幸せそうな顧客の顔

 
二代目になることはmustでしたが、どうじにwantだった──マリアーノ・ルビナッチは跡を継いだ理由をそう語ったが、ルカにとってそれは考えるまでもないことだった。朝起きて歯を磨き、顔を洗い、ジャムを塗りたくったコルネットをエスプレッソで流し込む。そんなありふれた生活に溶け込んでいるものだった。
 
「幼いころから父に連れられて店にはしょっちゅう顔を出していました。バックヤードにある生地をおもちゃ代わりに遊んでいたら、時間はあっという間にすぎました。しかしそれ以上に楽しかったのが、お客さんを観察することでした。できあがったスーツに袖を通すとき、みな一様に誇らしげな表情を浮かべるんですね。かれらの顔をみているだけで、わたしは幸せな気持ちになれた。なんて素晴らしい仕事なんだと思いました」
 
高校を卒業したルカは父のすすめに従ってイギリスへ渡り、〈ハンツマン〉と〈キルガー〉で都合2年の修行をした。さらにそこから2年、コモで生地の勉強をして凱旋した。
 
サヴィルロウへのオマージュからはじまったルビナッチ家のものづくりはロンドン屈指のヴィクトリア&アルバート博物館に永久展示されたことで所期の目標を達成した。そうして屋号を<ロンドンハウス>から<ルビナッチ>にあらためた。しかしマリアーノがその恩を忘れることはなかったし、ルカもそれをよく理解していた。

<ルビナッチ>トランクショー
□10月14日(土)・15日(日) 12時~18時
□メンズ館5階=メイド トゥ メジャー
■価格:メイド トゥ メジャースーツ仕立て上がり 140,400円から
■お渡し:約5週間後から
*トランクショーは予約制です。ご予約を希望のお客さまは下記まで、お問い合わせください。
*ご予約に関しましてご希望に添えない場合もございます。予めご了承ください。


Text:Takegawa Kei
Photo:Suzuki Shimpei

*価格はすべて、税込です

お問い合わせ
メンズ館5階=メイド トゥ メジャー
03-3352-1111