一週間かけてアクを抜く

 
<ファビ>について語るとき、見逃せないもうひとつは創業以来、オリジナル・ブランド一本で勝負してきたという事実だ。マルケのシューメーカーはOEM生産で地力を蓄えてオリジナルを立ち上げるのが定石。<ファビ>が例外的な道を歩むことができたのはブレーキのつかい方を知っていたからだ。
 
「できあがったサンプルは仕事場のもっともいい場所に置いて、ひまがあれば眺めます。一日、二日……一週間毎日目の端に入れて、違和感を覚えなければ製品化に進みます」
 

イタリア人ほど美に対する意識が高い国民はない。それは靴づくりにも反映される。快楽的なかれらはフルスロットルでアクセルを踏み込んでくるから、豪華絢爛、天真爛漫な靴になりがちだ。ノーズバランス、ハンドペインティング、レースステイまわりのステッチング……そのすべてで法定速度が守られているのは、マルケの男らしからぬ控えめな性分によるところが大きい。
 


「じつはわたしはデザイン専門の学校を出ていません。わたしにとっての学校は工場でした。でも、エレガンスを知るにはなんの支障もありませんでした。なぜなら教科書で学べるものではないからです。エレガンスは、内面からにじみ出てくる」
 
その実力は同業他社も放っておかなかった。オリジナル一本で勝負してきたと先に書いたが、一度だけOEM生産を手がけたことがある。パンプスというデザインを創造し、王室や女優に愛されたあの<ブルーノ・マリ>のメンズ・ラインがそれだ。

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*価格はすべて、税込です。

Text:Takegawa Kei
Photo:Suzuki Shimpei

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