ゴルフの上手な人ほど、ゴルフウェアを着てクラブハウスには向かわないものだ。家からゴルフウェアでやってくるのはご法度であり、ロッカールームで着替えるのがマナー。ジャケット着用がマストとされるクラブハウスでは、正会員上級メンバーならタイドアップ姿が求められることもある。コースに出たら正統的な出で立ちで颯爽とスイングする姿こそシングルプレイヤーならでは。ラウンド終わりには、来たときとはまた違ったスタイルでファッションを楽しむ上級者もいる。

そんなゴルフ上級者と、これから上級者を目指す人のために、「ゴルフスタイルを洗練させる行き帰りの着こなし」を、ご自身もゴルフを愛するファッション・ディレクターの森岡弘さんに伺った。名門ゴルフ場はもちろん、パブリックにも相応しい服装とは、どんなものか。また一緒にラウンドするパーティが、友人なのかそれとも上司や接待相手なのかによって、服装をどのように変えるべきか。コーディネート例を交えて解説頂こう。


森岡 弘
株式会社グローブ 代表取締役/ファッションディレクター

早稲田大学在学中より、株式会社婦人画報社(現アシェット婦人画報社)にて編集業務にかかわる。同大学卒業後、正社員として入社し、男性ファッション誌『メンズクラブ』編集部にてファッションエディターとして従事。現在は、俳優やアーティスト、文化人などのスタイリングを行なうほか、イベントやショップのコスチューム、企業のユニフォームの制作などにも携わる。


ゴルフ場へ向かう服装からすでにラウンドは始まっている。



まずは前提としてゴルフ場へ向かうスタイルはどうあるべきだろう。休日の朝、街道沿いではゴルフウェアに身を包んだ男性が、迎えのクルマを待つ姿をよく見かけるが、たしかに現地で靴だけ履き替えるのは効率的にも見える。だが森岡さんは「服装はゴルフ場の格式に配慮すべき」と言う。

 
 
 
「もちろん気軽なパブリックコースなら、衿付きのポロシャツでいいというのも事実ですし、気の置けない友人同士なら、仲間内でのスタンダードなスタイルがあると思いますので、それほど気にする必要はないでしょう。でも気をつけたいのは、ゴルフ場はスポーツをする場であると同時に社交場でもあるということ。社交場とは人と人が交わることで、人間関係を深めたり仕事へつなげたりといった様々な要素が絡む場所です。だからこそ一定のマナーが求められますし、ゴルフが紳士のスポーツと言われる所以でもあります。服装は相手に礼を尽くすためのものですから、一緒にプレーする人たち、ゴルフ場のスタッフ、そしてコースやクラブハウスの格式や雰囲気にも礼を尽くしたものであるべきではないでしょうか」

上司や取引先と行くゴルフなら、会社のメンツを潰すことのない良識ある服装が必要だ。名門ゴルフ場の正会員ならば相応の品格を求められるし、ビジターも正会員への礼節を表さねばならない。「ゴルフ場はオフのスタイルだからこそ、ビジネスのドレスコードとはまた違ったカジュアルのドレスコードが必要」という森岡さんが、具体的なコーディネートを示してくれた。

ネイビーブレザーが一着あれば、ゴルフにも仕事にも着回せる。




ジャケット:参考商品


「ネイビーブレザー×チェックシャツ」で"カジュアル"な着こなしに

シルバーのメタルボタンが目印のネイビーブレザー、略して“紺ブレ”は、仕事着にはもちろん紳士の社交場にも相応しい上着。たとえばゴルフの行き帰りには、チェック柄のシャツにチノパンや今流行のドローコードパンツといったカジュアルパンツをセットする。


シャツ:<Ghirardelli/ギラルデッリ> 20,900円
パンツ:<PT01/ピーティーゼロウーノ> 39,600円
■メンズ館5階=メンズテーラードクロージング

ネッカチーフ:<Drake's/ドレイクス> 7,700円
ポケットチーフ:<SEAWARD&STEARN/シーワード&スターン> 13,200円
■メンズ館1階=ドレスシャツ・ネクタイ

このようなプレッピー風味の装いは、ジャケットカジュアルの代名詞であり、誰にでも似合うスタイリングだ。衿元にはシャツと同系色のスカーフを差し、ポケットチーフもあえて柄物を使うなど、いつもと違った小物を愉しむのも一興。こんな着方なら休日ゴルフのお洒落を楽しめる。

「日常と違うファッションを楽しむのもゴルフをする喜びの一つ。普段、仕事でジャケットを着るけれど、休日カジュアルとしてジャケットを着ない人にこそ、こういう印象の良いカジュアルスタイルを楽しんでほしいですね。チェックのシャツはカジュアル感を演出しやすいですしブレザーとの相性も抜群。スカーフを足して首元を隠すと、若々しく見えるというメリットも期待できます。アスコットタイほど堅くないので、洒落っ気を醸すのにも便利です」

「紺ブレ×同系色のパンツ」と合わせて"スーツ風"という意外な着方に

パンツ<PT01/ピーティーゼロウーノ> 40,700円
■メンズ館5階=メンズテーラードクロージング

シャツ<CHOYA 1886/チョーヤ 1886> 14,300円
ネクタイ<MARZULLO/マズーロ> 14,300円
ポケットチーフ<FAIRFAX/フェアファクス> 6,600円
■メンズ館1階=ドレスシャツ・ネクタイ

