2021.03.26 update

【インタビュー】今春<ACUOD by CHANU>×伊勢丹で魅せる、情熱という名のファッション


ユニセックスモードストリートブランド<ACUOD by CHANU/アクオド バイ チャヌ>が伊勢丹新宿店 メンズ館2階 メンズクリエーターズにて3月31日(水)〜4月6日(火)の間、ポップアップを開催。また会期直前の30日(火)には、伊勢丹にて行う2021年秋冬コレクションのランウェイショーの模様を、同ブランドとメンズクリエーターズのInstagramアカウントよりLIVE配信予定だ。

それに伴いデザイナーのCHANUさん(以下、チャヌさん)に、ポップアップへの意気込みに加え、デザイナーを志すきっかけとなったこと、服作りで心掛けていること、さらには今後の展望などについて幅広くお話を伺った。


人生で必死に勉強したのは後にも先にもこの2回だけ(笑)。



――チャヌさんがファッションに興味を持ち始めたのは、子どもの頃に夢中になったブレイクダンスとの出会いから。

CHANUさん
<ACUOD by CHANU/アクオド バイ チャヌ>デザイナー

ブレイクダンスは、小学5年生の頃にかっこいい先輩たちがやっていて、一緒に始めたのが最初です。その影響で他のダンスやヒップホップ、さらにダンスと親和性の高いファッションも好きになりました。自分で言うのもなんですが、当時学校の中では着こなしが上手いと言われていて、自分でも自信を持っていました。

でもある時から急に流行が変わり、それまでずっとストリート系が主流だったのに、ポロやチノパンを使ったカジュアル系が流行ってしまったのです。自分はヒップホップスタイルが好きだったので貫いたのですが、その反面、時代遅れだと思われるのも嫌、何をどう着ればいいのか分からず結局、中学3年生の頃まで戸惑っていました。そのタイミングで海外のハイブランドに興味を持つようになりました。

――その後、学生時代にケガをしたことで、服作りで食べていきたいとぼんやりと考えるようになったという。

高校から総合格闘技を始めて、将来的にはそれで食べていきたいと考えていました。でも練習中に肩をケガしてしまい諦めました。その後兵役を終え、自分が好きで本当に打ち込めることは何かと考えましたが、答えが出ませんでした。

ただ、ファッションと日本については以前から興味があったので、とりあえず日本へ行ってみようと思い、行ってみることにしたのです。何の根拠もなかったのですが、僕の直感で、日本に行けば良いことがあるという確信がありました。知人がいたわけでもなく、日本語も全く喋れませんでした。


――日本でまずしたことは語学の勉強。

韓国でも田舎育ちだったということと、故郷と環境が似ていたことから、最初は山梨県に住みました。僕の田舎も温泉とお米が有名なところなのですが、そういう部分も似ていたんです。山梨では日本語学校へ通いました。人生の中でそこまで勉強をしたことはなかったですが、この時はかなり頑張りました。そうしたらどんどん上達して、テストを受けて2回飛び級し、1年2ヶ月で日本語能力検定1級を取得できました。

――当時はファッションへの思いも潰えていなかったので、日本語を習得した勢いで東京服飾専門学校へ入学した。

4年制の高度専門士コースに入りました。世界的なデザイナーになるつもりで入りましたが、ミシンすら触ったことがなかったので、日本語学校の時と同じく、とにかく誰よりも真剣に取り組みました。学校の休み時間でさえ惜しいと思ってしまい、食事もとらず毎日2リットルのお茶だけを飲み、一秒一秒を大切にし常にフル稼働していました。

その甲斐あって、自ら色んなファッションコンテストに片っ端からチャレンジした結果、海外のコンテストでも評価をされ、自分の才能は世界でも通用すると自信を持ちました。


チャヌ氏が在学中、2年生の頃のグループ作品。左は襟をモチーフにしたドレス、右は忍者×パンクをテーマに制作。自分が作りたいものをメンバーに提案し巻き込む形で制作したという。


ポップアップではぜひ試着をして<ACUOD by CHANU>の魅力を肌で感じて欲しい



――デザイナーとして自分の好きな服だけを作りたいという思いから、チャヌさんは専門学校を中退する。

在学中は、インビテーションをもらっていないのに無理やり展示会に押しかけたり、また展示会の会場ではデザイナーさんに質問をするなど、服は買わずに勉強だけさせてもらいました(笑)。そういう経験を繰り返していたら、自分でもやりたいという気持ちが抑えられなくなってしまいました。

そして、2013〜15年頃は東京コレクションがとても盛り上がって、それがすごく楽しくて自分も東コレに参加したいという思いから、3年生が終わった頃に勢いでブランドを立ち上げるために動き、在学中の4年生の時に16AWのコレクションを発表しました。それに加え、別の大きなコンテストにも臨みながら、17SS、17FWと東京コレクションも並行し準備していたので、当時は人生の中で一番大変で、一秒も無駄にできない地獄のようなスケジュールの毎日でした。当時助けてくださった方々にも、このインタビューを通して感謝をお伝えしたいです。このような状況のなか、最終的に出席日数が足りず、中退という形になってしまいました。

