2019.07.25 update

Vol.7 山田智和 |映像クリエイターが写真で切り取る都市の表情とノスタルジー(2/2)

07.31 Wed -08.20 Tue
伊勢丹新宿店 メンズ館2階 メンズクリエーターズ/アートアップ

作品を通して見えた自身の写真の存在意義とクリエイティブの展望

 
前述の通り、色々な都市がある中で、山田さんにとって新宿だけは別格。生まれ育った街という以外にも、惹かれるだけの特別な理由がある。

山田智和

 

「自転車に乗ってゲームを買いに行ったのも、またアルバイトをしたのも、初めて経験することは全て新宿でしたから。そういった思い出もありつつ、一番惹かれるのは何でだろうって思うと、嘘をつかなくていい街なんじゃないかなって思っていて。素のままでいい街っていうのが新宿なんじゃないかなって思っています。それもさっきの話とちょっと繋がるかもしれないですね。例えば渋谷は、トレンドに敏感な若者の街とか、中目黒はおしゃれな人が行くところ、秋葉原はアニメやゲームが好きじゃないと楽しめないとか、街ごとのイメージってあると思うんですけど、新宿はそれを限定していないっていうか自分の行きたいところに行けばいいっていう空気があるんですよね。その間口の広さというか、わかりやすくいうと、個人的には嫌いな言葉なのですが多様性があるとかカオスとか、そういう部分がどんな街よりもあると思っていて。そこにすごく惹かれるんです。僕自身、この感覚はビジュアリストとしても、大きな影響を受けていると思います」

 

© Tomokazu Yamada


もちろん、今回の展示では新宿の街を切り取った作品も見ることができる。

「2~3枚くらいですね。その中でも僕は夜の写真が好きです。光をどの角度から見るかっていう話になると思うんですけど、光が見やすいのは暗闇の中だったりするので、その視点がすごい好きっていうか、夜の方が光が綺麗に見えるんです。あとは光の揺らぎとかニュアンスとか、そういうものが自分にとってはストーリーに感じますね。物語じゃない、ナラティブじゃないっていう感じのストーリーを感じるから、それが見やすいのが割と暗いときだったりするので、今回の作品や新宿に限らず、僕が撮る街の写真は必然的に夜が多いです」

 

© Tomokazu Yamada


「光」の角度や「揺らぎ」のニュアンスは、自身の映像作品と繋がる部分がある。そこはこだわっている部分の一つでもあると、山田さんは語る。

「映像と同じで写真でもそこに注力しているというか、それが一番物語ってくれるシーンがあっていいっていうか、光や揺らぎだけでストーリーが語れる瞬間っていいなって思っているので、わりと意識的にやっている部分はありますね。あと水の揺らぎとか、そういうものに惹かれます」

 

そして今回の展示を通し見る人に感じて欲しいことは何かと尋ねると「難しいですね…」と呟きつつしばらく黙考後、少しずつ言葉を紡ぎ出す。

「今見てるその世界に、少しでもワープしてくれたら嬉しいですね。現実をちょっとハックしたりとか、少し遠いところに連れて行ってあげられたら嬉しいですね。あとはまあ、ちょっとした待ちのときに何かあ、綺麗だなって自分自身が思う感覚みたいなものを掴んでくれればいいなと思います」

 

© Tomokazu Yamada


今回の個展へ向けて作業をしているうちに、次なるクリエイティブの方向性が見えたそう。原点回帰など、想像以上に得るものが大きかったと語る。

「今回に限っていうと、自分が思っていた以上に誰かのために作ることが多いっていうか。それ自体はすごい尊い行為だと思っているし、自分のクリエーションが喜んでもらえることは、僕にとってもすごくありがたいと思っていますし、そういうことを真面目にちゃんとやれたんだということが自分でもわかりましたし。逆にいうと、もう少し写真のための写真だったり映像のための映像、自分のための作品っていうか、この仕事を始める前から純粋にずっとやってきたことを、これからはもっとちゃんとやっていきたいなと思いました。個人的にマインドセットできたということが、今回は一番良かったことです」

イベント情報

山田智和 個展「都市の記憶」

□7月31日(水)〜8月20日(火)
□メンズ館2階=メンズクリエーターズ/アートアップ
*止むを得ない理由で、展示の内容が変更になる場合がございます。予め、ご了承くださいませ。
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Text:Kei Osawa
Photo:Hideyuki Seta

お問い合わせ
メンズ館2階=メンズクリエーターズ
03-3352-1111(大代表)