2019.10.09 update

Vol.11 <amachi.> × Kurina Ninomiya|アートとファッションの間をたゆたうニットの未来(1/2)

10.16 Wed -11.01 Fri
メンズ館2階=メンズクリエーターズ/アートアップ

メンズ館2階=メンズクリエーターズ内のギャラリースペース「ART UP(アートアップ)」において、今業界内外から注目を集めている気鋭のブランド<amchi./アマチ>と、アーティスト・二ノ宮久里那さんによる共同展示「Obsevation Records of Light」を10月16日(水)から11月1日(金)の間で開催。

2019年秋冬コレクションの<amachi.>のコレクション内で「”Obsevation Records of Light”」というテーマでコラボレーションをして以来、継続して作品を発表している。

今回は長野県にある<amachi.>のアトリエにうかがい、<amachi.>デザイナーの吉本天地さんとアーティストの二ノ宮さんにインタビュー。前半は二人の出会いや二人が抱くニット作品に対する思いなど、後半は吉本さんが気分転換などの際によく訪れるという、アトリエからほど近くにある山の中に場所を移し、展示のテーマやポイント、お二人の今後について聞いてきました。

イベント情報
amachi. × Kurina Nimomiya
「Obsevation Records of Light」
□10月16日(水)〜11月1日(金)
□メンズ館2階=メンズクリエーターズ
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コラボニットは感覚が共鳴することで生まれる


 

 

二人の出会いのきっかけは何だったのだろうか。

 

吉本:最初は自分が一方的に二ノ宮さんの作品を知っていました。実は19AWのシーズンがブランドとして本格的にニットウエアを始めた最初のシーズンで、そのタイミングで自分一人でやるよりは、また全く違った視点を持った人に入ってもらいたいっていう思いがずっとあったんです。深いところで共感できる部分がありそうだなっていう。それで直接コンタクトをとりつつ、共通の知人を介して紹介をしてもらいました。

 


二ノ宮さんが抱いた吉本さんへの印象はというと。

 

二ノ宮:最初にお話をうかがった時点で、すでに共感できるエピソードがいくつかあったんですよね。二人とも、昔から自然物で遊んでいたっていう部分だったり。生まれ育った場所の風土も文化も違うけど、原風景の中に人工物じゃ無いものが多いところがなんか自分と近いなって。違和感を感じない部分が最初からたくさんありました。

 


ニノ宮さんが素材としてニットを使うようになったきっかけは、学生時代の些細なことから。

 

二ノ宮:富山県の高校を卒業して、東京の文化服装学院に入学しました。ニット科ではなくスタイリスト科っていう流通系の科だったのですが、ファッションについての様々なことを幅広く学べるところだったということもあり、ニットの道具も持っていたんです。何かを編むわけではないのに糸を買ったりする時期とかもあったりして、最終学年の3年生の時に色々作るのに目覚めた時期があって、その時に寒かったからマフラーを自分で編んだんです。そこから始まりましたね。案外変なというか、普通じゃない感じのマフラーが出来上がって自分でも気に入ったので、学校につけて行ったらすごいみんなに褒められて、そこから編み物が楽しくなってほぼ毎日編むようになって、今に至るっていう感じです。

 


吉本さんがデザイナーを志すに至っては、生い立ちが大いに関わっている。

 

吉本:幼少期を過ごした場所が北カリフォルニアの内陸だったのですが、今思い返すと非常に特殊な環境で、電気も水道も通っていない山奥に、ミュージシャンや陶芸家、画家など様々なバックボーンを持った人々が小さなコミュニティを作って生活しているという環境でした。

様々な表現、思考に触れる中で自分なりの考えや表現を持つのは自然な流れだったのかなと思います。8歳の時に日本へ移住し、高校を卒業してすぐにブランドで働き始めたのですが、その時にはもう自分でブランドを始めるということは決めていました。

