではなかなかみられませんね。スラックスの裾はテープを貼ってからまつっています。

 

──テープと縫製という二段構えはもとより、まつったピッチの細かさにも舌を巻きます。

萩原:三越というブランドを考えたときにはなおざりにできない部分です。

 

──指揮者のお客さまにおつくりしたスーツはそのようなものづくりが遺憾なく発揮されたとうかがっています。

萩原:リクエストは、指揮する姿が美しくみえるようにというもの。アームホールを小さく、そして背幅を広くしました。いうは易しで、セオリーがありませんから、仮縫いでひとつひとつ確かめながら完成させていきました。

 

”次世代”への思い

 

──おふたりともその語り口は穏やかで誠実で、それだけですべてを委ねたくなるくらい(笑)。これなら若手ものびのびと技術が習得できますね。佐藤さんはこの職場で働くようになって2ヵ月あまりですが、いかがですか。

佐藤:おっしゃるとおりホスピタリティのある先輩方です。カッタールームで製図を引いているときも、フロアで接客をされているときも、心遣いは変わりません。

 

──前職の縫製工場では怒られてばかりだったそうですね(笑)。

佐藤:昔気質のベテランがひしめいている工場でしたからね。けれど、チクチクやるのが性に合ったので辛くはありませんでした。

 

──職人の道を選ばれたのはなぜですか。

佐藤:学生時代のアルバイトにラルフ ローレンを選んだのがきっかけです。そこの職人に指貫の使い方から教わりました。型紙を学びたかったから、(パーソナルオーダーサロンを)次の舞台に選びました。ネックポイントの取り方といい、学ぶことだらけで楽しい毎日です。

 

──これからのお客さまに向けてアピールしたいことは?

佐藤:スーツも柔らかく、軽やかであることが求められる時代です。わたしなら芯地もお好みに応じていちからつくることができます。

 

──郭さんはどのような経緯で?

郭:服が好きで、母国(中国)のファッションの専門学校に進みましたが、物足りなかった。留学しようと思って選んだ国は愛してやまないヨウジ ヤマモトを生んだ日本でした。婦人服がやりたくて文化服装学院に入りました。日本に来て10年になります。



郭:
衣食住といいますが、食も住も足りたいま、衣の役割は相対的に高まっています。この期待に応えるには大量生産ではなく、一点もののものづくりを知る必要がある。なにをやるにせよ、まずはカッターとして一人前になろうと考えました。

わたしはお客さまがなにを望み、どうみせたいかを把握した上で、多様な提案をしていきたいと思っています。わたしからの提案があらたなご自身の魅力を知るきっかけになったら、こんなにうれしいことはありません。

 

──昨年は女性のお客さまにスーツをつくられたそうですね。

郭:ええ。まずご主人からご注文をいただきました。なんとも微笑ましいお話ですが、ご主人はそのスーツを着て、奧さまと一緒に写真を撮りたいとおっしゃっていました。ところが奥さまは「主人の一張羅に合わせる服がないわ」とお困りになっていました。というわけでわたしに白羽の矢が立ちました。つくらせていただいたのは、ノーカラーでロング丈のスーツです。

 

──それはモダン。お喜びになられたでしょう。

郭:おかげさまで今年もご夫婦揃っておつくりいただく予定になっています。

 

──そろそろ暑い夏がやってきます。クールビズへの対応はどう考えていますか。

郭:タイの有無でスーツのバランスもシルエットも変わってきます。ノータイであればバランスにはゆとり、シルエットには柔らかさが求められます。そしてラペルの角度や袖の太さといった細部にいたるまであらたに線を引きなおします。

 

──最後に若手ふたりの抱負をうかがわせてください。

佐藤:魅力あるカッターに成長して、たくさんのお客さまからご注文いただけるようになりたいです。そうして縫製現場で働く人々の生活が守れたらカッター冥利に尽きるというものです。スーツのイロハを叩き込んでくださった現場への恩を忘れることなく精進したいと思います。

 

郭:わたしは日本語に加え、英語も話せます。この語学力を駆使して、若い世代や女性のみならず、世界の人々にもこのサロンの魅力を発信していきたいと思っています。<三越プレミアム>のスーツはサヴィル・ロウにもナポリにも負けていません。そこは胸を張ってやっていきたい。

 

 

山浦:ひとたび足を踏み入れれば沼のようにハマるサロン、それがパーソナルオーダーサロンであり、象徴的な存在が<三越プレミアム>だと自負しています。これまで敷居が高いと感じていたお客さまもぜひ一度足を運んでいただければ幸いです。

 
■ 日本橋三越本店 パーソナルオーダーサロン ■

<三越プレミアム>オーダー詳細
  • 価格:スーツ 396,000円~ / ジャケット297,000円~
  • お渡し:仮縫いまで約3週間 / 仮縫い後、出来上がりまで約5週間


● Instagram:@mitsukoshi_mens_personal_order

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Text:Kei Takegawa
Photograph:Natsuko Okada

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