2016年<ACUOD by CHANU>立ち上げ後、初の出店の様子

お金もなかったので友達から借金して、なんとかしました(笑)。その後は周囲の方やご縁にも恵まれて、いろいろなことが上手く動き出していきました。そんな中、ある展示会で出店をしていたら偶然「YKK」の方がいらっしゃって、すごく興味を持っていただいたことが大きな出会いでした。


チャヌ氏が在学中、2年生の頃のグループ作品。当時の缶コーヒーのCMからインスパイアを受け、アウターからシューズまで、ジップを多用したコレクション。


学生の頃のグループ課題の時に、生地探しをしていた際「YKK」のエクセラというファスナーに一目惚れしたのです。ファスナー自体が好きだったわけではなく、エクセラというファスナーの造形美に魅せられました。自分が求めるデザインは機能&デザイン、両方の美しさを備えたものが理想なのですが、エクセラはまさにそれだったのです。

今では、ブランドの願いである"時代を開く"、"異なるものを繋ぐ"という考えをファスナーで表現したデザインがブランドを象徴するものとなっています。


――今回のポップアップで販売される2021年春夏コレクションのテーマは「感謝」。



今はコロナ禍という大変な状況ですが、"悪い状況だからこそ感謝の気持ちを忘れずに"、という思いから決めました。僕自身、ブランドを立ち上げた当時はお金も何もなく大変でしたが、周りの人に助けてもらい、何とか今までやってこれていると思っています。マリアさまやイエスさまをモチーフにしたイラストは、ヒロ杉山さんによるものです。

――そして、今回のショーでお目見えする2021年秋冬のテーマについても聞いた。

「自由」です。マスクの携帯や外出時間など、コロナ禍に見舞われてからというもの、それまではなかった規制がたくさん生まれました。そういったものが、今でこそ当たり前のことになっていますが、ファッションはもちろん、"自分の気持ちだけでももっと自由でいようよ"という思いから、このテーマにしました。

――2021年秋冬コレクションでは、イギリスのタータンチェック柄生地の名門<Lochcarron/ロキャロン>社とのコラボアイテムも初お目見え。<CHANEL/シャネル><Burberry®/バーバリー>や<THOM BROWNE/トム ブラウン>など、名だたるハイブランドが同社のチェック柄を採用している。

<ロキャロン>さんとご一緒させていただくお話は2年前からあったのですが、ベストなタイミングで発表をしたくてずっと温めていました(笑)。もちろん、伊勢丹さんのショッパーが<ロキャロン>さんのチェック柄を使っていることも知っていました。

今回伊勢丹さんからポップアップ出店のお話をいただいた時に「(コラボを)実現させるなら今しかない!」と思い、今回お披露目させていただきつつ、やるからにはとことんやりたいと思ったので、伊勢丹新宿店さんでの2021年秋冬のファッションショーも提案させていただき、実施が決まりました。


――<ロキャロン>とのコラボアイテムを含め、今回のポップアップの見どころを語ってもらった。

これまでタータンチェックを使ったアイテムを作ったことがなかったので、今までに無かったデザインや上質な素材感、着心地の良さなどを知って欲しいです。その際、ただ単にハンガーにかかったものを眺めるのではなく、実際に試着していただきたいです。僕の服の良さは試着すれば絶対にわかると思いますから。

――伊勢丹からポップアップのオファーが来た時は、「『ついに自分もここまで登り詰めたか』と思いました(笑)」と冗談交じり語るチャヌさん。自身が抱くデザイナーとしての今後の展望を聞いた。

ファッションはただ単に着るものというだけでなく、パッション(情熱)だと思うので、ワクワクする気持ち、楽しさ、そういった部分を着ることで感じてもらえる服作りをしていきたいです。「衣」「食」「住」の「衣」は、単なる着るための衣服だと思っていますが、僕は「衣」を作りたいわけではありません。着ることで気持ちが高揚するような服、つまりはファッションそのものを作っていきたいです。

イベント情報
<ACUOD by CHANU>プロモーション
  • 開催場所:伊勢丹新宿店 メンズ館2階 メンズクリエーターズ
*諸般の事情によりイベントが変更・中止となる場合がございます。予めご了承ください。

イベント情報はこちら


 
<アクオド バイ チャヌ>2021年秋冬ランウェイショー

3月30日(火) 午後3時より、ブランド及び伊勢丹新宿店 メンズ館2階 メンズクリエーターズのInstagramアカウント(@acuodbychanu@isetanmens_creators)にてライブ配信予定です。

*ランウェイショーは招待制のイベントとなります。予めご了承ください。


メンズクリエーターズ・メンズコンテンポラリー特集ページ




Photograph:Natsuko Okada
Text:Kei Osawa

*本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。商品の情報は予告なく改定、変更させていただく場合がございます。

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伊勢丹新宿店 メンズ館2階 メンズクリエーターズ
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