きっかけを遡るとカリフォルニアで暮らしていた幼少期、服は母が自分で作っていたり、住んでいたエリアがヒッピーカルチャーの中心だったので、タイダイ染めとかも全て自分たちでやっていたりして、服作り自体が割と自分の身近なところにあったんです。その影響が強かったのだと思います。

 


二ノ宮さんにとって〈amachi.〉でのコラボレーションは、自らの創作にも良い影響をもたらしているそう。

 

二ノ宮:まず制作の始まりと完成を決めるのが自分だけじゃないっていう部分が大きいです。しかもコンセプトは私発信ではなく(吉本)天地さん発信っていう。最初に天地さんがシーズンのコンセプトをあらかた決めて、参考になる本や資料を教えてもらい、それを共有して作っています。他の人の個人的な世界観や興味があることを自分なりに紐解き直すといいますか、そういうプロセスはすごく新鮮ですね。自分自身の制作と同じくらい天地さんとの服作りも、かなり楽しんでやらせてもらっています。今後もどっちもやっていけたらいいなって思っています。自分にとっては相乗効果があるというか、自分自身の制作や活動からは得難いものを〈amachi.〉との共同制作で得ていて、お互いに無い部分を補っているんですよ。



目指すは、感覚的により一層お互いに踏み込んだ作品作り


 

 

吉本さんのデザイナーとしての素地は前述のアメリカでの生活が大きく影響を与えているが、デザインを考える際に意識していることはあるのだろうか。

 

吉本:今は都市にいる時間も長いので、自然と都市の物理的、精神的距離感をどう測るかということや、物凄いスピード感で変化し消費していく現代の生活の中に、どう自然の持つ時間軸や普遍性、複雑性を見出し、混ぜ合わせていけるのかというところからコンセプトを立てていくことが多いですね。特に今は仕事で都市部に行くことも多いので、その行き来の間といいますか、移動している生活環境そのものが自分にとって思考の軸となっています。


お互いに出会ってから、もの作りに対する進化や変化みたいなものをお互いに感じているのかと聞くと、答えは揃ってノー。

 

吉本:おそらくまだ初期衝動的なところで、徐々にここからどうやって深めていこうかっていうことになるんだろうなって思います。

 

二ノ宮:私は何か、色々と試せることがあるなっていうワクワク感があります。コンセプトと実際の物の間での行き来の方法みたいなものが、わりと一つのパターンでしか交換できていないので、もっと何度も行き来したりとか、世界観の共有を本や資料以外のものでもやってみたい。これまでのやり方だと、糸を一緒に選んで天地さんからコンセプトが来たら私が自由に作って終わりなので。『Aができたから、じゃあ次はAを元にCとBについてお互い考えて持ち寄ろう』とか、そういうやり方を試してみたいっていう感じですよね、今は。

 


吉本:そういった意味では、今回のアートアップはある種、コレクションのコラボレーションよりも、もう少しお互いに踏み込んでいると思います。というのも、今までは細かい要望は特に言わず、自分の考えているコンセプトやムードだけをできるだけ丁寧に伝えてそれをニットウエアとして具現化してもらっていましたが、今回の個展ではお互いのアイデアを持ち寄って制作したものなので、コレクションとはひと味違ったものになっていると思います。

 

二人にとって『自然』は大事なテーマだが、自然以外のものをテーマにもの作りをすることはあるのだろうか。

 

吉本:ファッションというのは未来を作るものだと思っているので、突拍子もないところから持ってきて何かを作るということは、あまり考えてはいないです。人々の営みや思考、人工物も自然の一部と捉えるならば、そこから外れてもの作りをすることは無いのかなと思います。

 


二ノ宮:昔は身体が先に動いちゃって、物が最初に出来上がることがほとんどで、自分が作ったものを理解するときに、自然からヒントをもらうこともよくありました。今はそのヒントを展開して、気になっていることの成り立ちや、人のあり様みたいなものと繋がったりして、物にも反映されるから、作っているものが持つ要素は多様かもしれないですね。

 

吉本:自分にないものを入れたくてコラボレーションをしているので、そういう部分でお互いにないものを求めているのかもしれないですね。

 

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