時代の変化と共に、担う役割が変化した“ハンチング”


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Hat

頭に被る装身具の一つ。寒暖や落下物などから頭を保護する役割を持ち、大きく分けて「ハット(HAT)」と「キャップ(CAP)」の二種類がある。
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19世紀半ばに原型が登場したとされるハンチングは、もともと英国の貴族の方々が読んで字のごとく狩猟をする際に被る帽子として考案されたものです。
これが登場する以前は、狩猟の際にはシルクハットやボーラーハットのような硬い芯の入った帽子をヘルメット的に用いるのが一般的でした。が、これらに比べより機能的かつソフトで着用感に優れていたため、ハンチングは当時彼らに非常に好まれていたようです。


しかも安価に大量に製造が可能であるためか、次第に一般庶民にも普及し、20世紀初め頃にはハンチングは「労働者階級の象徴」へと認識が変化してゆきました。これはキャスケットも同様です。
例えばかつての欧米では、ハンチングは靴磨きや新聞売りの少年を代表するアイコンでしたし、日本でも「丁稚奉公さんの帽子」の典型でした(お線香のコマーシャルで有名なキャラクターも被っていましたね。)。ロシア革命を成功に導いたレーニンもキャスケット姿の印象が強いですよね。

それから、第二次大戦前までのハンチングやキャスケットは今日のものに比べ「はち」、つまり頭を隠す部分がポコッと大分大きめに作られていました。戦争中の物資不足の影響で、帽子に使える布の面積も制せざるを得なくなった結果、今日の大きさになったとの説もありますが、真相は如何に・・・。

文=飯野 高広
いいの たかひろ●大学卒業後大手鉄鋼メーカーに勤務したのち、服飾ジャーナリスト・研究家として独立。紳士靴やスーツなど男性の服飾品全般を執筆領域とし、ビジネスマン経験を生かした視点で論じる。また専門学校で近現代ファッション史の講義を受け持つと共に、テレビ番組への出演・総合監修を行うなど、メンズファッション全般の知識箱的存在として活躍中。著書には、『紳士靴を嗜む:はじめの一歩から極めるまで』『紳士服を嗜む:身体と心に合う一着を選ぶ』(朝日新聞出版)『大切な靴と長くつきあうための靴磨き・手入れがよくわかる本』(池田書店)がある。




Photo:ISETAN MEN'S net
Text:Takahiro Iino

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