2019.11.21 update

【特集|インタビュー】稀代のファブリッククリエイターが牽引、“機能服”のパイオニア<C.P.COMPANY/C.P.カンパニー>がこれからもスペシャルである理由(1/2)

ミリタリーウェアの機能性を日常的なカジュアルウェアへと落とし込み、“ガーメントダイ(製品染め)”という技法を考案したといわれる<C.P.カンパニー>。自社製品のファブリックに並々ならぬこだわりを見せるこのイタリアンブランドにおいて、“ファブリッククリエイター”という最重要職を担うステファノ・ポラト氏にインタビュー。<C.P.カンパニー>は他ブランドとどこが異なり、なぜ創設から半世紀を経てもなお“特別”であり続けられるのだろうか──。


ステファノ・ポラト


創業者より受け継がれる、唯一無二の革新的アプローチ。


グラフィックデザイナーとして活躍していたマッシモ・オスティ氏によって、<C.P.カンパニー>がイタリア・ボローニャで設立されたのは、今からおよそ50年も遡る1971年のこと。今でこそ当たり前になっているが、ミリタリーウェアやワークウェアの機能的なデザインやディテールを、世界で初めてカジュアルファッションに取り入れたといわれているエポックメイキングなブランドだ。

「マッシモは既存のファッションブランドとは、まったく異なるアプローチでそのクリエーションを進化させてきました。そのアイデアのなかでも特に重要なのが、ミリタリーウェアやワークウェアの優れた機能性に注目し、その仕様やディテールをファッション性の高い製品に組み込むことだったのです」

そう語るスタファノ・ポラト氏は、<C.P.カンパニー>でファブリッククリエイターを務める重要人物。なかなか聞き慣れない役職ではあるが、それもそのはず。職人的なブランドが数多く存在するイタリア国内でも、非常に珍しい存在なのだ。


「創業当時、衣類向けではない産業用の素材というのは、日常生活に取り入れることがとても難しく、誰も考えないような時代でした。しかしマッシモ率いる<C.P.カンパニー>は、繊維や生地のサプライヤーたちとチームアップし、元来は他の産業向けだがファッションとして使えるような、まったく新しい素材を共同で開発してきたのです。困難を極めるこの取り組みによって、さまざまな原材料や加工技術を開発。その代表例が、“ガーメントダイ”という革命的な染色方法だといえるでしょう」

“ガーメントダイ”とは文字通り、ガーメント(製品)をダイ(染色)する加工のこと。つまり糸や生地の段階ではなく、縫製まで完了した製品に限りなく近い状態のプロダクトの全体、あるいは一部にカラーリングを施す染色方法だ。当然、縫製糸や織りネームにまでその影響は及び、生地の耐久性や質感、縮率までコントロールするのは極めて難しい、<C.P.カンパニー>が世界で初めて本格的量産に成功した、革命的かつ画期的な技術として知られている。


ブルゾン 183,700円
 

「我々はイタリアにガーメントダイ専用の工場を設立し、さまざまなテストとチャレンジを繰り返しながら多くの製品を生み出してきました。それにより、黒、グレー、ネイビーなどばかりだった時代から、鮮やかなピンクやイエローなどスペシャルカラーのアイテムを提供することができたのです。以前はコットンなどの天然素材に比べ、ナイロンやポリエステルといった化学繊維の染色はとても難しかった。しかし我々はマッシモが挑んだアプローチを継続し、継承して、インダストリアルなものからスポーティーなものまで、多彩な素材を開発してきたのです」