古きものにロマンを感じる山下さんが説く「古さの定義」とは


柴田 好奇心が旺盛で、興味の対象が変わる山下さんですが、実は日本のことも好きですよね。

山下 古いモノが好きですね。ロンドンに行っても神保町とか銀座のカメラ屋街と同じように探しものをしていて、やっていることはどこに行っても変わりません(笑)。海外でも日本でも探すモノは変わらなくて、昔を掘り起こしている感覚がすごくありますね。

小学生の頃から古いモノが好きで、歴史や伝記を読むのが好きでした。レトロなものが好きで、小4の時にスポーツ雑誌の『スポーツ グラフィック ナンバー』の長嶋茂雄(*1974年引退)特集を読んで、「最近の野球選手はつまらない」と思ったり(笑)。古いモノにロマンを感じて、熱にうなされる感じでした。

柴田 そんな山下さんに、難しいでしょうが「古さの定義」をぜひお聞きしたいです。

山下 最新号の2019年夏号『メンズプレシャス』では、「クラシコ80’がやってきた!」と題して80年代のアルマーニやDC(デザイナーキャラクター)はもはやクラシックという内容の特集をしました。これからの時代のファッションは70年代以降の全部が共存して、ダサいというものは存在せず、時代や時間が経過したモノは何でもクラシックになってしまうんだろうと思います。
 

山下
モノ作りの面で「クラシック」を定義するなら、自分は「モノの良し悪しとか高い安いではなく、その国ならではのモノ作り」がクラシックになっていくと思っています。単純なクオリティでは語れないですが、90年代以降は世の中のグローバル化に伴い、モノ作りの拠点もグローバルに広がって、モノ作りは変わっていってしまいました。
国の風土やローカルなものが「クラシック」という立ち位置だと、モノ作りがグローバルになるに従い、自分の考えではクラシックという考え方は微妙になります。

柴田 山下さんのお話を聞いていると、ファッションは何が入口になるか分からないということがよく分かりました。
山下さんのように自由に時代を「行き来できる」のは洋服の楽しみ方として大いにありなので、メンズ館でも提案したいと思います。ありがとうございました。

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■Amver ファッションディレクター 山下英介 (@eisuke_yamashita)
1976年埼玉県生まれ。大学卒業後いくつかの出版社勤務を経て、2008年からフリーのファッションエディターとして活動しています。ファッションディレクターとして創刊時から参画している「MEN’S Precious(小学館)/ https://precious.jp/list/mensprecious/」を中心に、カタログの編集、原稿の執筆が主な業務。住まいは築50年のマンション、出没地域は神保町や浅草、谷根千。古いものが大好きで、ファッションにおいてもビスポークテーラリング、トラッド、モード、アメリカンカジュアル……。背景にクラシックな文化を感じさせるものなら、なんにでも飛びついてしまうのが悪いくせ。趣味の街歩きをさらに充実させるべく、近年は『ライカM』を入手、旅先での写真撮影に夢中。まだ世界に残された、知られざる名品やファッション文化を伝えるのが夢。

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Text:ISETAN MEN'S net
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