紺ブレを購入したものの、月に1回程度のゴルフ専用では寂しいうえにコスパも落ちる。そこで平日はご覧のようにタイドアップして仕事着にも着回したい。一見スーツのように見えるが、ここではパンツも同色ネイビーを選んでいる。このように色目に気をつけてコーディネートすれば、ブレザーもスーツのような雰囲気に着ることができるのだ。服選びが難しいと思われるなら、お気軽にイセタンメンズのスタイリストにご相談を。

「ネイビーブレザーにネイビーパンツを組み合わせて遠目にはスーツっぽく見える。ブレザースーツという着方は、スポーツ選手などで好んで着られる方もいます。このブレザーは、大人の男性が安心して着ることができるフィッティングとなっているのも特徴です。ブランドによって、シルエットやサイズ感は様々ですので、大人には年齢を超えた安心感のあるブランド選びが肝心なのです」

スタイリッシュゴルファーはダブルのジャケットを羽織って。



ジャケット<TAGLIATORE/タリアトーレ> 148,500円
■メンズ館5階=メンズテーラードクロージング


「グレージャケット×タートル」で"スタイリッシュ"に

ダブルのジャケットなら、よりファッショナブルなスタイリングができる。たとえばタートルネックのセーターに、柄パンツという組み合わせならクラブハウスでもスタイリッシュ。ノーネクタイだからこそ、ポケットチーフをさり気なく使うのもいいだろう。ブレザー感覚で着るダブルのジャケットは、柔らかく軽い着心地の、アンコン仕立てのものを選ぶこともお忘れなく。


セーター:<FEDELI/フェデッリ> 44,000円
パンツ:<PT01/ピーティーゼロウーノ> 56,100円
■メンズ館5階=メンズテーラードクロージング

ポケットチーフ:<FRANCO SPADA/フランコ スパダ> 5,500円
■メンズ館1階=ドレスシャツ・ネクタイ

「カシミヤ混ジャケットは、これだけでも十分に品のある洗練された感じがしますが、コーディネートに洒落っ気を演出したいので、グレーを生かしたモノトーンにまとめてみました。パンツはチェック柄が目立ちますが、ジャケットと同じトーンのグレーがベースなので、浮いた感じに見えるなんていう心配はありません。タートルネックはフェミニンな印象もあるので、大人の男性をとても温厚そうに見せてくれます。もし余裕があるなら、同じニットの同色カーディガンも購入しておけば、ニットアンサンブルとしても着られますね」

「グレージャケットのタイドアップ」で"都会的なビズスタイル"に


パンツ:<PT01/ピーティーゼロウーノ> 41,800円
■メンズ館5階=メンズテーラードクロージング

シャツ:<FAIRFAX/フェアファクス> 16,500円
ネクタイ:<Earldom/アールダム> 11,000円
ポケットチーフ:<MUNGAI/ムンガイ>5,500円
■メンズ館1階=ドレスシャツ・ネクタイ

もちろんダブルのジャケットは普段使いもできる。ダブルのスーツには少々抵抗のある世代でも、こんなふうにグレーのパンツとセットして、あまり色数を使わないコーディネートに仕上げれば、スタイリッシュな都会のビジネスマンの雰囲気が漂うだろう。シャツはグレーのストライプ、ネクタイもグレンチェックという具合いに、色数を白、黒、グレーに絞ることで、ダブルの貫禄がストイックでモダンな気分に変換されるというわけだ。


「モノトーンと聞くと、黒がベースと思いがちですが、冠婚葬祭ならともかく、普段着るのにはちょっと重すぎますよね。そこでグレーと白をメインに、黒で引き締めるという着方にするとオフィスでのドレスコードも気になりません。ここでは靴やベルトなど小物を黒にして締めるのがポイント。それにグレー、白、黒は無彩色ですので、お好きな色を1点、自由に差す楽しみ方もあります。ネクタイにだけ色を使ったり、ポケットチーフだけ柄ものにしたり、あるいはカラフルなバッグを持つのもいいでしょう」

ゴルフウェアから脱却すれば、ゴルフはもっと楽しめます。



今、多くのファッションブランドが機能性と備えたユーティリティなウェアをリリースしている。そこにはゴルフ場へ向かうだけでなく、プレーにも着られる服が揃っているのだ。森岡さんご自身もゴルフをする際、ファッションブランドからゴルフに着られる服を選ぶこともあるという。


「ストレッチ素材を混紡したパンツなら、スウィングの邪魔にならないし、ポロシャツやニットもファッションブランドのものでも、十分機能的なものがあリます。ゴルフバッグもまた然り。ロッカールームではスポーツバッグより、有名メゾンのトラベルバッグを持ち込む人もいますよね。ぼくの周りの友人でも、そういう人が増えてきています」

ところで、森岡さんのゴルフの腕前は、と尋ねると「ただいま炎上中(笑)」と頭を掻いた。冒頭で「ゴルフの上手な人ほど、ゴルフウェアを楽しでいる」と書いたが、腕前はともかく、ゴルフを楽しむことに上手い、下手は問わない。ゴルフの楽しみ方のひとつとして、道具を選ぶように、服を選んでみてはいかがだろう。

Photo:Natsuko okada
Text:Yasuyuki Ikeda

*価格はすべて、税込です。

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