2016.10.18 update

【鼎談】Made in Japanの魅力に溢れた昭和の運動靴<Panther/パンサー>に魅せられた男たち



WISM・市之瀬智博──ファッションスニーカーとしてのトライアル

 

パンサーの復刻プロジェクトに協力を申し出た人物はもうひとりいる。渋谷のセレクトショップWISMのディレクター市之瀬智博だ。メディアでもよく知られ、いくつものセレクトショップを仕掛けてきた彼の目にパンサーはどう映ったのだろう。

市之瀬「流行りのハイテクスニーカーとも、ランニングシューズとも違うデザイン。けっしてすぐにはトレンドにならないスニーカーです。お客さまがふと手にとって考え込んじゃいそうでしょ。そこがいまWISMで展開するのにちょうどいいと思ったんです」。

国井と親交のあった市之瀬は、なんの先入観もなくパンサーを受け入れることができたという

市之瀬「バイヤーって、なにか仕掛けるときにトレンドと逆説的なものをやりたいと思うものなんです。うちのスタイルに合わないんじゃないか?って思われるかもしれないけど、そういう考え方は必要ない。むしろ、うちのスタイルに合わせるのが面白いんですから」。

とはいえ、飛ぶように売れるとも思わなかった。現代のスニーカートレンドは明らかにハイテク傾向である。丸く大きなフォルムをもち、外側から見える部分にも履き心地に関わる見えない部分にも最新の機能素材が存分に使われている。パンサーは最新のカップインソールを採用しているが、外観からそれはまったく伝わらない旧タイプのレトロスニーカーなのだ。しかし、それは杞憂に終わる。


「PANTHER DERA」14,040円


市之瀬「場所柄、若いお客さんも多いし、やっぱり若い人に売るのは難しいかなと思いましたね。でもうちにはゆっくりと買い物したい大人のお客さまもいるので、きっと刺さる人には刺さるだろう、と。で、実際に店に置いてみたら反応は2通りでした。ぼくよりずっと年上の大人のお客さまが懐かしいねといって買っていくのと、通りがかりに入ってきた若い子が面白がって買っていくのと2つのパターンが同じぐらいあった。これは予想外で嬉しかったですね」

スタイル提案をしてきたセレクトショップが、あえてモノに寄せて選んだパンサー。「どう履くか」という問いには答えを出さずに受け入れられるのかという疑問は、愚問であった。

市之瀬「いま履き方どうこうってのは、お客さんも決められるんですよね。太いパンツにあわせたい人もいれば、細いパンツに合わせたい人もいて、履き方がわからないから買わないってことはないんです。単純に新しい、面白いという魅力でモノが売れる好例。パンサーにはそんな可能性があると感じました」。

「それからもう一点…」と、市之瀬は言葉を続けた。


市之瀬「また同じ靴が欲しいと思ったときに、もう買えませんと言われると、ユーザーとして悲しい思いをするじゃないですか。僕も、いままでさんざんそういう場面に立ち会ってきました。シーズンが変わるとスニーカーも、デザイナーズブランドの服みたいにコレクションががらりとかわってしまって、同じモデル名でもぜんぜん変わってしまいます。とくに海外ブランドのスニーカーってそうじゃないですか。そうじゃないんだよ!新しいデザインがほしいんじゃなくて、同じものを履きたいんだよ!っていう思いを、パンサーなら叶えてくれると思うんです。だって新デザインにならなそうでしょ(笑)。それってすごく安心感があるし、本当にこのスニーカーが好きな人を満足させてくれる大事な価値だと思うんです」。

「パンサーは定番化されるに値するスニーカーである」。そうも聞こえる市之瀬の言葉。新しいモノとコトばかりを追いかけるバイヤーとしてではなく、ファッションという文化と真摯に向き合ってきた男だからこそ、その言葉には重みがある。

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