【第7回】<PICEA/ピセア>|カシミヤの新しい可能性を掘り起こす

砂漠化や草原退化、伝統的な牧畜業の衰退など、カシミヤ山羊を取り巻く環境は年々厳しさを増している。そんな状況を危惧し、サステイナブルなものづくりを実現するために、ひとりの日本人女性が立ち上がった。


つぼうち・こずえ●株式会社ピセア代表取締役。大阪府出身。紋工社(毛布のデザインハウス)が家業の家に生まれる。老舗繊維商社に勤務後、独立。国内外のカシミヤ生産に携わる。3年前にピセアを設立。

「カシミヤの新しい可能性を掘り起こす」


良質なカシミヤの世界的産地である中国・内モンゴルの東北部は、夏と冬の気温差、一日の寒暖差が激しいことでも知られている。この厳しい環境のなか、カシミヤ山羊の子は春と秋に産声を上げる。

「生後1年未満の子山羊の産毛だけを使うベビーカシミヤは一頭あたり40グラム程度しか採れない貴重な繊維です。一枚のセーターをつくるのに約10頭分の産毛が必要とされ、世界全体の6割を算出する内モンゴル自治区でも年間生産量はわずか10トン前後といわれています。糸の細さを示す“繊度”でいうと一般的なカシミヤセーターが14~16マイクロメートルほどなのに対して、ピセアではもっとも細い13.5~13.9マイクロメートルの極細の繊維を使っています」

近年、モンゴル族の遊牧地域であった草原は、地球温暖化や地下資源開発、過放牧などが原因で、自然の機能を保つバランスが悪化し、砂漠化・草原退化が深刻化している。そうした影響から、伝統的な牧畜業が衰退しつつあることも、坪内氏がピセアをスタートさせるきっかけとなったという。


カシミヤ山羊は草を根まで食い尽くしてしまうため、砂漠化を誘引するとして現在では放牧ではなく宿舎飼育が一般的に。

「牧畜民にとって生活の舞台でもある草原を、持続的に利用できるようにしていくことは急務ともいえる課題です。私たちは、ピセアを通じてカシミヤの宿舎飼育や植樹活動に協力することで、この自然と伝統文化を守り続けていきたいと考えています」

透明性を追求しているのも、ピセアのこだわりだ。「生産は、現地で整毛・紡績からニッティングまでを一貫して行える工場を所有する紡績会社にお願いしています。ピセアの品質が実現できたのは、彼らとの強いパートナーシップがあってこそ。厳密な管理体制のもと、製品から原毛までたどることができるトレーサビリティ(追跡可能性)を実現しています」


カーディガン 108,000円、キャップ 17,280円、マフラー 48,600円


ブランド名の“ピセア”は植樹している樹木の名前。自然の恵みを生かし、カシミヤ山羊を大切に育てて、その毛を製品にして販売することで、大地にも恩返ししたい。そうした想いが込められている。

*価格はすべて、税込です。

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