2015.11.08 update

【インタビュー】ニクラウス・ホーデル(Weber Hodel Feder/ウエーバー ホーデル フェーダー デザイナー)|ミックスすることで、生まれる快適さ。


クラシックなウィングチップのスタイルに、ベルクロを組み合わせた「ありそうでなかった」スタイルの靴。この靴を生み出した<Weber Hodel Feder/ウエーバー ホーデル フェーダー(以下WHF)>は2012年に3人のメンバー、マティアス・ウエーバー、二クラウス・ホーデル、フローリアン・フェーダーがスタートした新進気鋭のブランドだ。今回初来日したデザイナーのひとり、ニクラウス・ホーデル氏に、その靴づくりに関して聞いた。


この、ベルクロで留めるウィングチップが、私たちのブランドの最初のモデルです。これはもともと、私がアントワープ芸術アカデミーの3年次のコレクションとしてつくったもので、靴の他に服などもつくっていました。それを見たアントワープの靴店「Coccodrillo/ココドリコ」のオーナーが、プライスを設定してくれれば、それを店で販売すると言ってくれたんです。彼らはこの靴とブーツ、トータル49足をオーダーしてくれました。こんないきさつで私たちはブランドが存在する前に、いきなりファーストストックを持つことになったんです。オーダーをもらった後にイタリアに行って、マティアスが知っていたファクトリーに靴をつくってもらうよう交渉しました。そのファクトリーのオーナーの娘さんがアカデミー出身者で、仲がよかったんです。


その後、友人のジャーナリストの紹介で、「OPENING CEREMONY/オープニングセレモニー」の方が私たちに会いにきてくれました。その方はアカデミーのマスタークラスの審査員としてアントワープに来ていて、「ココドリロ」で私たちの靴を見てくれていました。彼はNY、ロンドン、東京、LAの各店分を買い付けてくれて、スタートしてわずか6、7ヶ月後に世界中に私たちの靴が並ぶことになったのです。
そこからはゆっくりと、最初のコレクション、ベルクロの靴とブーツのほかに3つのスタイルを作りました。現在コレクションでは12〜15スタイルを展開しています。次の春夏にはスケーターシューズにインスピレーションを得たモデルも展開します。


私たちは3人ともアントワープ芸術アカデミーでファッションデザインを学んでいて、シューズデザインを学んだわけではありません。でもみんな靴が好きでした、私は広告業界でアートディレクターとして働いていましたが、ファッションの道に進もうとアントワープに来ました。そしてファッションを学んでいる過程で、靴に興味を持ち始めたのです。それはプロダクトデザインの要素が強く、クラフト的な側面もある。特にメンズシューズの場合には、サイズやスタイルなど、制限も多いですよね。でもその小さなフィールドでも、数多くのことが出来ます。アートディレクションの世界から来た私にとっては、既にあるスタイルやデザインをリファインすることは容易に理解できました。マティアスとフローリアンと話して、靴づくりへの情熱をシェアできることを確認しました。私たちはそれぞれが違うバックグランドを持っています。マティアスは、スタイリストの経験の後、ドイツで別のファッションスクールに行っていました。アカデミー卒業後は<H&M>のデザインチームで働いていました。フローリアンは、アントワープに来る前はミュンヘンのブティックのマネジャーでした。セールスなどに関してはフローリアンに意見を聞いています。マティアスはもちろんスタイリング的な側面と、あと素材についても詳しいですね。


私たちがこのハイブリッドなスタイルを生み出した2年半前に考えていたことは、ミックスすることで快適さを生む、ということでした。クラシックでありがらもコンフォートなスタイルはある。例えばそれはカシミア生地でつくったジョギングパンツのようなものでしょうか。そのために、イタリアのクラシックな靴づくりにあるルールを転換していくことが必要です。私たちはいつも「出来ない」というファクトリーの現場に対して、こちらの考えも面白い、楽しいでしょうと説得して、やってきました。いまではお互い信頼していますが、それはここまで議論をつくしてきたからなんです。彼らが何十年にもわたってつくり続けてきたクラシックシューズに関するヘリテージを尊重しながら、私たちはそれを新しい形で使う。毎コレクション議論はありますが、ファクトリーとはいい関係を続けています。どんなにデザインがよく描けたとしても、その現場なしには、いい靴はつくれませんから。フードにスニーカー姿の3人の若者が、70歳を超えるベテラン職人たちと一緒に仕事をする、この靴がそれをどう実現したかを物語っていると思います。


──WHFの目指すモノづくりとは、どういったものでしょうか?
私たち3人は同じテイストを共有しています。若い頃はスケーターウェアを着て、ヒップホップを聴いていました。ストリートカルチャーは私たちにとっていつも重要なものです。そうしたストリート感覚を、イタリアのハンドメイドによるクラシックな靴に吹き込もうとしています。最終的には、私たちのようにかつてストリートカルチャーに親しみ、いまもそうしたディテールが好きなビジネスマン、またはスニーカーには飽きたけどあまりドレスな感じには抵抗がある若者たち、双方にアピールできるといいですね。


Text:菅原幸裕 Sugawara Yukihiro
Photo:橋本裕貴 Hirotaka Hashimoto


Weber Hodel Feder/ウエーバー ホーデル フェーダー

アントワープ王立芸術アカデミー出身のマティアス・ウエーバー、二クラウス・ホーデル、フローリアン・フェーダーがの3人が2012年にスタートした新進気鋭のブランド。
ブランドアイコンともいえるクラシックなウィングチップのスタイルに、ベルクロを組み合わせた靴はメンバーの一人であるニクラウス・ホーデルがアカデミー在学中に生み出したもの。現在ではイセタンメンズをはじめニューヨークやパリ、ロンドンの有力ショップも取り扱いをスタートし注目を浴びている。

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