20代は、自分の子どもの成長を見る時間もなかった


山下 東京に来て探せば何かが必ずあるし、洋服屋のスタッフから情報も聞きたいし、そういうことも全部ひっくるめて東京に憧れていました。服飾専門学校を出てスタイリストのアシスタントになりますが、時間が経つにつれて、洋服のコーディネートを作るより、アメリカメイドの単品の魅力に惹かれるようになり、アシスタントを辞めて、プロペラへ面接に行って、アルバイトとして入社。
それからいろいろ紆余曲折あり20歳から30歳まで、とにかく忙しかった。

そんなある日、何も予定がない日が一日あったので、特許庁のHPで「モヒート」を検索したら、ファッションブランドの立ち上げに必要な商標が誰も取得していなかったんです。
それで自分のブランド<モヒート>をスタートさせました。

柴田 (爆笑)え!?ほぼ始まりは「ノリ」じゃないですか(笑)
まぁ、それをインスピレーションと解釈するにしても、何故ゆえにヘミングウェイにこだわったのですか?


山下 男服の原点に「ユニフォーム」があると言いましたが、服を知れば知るほど2冊の『ポパイ』に行き着くんですよ。
アメリカンベーシックはもともと派生が得意なんですが、元ネタがここにある。そこで<モヒート>をスタートさせるときに、アーネスト・ヘミングウェイの世界観に注目しました。

ヘミングウェイは知的で、旅行と釣りが好きで、酒も飲むし、結婚は4回、ノーベル文学賞を取って、スポーツ万能。男の服のアイコンにしやすかった。
また、ヘミングウェイはアメリカ人ですが、第一次世界大戦後にパリに渡り、フランスである程度人格が作られたので、パリの文化やモードを<モヒート>の服の中に取り入れるようにしています。

柴田 なるほど・・・。ある意味アイコンを立てることで、変に時代考証にこだわったスタイルではない、解釈の余白を作ったのですね。
う~~~ん、さすがっす!やはり聞けば聞くほど奥深いです。