2022.07.01 update

<ブレゲ>伝説の時計師、 その魂を今に受け継ぐ

ダイヤルにムーブメントをほぼむき出しとするアバンギャルドな外観は、創業者アブラアン−ルイ・ブレゲが確立したスタイルやデザインを受け継ぎ生まれた。18世紀から時を超え、メゾンの伝統に革新性が盛り込まれた。

 

 

随所にメゾンの伝統を宿し、
先進技術も注ぎ込む

<ブレゲ>の歴史は1775年、アブラアン−ルイ・ブレゲがパリのシテ島に開設した時計工房に始まる。修業先で既に腕前を認められていた彼は、自身の工房から世界初の実用的自動巻き機構ペルペチュエルや耐衝撃装置のパラシュート、トゥールビヨンなど数々の時計機構を生み出し、また革新し、時計の進化を2世紀進めたと称賛されるほどの才気を発揮した。また針やアラビア数字のデザインにおいても、今日まで続く一つのスタンダードを作り上げた高い美意識の持ち主であった。

 


新作のトラディション7597。露わになったムーブメントは、初代ブレゲが好んだシンメトリーな美観を呈する。ダイヤルの下から長く伸びる日付表示針はパーツを乗り越えさせるため、途中で強く2段に折り曲げた。

 

現在の<ブレゲ>は、創業者が生み出した機構や意匠などを引用・再解釈した製作を続け、さらに革新の精神も継承する。中でも2005年に始まった「トラディション」コレクションは、初代が製作した2種類の懐中時計を明確な手本として誕生した。下に並ぶ2点が、それだ。上はフランス革命後の資金難から立ち直るために価格の4分の1を前金制とし、予約販売した「スースクリプション」。時針のみが備わるシンプルなムーブメントは、やがて下にあるような左右対称の構造へと進化し、ケースの背面にむき出しの時針を置いて暗闇でも針に触れて時間がわかるようにした。これを名づけて「モントレ・ア・タクト(触覚時計)」。これらを規範とし、透明なサファイアクリスタルの下にオフセットダイヤルとシンメトリー構造のムーブメントとを閉じ込めた、トラディションの独創的なスタイルが生み出された。そのダイヤルを彩る装飾は、初代ブレゲが時計に初めて応用したギヨシェ彫り。当時と同じ仕組みの手動機械を用い、手彫りされている。ダイヤルの右下で時を刻むテンプのブリッジには、前述のパラシュートに範を採る耐衝撃機構を装備。そして上の写真に見て取れる自動巻きローターは、初代がペルペチュエルで用いた錨形の分銅を模す。またムーブメントを構成するパーツのすべてに手仕事による磨きや装飾仕上げを施して、表と裏から見せるにふさわしい最上級の審美性が与えられている。

 


1809年に販売されたスースクリプション懐中時計「No.1576」。

 


1809年販売と記録が残るモントレ・ア・タクト「No.2292」。通常蓋は閉じられダイヤルだけを外に見せ、裏面に触れて時間を知るためのアロー形の時針が備わる。

 

随所にメゾンのトラディション=伝統が息づくが、同時に先端技術もブレゲは注いだ。テンプの振動を促すヒゲゼンマイを、従来の合金ではなくシリコン(ケイ素)製としたのだ。金属より遥かに精密な成形ができるシリコンは、理想の形状が得られ精度を高め、また機械式時計の大敵である磁気にも強い。この技術を<ブレゲ>はいち早く導入し、時計界をリードしてきた。技術革新なくしては、伝統の継承はなし得ないことを、現代の<ブレゲ>は周知する。

 

 

オフセットダイヤル左側で
上下に60秒をカウント

TRADITION AUTOMATIQUE
SECONDE RÉTROGRADE 7097

 


トラディション 7097

 


トラディション 7097の背面。錨形の自動巻きローターは完璧な鏡面に手仕上げされ、まばゆいばかりに光を全反射する。

 

18KWGケース:直径40mm/自動巻き
4,114,000円

 

オフセットダイヤルに重なる円弧状の目盛りを指し示す針は、下から上へ60秒をカウントし、瞬時に0位置に戻るレトログラード秒針。敢えて左右対称を崩すように配置したことで、下側に構築されるムーブメントのシンメトリー性が強調された。そのベースとなる地板とパーツを支えるブリッジをサンドブラスト仕上げとしてプラチナ族の金属でスレートグレーに仕立て、ロジウム仕上げの歯車やテンプを浮き立たせた、仕上げと色の操作も巧みだ。ダイヤルに置く時分針は初代が考案したデザインで、他社もブレゲ針と呼ぶ古典のスタンダード。スチールで形作った後、熱することで鮮やかなブルーに発色させている。

 

 

シンメトリーの美を堅持する
レトログラード式日付表示

TRADITION QUANTIÈME
RÉTROGRADE 7597



トラディション 7597

 

18KWGケース:直径40㎜/自動巻き
4,741,000円

 

2020年に誕生したトラディション初の日付表示は、シンメトリーな構造美を極力壊さないために上の「7097」の秒針と同じく円弧状に運針し、月初めにフライバックするレトログラード式を採用。その強く折れ曲がった立体的な針は、露わになったパーツ類が織り成す奥行き感をより際立たせる。日付調整は、ケース左上のボタンで操作する仕組みに。レトログラード機構は、メゾンは明言していないが初代ブレゲの発明との説があり、1805年に販売された懐中時計「No.92」の日付と曜日の各表示に同機構が使われている。このブルーダイヤルは、今年の新作。アリゲーターストラップも、同じ色調のブルーに丁寧に整えた。

 

 

INFORMATION
ウォッチコレクターズウィーク
「ウォッチコレクターズウィーク」にて、掲載商品を展示・販売予定。
  • 開催期間:7月6日(水)~7月19日(火)
  • 開催場所:伊勢丹新宿店 本館5階 ウォッチ
*誠に勝手ながら、2022年7月8日(金) 伊勢丹新宿店本館5階時計売場はイベント開催につき午後5時に閉場させていただきます。他のフロアは通常営業致します。

 

イベントのお問い合わせ
伊勢丹新宿店 本館5階 ブレゲ ブティック
電話03-3352-1111 大代表

 

『BRUTUS』2022年7月1日発売号掲載
photo:Masahiro Okamura
text:Norio Takagi

 

*価格はすべて、税込です。
*本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。商品の情報は予告なく改定、変更させていただく場合がございます。

 

ブレゲ ブティック銀座
電話03-6254-7211
HP:www.breguet.com/jp