【体験】想いと共に「受け継ぐ」~<サルト>が繋ぐリメイクストーリーとは?


「祖父が亡くなって6年が経ち、遺品を整理していたら、自分の好みの色柄のスーツと着物が見つかったので、サイズを直して着られませんか」と、メンズ館に問い合わせてきたのは、24歳の宝生(ほうしょう)朝哉さん。現在は自衛隊に勤務していますが、日本の伝統芸能「能楽」ワキ方の下掛宝生流(しもがかりほうしょうりゅう)の十三世宗家・宝生欣哉氏の長男です。依頼を聞いて、特別に下掛宝生流の稽古場に出向いたのは、洋服お直しの専門店「サルト」のフィッターの中村さん。さて、どんなスーツと着物に出合えるでしょうか。


今回の記事に登場するお2人
宝生朝哉さん
1998年、下掛宝生流十三世宗家・宝生欣哉氏の長男として生まれる。
5歳から高校卒業まで舞台に立ち、現在は航空自衛隊に勤務。2023年4月に任期満了のため退職し、下掛宝生流に復帰。
中村駿佑さん
熊本県出身。
婦人服のお直し職人を経て、銀座サルトに入社。
2021年にサルト伊勢丹新宿店の店長に就任。
体型のお悩み補正とデザイン変更を得意とする。


  1. 【オーダー編】「孫の朝哉に着てほしい」という声が聞こえたような気がします
    1. リメイクして「こんなシーンで着たい」というイメージは大切です
    2. イメージをつかんで、具体的な「リメイク」の方向性を考えます
    3. 採寸の流れ
    4. 仮止めが完成
  2. 【完成編】“受け継ぐお直し”が完成。 祖父を思う気持ちが、カタチになった!
    1. 巡り巡って自分の元に来る感動。モノを継承することはロマンです


【オーダー編】「孫の朝哉に着てほしい」という声が聞こえたような気がします



宝生朝哉さん(以下、宝生):中村さんに見ていただきたいのが、祖父が遺していったスーツと着物です。着物のリメイクは難しいですか。

中村駿佑さん(以下、中村):着物を洋服へというリメイクは最近多くなってきています。着物は素敵な色柄が多いので、「捨てられない・もったいない」と、相談に来られる方が多いですね。

宝生:着物のままではあまり着る機会がないと思いますが、シルク素材の上品な小紋柄なので、リメイクして洋服にしたら大事に着ると思います。

中村:シャリッとした生地なので、開襟シャツなどいかがでしょう。余った生地は小物にして、紺の裏地までまんべんなく使ってリメイクしたいですね。お見せいただいた着物もスーツもコンディションが良いですが、どんなお祖父さまだったんですか。

宝生:祖父は十二世宗家で、舞台や稽古ではとても厳しかったですが、ゴルフやスキーなどアクティブな事や遊びが好きな人で、そういうところが人間味のある人でした。自分にとっては「面白いことをたくさん知っている自慢のお祖父さん」でしたね。祖父を知る方からは、「朝哉は閑先生によく似ている」と言われていて、祖父の若い頃の写真を見ると本当にそっくりなんです。


宝生:普段は着物を着ていたので、遺品にスーツがたくさんあったのには驚きましたが、よく見るとスーツの色柄の趣味も似ていて、血のつながりはすごいなと思いますね。

中村:モダンでお洒落が好きな人だったんでしょうね。お持ちいただいたスーツも1着オーダーで誂えていてたようですね。細部にこだわりを感じます。


リメイクして「こんなシーンで着たい」というイメージは大切です


中村:
宝生さまは、ご自身のファッションや着こなしはどういうイメージをお持ちですか。リメイクに際してヒントをいただきたいのですが。

宝生:さきほど「開襟シャツ」と言われていましたが、古いものは好きです。ただ、昔のままだとコスプレになってしまうので、モダンヴィンテージ風の襟付きシャツになるとうれしいですね。

中村:古いものがお好きというのは、宝生さまのクルマとオートバイを見るとよく分かります。1970年代の日本車を代表する傑作と称される「いすゞ117クーペ」は久しぶりに見ました。


