【第5回】<CINABRE/シナーブ>|環境に優しい、一生もののものづくりを

消費者一人ひとりの考え方を変え、社会にインパクトを与えようとする新しいタイプのつくり手がいる。北欧のバックグラウンドをもつパリジャン、アレクサンドル・シャペリエだ。環境保護と品質を同時に叶えた彼の手法とは。


アレクサンドル・シャペリエ
<シナーブ>創業者・デザイナー。フランス人の父とスウェーデン人の母をもつ。世界でもっとも古い歴史をもつビジネススクール、ESCPグランゼコールを卒業後、金融投資機関で活躍。30歳になったのを機に、バレンシアガ、ジャン・パトゥなどのデザイナーであったミッシェル・ゴマに師事し、2011年に自身のブランド、シナーブを立ち上げる。製品はパリの老舗デパート、ル・ボン・マルシェをはじめ、アメリカ、香港など、世界の高級ショップにて展開中。2015年には、パリ10区に初のブティックをオープンさせた。

“フランス大統領御用達タイ”。大概の人はそう聞くと、誰もが知っている高級フレンチブランドのいずれかだろうと考えるのではないだろうか。だが実は、国家元首が好んで愛用しているのは、彼と同じように若く情熱に満ちたパリジャンが手がけるブランド、シナーブのもの。ボウタイとネクタイを中心としたこだわりのあるメンズアクセサリーラインナップにより、国内外から大きな注目を集めるブランドでもある。

創業者でありデザイナーのアレクサンドル・シャペリエは、金融投資機関での仕事からファッション業界へ転身したという異色の経歴の持ち主だ。顧客である起業家たちが皆、いくつになってもエネルギッシュに活動している姿に感銘を受け、常に興味のあったファッションにおいて自身のブランドをつくりたい、と起業することにしたという。ところが「ブランドをスタートした際、知り合ったアーティストが僕のプロジェクトについて批判したんです。新しいブランドができるということは、地球上にまたゴミが増えることを意味する。すでにたくさんの製品と廃棄物があり、その対処においての明確な方法もないというのに、と。そこで僕が心に決めたことは、自身のブランド製品は、流行りすたりで消費するものではなく、一生使える品質のものにすること、そしてなるべくこれ以上の廃棄物を出さないようにすること、でした」。


<シナーブ>のタイには、アンティークファブリックや古着といった既存の布を活用したものが多い。それには、ほかにないユニークな製品をつくるという意味はもちろんだが、新しい生地をつくって温暖化ガスを増やすのを避けるためでもあるという。

「正直なところ、環境保護やサステイナブルといった考えからすると、ファッションはもっとも遠い世界でしょう。特に現在は、ファストファッションなどがあふれたことで、数回着た服は捨てるといった傾向も多く、非常に問題だと思っています。だからこそ僕らのブランドでは、クオリティを追求したものだけを取り扱っています。質のよい素晴らしい製品を身につけたときは、どんな人でもそのよさがわかり、これだ!と感じるもの。そして一度それを発見したら、安価なものを数多く消費していくスタイルから脱却できると思うんです」。


ビンテージファブリックを活用した、ユニークなボウタイ


昔から古着が好きだったというシャペリエ氏。「ビンテージアイテムだと、現在ではなかなか手に入らないような上質な素材が、ごく普通に使われていることが多いんです。たとえばワークジャケットなども、単なる労働者の上着なのに、まるでオートクチュールで取り扱われているような素晴らしい生地でつくられていることも」。

そういった素材を再利用し、新たにつくる生地を減らすことで、クオリティとサステイナビリティの両立を目指している。縫製が行われるのは、ロワール地方にあるアトリエ。3世代つづく職人一家のクチュリエによって、手縫いで製作されている。

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