gon!の場合──着物の記憶をとどめるものづくり

仙台に親戚が多いわたしにとって、震災はけして他人事ではありませんでした。だけどできることはほんとうにわずかなもの。ずっと無力感にとらわれていました。

東京の大森で「DOROTHY VACANCE(ドロシーヴァカンス)」というお店を切り盛りしています。オーダーメイドの服やアクセサリーを店に並べるするかたわら手芸教室の運営も。手づくりの魅力をひとりでも多くの人に知ってもらいたかった。

大学(杉野服飾大学)在学中からリメイクやオーダーメイド、スタイリスト、現代アートギャラリーの仕事をしていました。働きたいと思える会社を見いだすことができず、就職はしませんでした。

社長からのお誘いは、素直にうれしかった。ようやくわたしにできることがみつかったんですから。



着物の仕入れは基本、社長ですが、事前に行うディレクションと採用するか否かを決めるのはわたしの仕事。ものは良くてもアロハに使え、かつ時代感をとらえている柄となるとひじょうに限られてきます。50枚あって1枚あるかどうか。柄は良くても傷んでいたり、ほころんでいたりでじっさいのところはもっと少ない。

大切にしているのは、着物の記憶をとどめること。着物の柄は当然ですが、着物を前提につくられています。その柄を洋服に置き換えるのはなかなかに骨の折れる作業です。反物の幅が30センチしかないという制約もあって、1枚の着物からとれるアロハは1枚。端切れはノートや巾着、針刺しなどに生まれ変わらせています。


ボタンはオリジンに敬意を払って、バンブーボタン。残念ながら日本ではもうつくられていないので海外から仕入れています。

折り伏せ縫いも見どころのひとつ。丈夫で肌触りも柔らかい始末なんですが、シルクでこれができる工場は日本でも限られているんですよ。

お涙頂戴にはしたくなかった。だから、ものづくりにはとことんこだわっています。

それもこれも社長の櫻井さんがいてこそです。こうみえてやり手なんですよ(笑)。サムライアロハはかれの事業のひとつにすぎません。たとえば、ごちそう便事業。風評被害にあった食品メーカーとともに冷凍食品のおかずを配達販売する事業です。慧眼だったのは牛乳販売店と提携したところ。わざわざ牛乳を配達してもらうような家庭はそれなりに裕福で見識を備えているに違いないという判断で、その読みは見事に当たりました。さち未来事業の手並みもあざやか。さち未来、というお世辞にも美味しいとはいえないお米があるんですが(笑)、社長はカロリーが低いところに目をつけて糖尿病患者の方などに向けてアピール、これまた大当たりしたんです。


そうそう、空き家鑑定事業のお話もしないと。この事業は解体前に家財を買い取るサービスで、少しでも解体費用の足しになれば、というところからはじまっています。古い家には古物商なら素通りできないお宝が眠っているそうです(笑)。サムライアロハの調達先としても、欠かせない存在。

長々と社長のビジネスセンスについて語ってしまいましたが、社長は才覚もさることながら、とにかく人柄が素晴らしい。ついていこうと思わせる方です。

社長はいま、人生でもっとも忙しい毎日をおくっています。仕事に子育てが加わったからです。1月28日に誕生したその子の名は陽太、と書いて、はるたくん。太陽のようにみなを照らしてほしい、という願いを込めているそうです。



Samurai ALOHA
<サムライアロハ>は、「和魂再生洋才」をコンセプトに、宮城県・仙台市を拠点に東北復興の希望と和のこころの再生と革新を担うブランド。古くから、日本、ハワイ、そして東北で育まれてきた文化とまごころを鮮やかなシャツとともに発信しています。Web:https://www.samurai-aloha.com/Instagram:@samurai_aloha(https://www.instagram.com/samurai_aloha/)



 <サムライアロハ>ポップアップショップ
□7月3日(水)~30日(火)
□メンズ館8階=イセタンメンズ レジデンス


Photo:Tatsuya Ozawa
Text:Kei Takegawa

*価格はすべて、税込みです。

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