宝生:117クーペはイタリア人デザイナーのジウジアーロがデザインを手がけたクルマで、乗るときは“イタリア系の服”をよく着ます。オートバイは世界最古のオートバイブランド、ROYAL ENFIELD(ロイヤルエンフィールド)の1942年・英国製で、乗るときは“ブリティッシュカントリー調”の着こなしをしていて、改めて考えると、乗り物に合わせて服を決めていますね。


中村:それは大きなヒントです。お直しのイメージが湧いてきました! 後ほど宝生さまの体型の採寸と、スーツのお直しの調整をしますので、「お気に入りのクルマやバイクに乗っているところを想像」していただいて、ご要望をお聞かせください。

宝生:実は、祖父もクルマやバイクが好きだったんです。芸事の祖父も尊敬していますが、普段から面白いものを知っているカリスマ的な存在だった祖父を、今自分がならっているんだと思います。


イメージをつかんで、具体的な「リメイク」の方向性を考えます


中村:
では、着物は縫製をバラして、開襟シャツをご提案します。残った生地で、ネクタイとポケットチーフを作りたいと思います。


中村:シャツの裾はインでもアウトでも着られるようにして、真夏以外に着られる長袖に。袖のカフス裏に紺の裏地を付けて、袖をめくってアクセントになるようにしましょう。

宝生:スーツのリメイクの依頼は多いんですか。

中村:コロナ禍になってから増えていますね。世界的なサステナブルやSDGsの影響もありますが、例えば会社の上司が着なくなったスーツを部下に譲ったり、また、お父さまのコートを娘さんがご自分で着られるようにリメイクするといったことも増えています。「メンズアイテムを女性が着る」のもトレンドなので。

宝生:上司が大事に着ていたスーツだからこそ生地も上質だったり、手入れもしてあるので、譲る側も受け取る側もきっと「人と人の繋がり」を求めているのでしょうね。いろんな受け継ぎ方がありますね。

中村:スーツのお直しは、宝生さまのクルマとバイクをイメージして、それぞれの良さを活かしつつ、1着は肩パットを外して、オフのシーンでも着られるイタリア風に、もう1着はお仕事やオフィシャルな席に着ていける正統派のスーツにというのはいかがでしょう。


採寸の流れ


①胸囲を採寸します。
 
②ご相談をしながらデザインを調整
 

③上着の仮止めを行います
 
④スラックスのシルエットを確認しながら仮止めを行います。
 

宝生:とてもイメージしやすいです。こういうリメイクで一番難しいことってなんですか。

中村:完成品をお直しするので、お客さまに、できることとできないことをちゃんと伝えることですね。特に、宝生さまのスーツの1着は、お祖父さまの体型補正が入ったオーダー品なので、あまり極端には直せません。


仮止めが完成




宝生:
なるほど。でも、中村さんがイメージしたとおりにお直しできて、自分が着られる服になったら、祖父も喜んでくれますね。楽しみです。

中村:今回は仮縫いも行いますので、ご期待ください。


【完成編】“受け継ぐお直し”が完成。 祖父を思う気持ちが、カタチになった!

中村:まず、1着目のスーツですがかしこまった席でも着られる「英国調」にお直ししました。ジャケットは上から詰めて、肩を少しビルドアップし、Vラインとゴージラインを上げて、ウエストを少し絞り、カッチリしたイメージにしました。組下パンツは、ウエストから膝裾にかけてテーパードさせました。試着してみて下さい!


スーツのリメイク 77,000円

宝生:自分の身体にピタッとフィットしています。お直しが難しかったのはどこですか?

