2020.02.07 update

Vol.16 baanai | 死ぬまでアートに向き合う男の、『ARIGATOU GOZAIMASU』の向こう側(1/2)

伊勢丹新宿店メンズ館2階=メンズクリエーターズ内「ART UP(アートアップ)」において、ペイントアーティストであるbaanai氏を迎え、個展「Capillaries」を2月19日(水)より開催。〈コム デ ギャルソン〉のアートワークを手がけていることで知られる彼の足跡は、昨年の第一回目のインタビューでお伝えした通り。

あれから一年を迎える今回、これまでの変化や2回目となる今回の展示に対する思い、またアーティストとしての今後のヴィジョンなどについて語っていただきました。

baanai氏

インタビュー:Vol.1 baanai | 劣等感が生んだ、圧倒的なオリジナリティ

イベント情報
baanai個展「Capillaries」
    • メンズ館2階=メンズクリエーターズ/アートアップ

昨年と変わらず、今も感謝の気持ちを忘れず懸命にアートに向き合う日々

ーー2019年2月27日(水)にメンズ館2階が先行リニューアルオープンを迎え、新設されたギャラリースペースで、記念すべき第1回目の展示「“inaiinaibaanai”」を開催した。まずは昨年の展示を振り返っての感想を聞いた。

「すごくよかったですし、ありがたかったです。反響もたくさんいただきました。褒めてくださる声をたくさんいただいたのですが、その中でも自分の中で印象的だったのは、自分はこの企画のトップバッターとして参加をさせてもらったということもあって、展示スペースを埋め尽くすように作品を飾らせてもらったんです。でももう少し余白を持って、一つずつしっかり見たかったという意見もあったんです。最初の個展だったので、自分の中ではいかにインパクトを残すかっていうことに重きを置いていたので、そういったことは考えていなかったんですよね。だからそういう声を聞いたときは「なるほどな」って思いました。ただ、やりすぎはやらなすぎよりはマシだと思っているので、そういう意味では自分らしくできたかなって思います」

2019年2月27日(水)~3月26日(火)に開催された1回目の個展「inaiinaibaanai」

ーー昨年は<オーディオテクニカ>のワイヤレスイヤホンとのコラボレーションなど、様々なシーンでその活動を目にできる年だった。仕事の規模が大きくなるにつれて、作品に対するモチベーションの変化はあったのだろうか。

「この1年、変わらずずっと『ARIGATOU GOZAIMASU(”ありがとうございます”という言葉を365日、1日も休まずに絵を描き続けたらどんなものができるのかという、baanai氏の実験的試み)』を描き続けつつ、あとは他のお仕事をやっていました。描く内容に違いはありましたが、気持ち的には特に変わったことはありません。どの仕事も、一生懸命取り組むということが自分の中にはあるので」

ーー数年前、仕事もプライベートもどん底で喘いでいる最中、人生最後の挑戦のつもりで、川久保玲氏に手紙を添えてゲリラ的に作品を送り、評価されたことで色んな意味で道が開けたというbaanaiさん。前述の”最後の挑戦”以来、創作へのギアは常に上がりっぱなしだそう。苦しくないですかとたずねると、「辛いですね」と苦笑いを交えて続ける。

「『ARIGATOU GOZAIMASU』を含めて、毎日やらなければならないことですからね。でもある意味、川久保さんに認めていただかなかったら、人生終わっていたと思うので、そこからは毎日とにかくやるだけっていう感じです。当時はお金もないし仕事もないっていう時でしたから。とにかく「やるしかない」っていう気持ちでいっぱいでした。その気持ちが今も継続しているのだと思います」


ーー開き直ってチャレンジをして道は開けた今なお、まだまだ壁はある。

「細かなことかもしれませんが、上手く描けないといいますか。一つの作品が完成に至るまではもう、毎日思うように描けなくて落ち込んでいます。でも上手く描けないままで終わらせたらダメだと思っているので、何とか良くしようと思いながら描いています。毎日その繰り返しですね」

ーーずっと休まず『ARIGATOU GOZAIMASU』を描き続けているが、自身の中で変化はあったかとたずねた。すると「ちょっと矛盾してしまうのですが」と、前置きをしつつ語る。

「それを描いているからどういうことが起きるのかっていう部分は、気にしないようにしているんです。それを本当に理解するのは、大げさですけど自分が死ぬ間際にわかるんだろうなって思っているので。もちろん、多少は思う時もありますよ。でもそこにあまり固執しないです。何かが起こるために描いているというよりも、ある意味、死を見据えて描いているといいますか。自分が死んだ時に、もしも神様がいたら自分は後半の人生1日も休まず「ARIGATOU GOZAIMASU」を描き続けたってまっすぐに言いたいんです」

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