中村:宝生さまはややO脚気味で、パンツのセンタークリースのラインが外側に逃げるので、きちんとセンターに納める調整が難しかったです。

宝生:仮縫いして頂いたのはどこが変わっていますか。

中村:仮縫いからは1センチ単位の細かい補正を入れているので、着心地は良くなっていると思います。

中村:もう1着は、攻めてる「イタリア風」のスーツです。「優しいお兄さんがキリッとスーツを着こなしている」感じで、肩はカチッとしすぎないようパッドなしで、裄綿(ゆきわた)など副資材もなくしています。肩から着丈を詰めて、ゴージラインを上げて、返りを付けているので、前を開けて着ても立体感が出ていますね。パンツは、リラックス感を出すために、タックを追加してツータックにしています。


スーツのリメイク 77,000円

宝生:カッコイイですね。こういう着こなしは初めてです。70年代風のヴィンテージ感があって、自分には新境地です。117クーペに乗って、颯爽と駆け抜けられそうです。

中村:雰囲気を出すために「あえて」手を加えているので、オフにぴったりだと思います。開襟シャツも遊びのシーンで着てください。


シャツのリメイク 49,500円

宝生:とてもきれいなシャツに仕上がっていますね、すごい。

中村:シルク100%の軽く上質な生地を活かして、襟の開き具合を大きくして、裾はスクエアにしています。繊細な生地なので、背中やカフス裏には紺の着物の裏地を当てています。上品な小紋柄が映えるネクタイとチーフもきれいです。

宝生:裏地にまで使ってくれてうれしいです。今年の夏休みは、この開襟シャツとグルカショーツで決まりですね。


*腕まくりが映える紺の裏地
 

ネクタイのリメイク 16,500円
チーフのリメイク 5,000円
 


巡り巡って自分の元に来る感動。モノを継承することはロマンです


中村:
試着が終わって、感想はいかがですか。

宝生:お直し前は、やはり祖父の着物と服なので、「着られている感」がすごかったですが、リメイクしてもらってびっくりしました。仮縫いのときも着やすく感じましたが、出来上がりを着てみて「自分のもの」になった気がします。100点満点で120点です!

中村:ありがとうございます。宝生さまは特に日本の伝統芸能の家に生まれているので、「受け継ぐ」ということにはいろんな思いがありますよね。

宝生:そうですね。実は来年4月に自衛隊を退職して下掛宝生流に戻るんです。自衛隊に入隊して「自衛隊(国防)が護るもの」とは、「日本の文化や財産」なんだと考えました。その経験を通して、自分だからできること、「自分が護るべきもの」を考えたとき、それは紛れもなく「日本の伝統芸能」である能の世界だと思いました。祖父をはじめ「これまで代々続いてきたものを受け継ぎ、護り続けていきたい」と今強く思っています。


中村:素晴らしい考え方ですね。大事なものを受け継いで、新しい価値と意味をこれから作っていってください。

宝生:はい、自分のオートバイは80年前に製造されたまま乗っていて、エンジン音を聞くと感動します。クルマもバイクもこのリメイクした祖父の服も、「巡り巡って自分の元」に来てくれた。それはもう現代のロマンそのものです。もしかしたら捨てられていたかもしれない祖父の着物とスーツですが、自分を楽しませてくれる服として、大事に着こなしていきたいです。




イベント情報
「サルト」リメイクプロモーション
  • 開催場所:伊勢丹新宿店メンズ館5階 メイド トゥ メジャー

オーダー詳細

  • 価格:スーツのリメイク 55,000円から
  • お渡し:約1か月後から


*撮影時のみマスクを外して、撮影を実施しています。
*お直し箇所によってお値段が変わります。詳しくは店頭スタッフにお尋ね下さい。

*お持込みの衣料品に第三者の商標権、著作権、肖像権、パブリシティー権などの 存在が予想される場合や、衣料品のデザインなどが公序良俗に反すると思われる 場合には、 製作をお断りさせていただくことがございます。

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*掲載の情報につきましては、諸般の事情により予告なく変更・中止させていただく場合がございます。予めご了承ください。必ず事前にホームページをご確認いただき、ご来店ください。
*新型コロナウイルス感染拡大予防の観点から、お客さまのご入場を制限させていただく場合がございます。予めご了承くださいませ。




*本特集記事の<サルト>の取り組みについては3/19(土)発刊の「THE GENTLEMEN CLOTHING SPRING&SUMMER 2022」にてご紹介しています。
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