「誰もやらないなら、俺がやってみよう!」と思った


それで、「真っ当な仕事をしたい」という妙な正義感(笑)がふつふつと湧いてきて、洋服ブラシの問題点を考えていた時に出会ったのが筆屋です。毛筆に使う筆の毛は、ふわふわと柔らかいのに、墨汁を付けるとコシがしっかりあって、書いてもクセがつかず、アタリが柔らかい。それを知って、「デリケートな生地のホコリやゴミをかき出すのに向いている」と思ったんです。

そんな時に出合ったのが馬毛の「尾脇毛」です。馬毛の本毛は太くて硬いのでボディブラシ向きですが、「尾脇毛」は毛皮でいう羽毛です。お客さんに説明するときには、よく「フェザーとダウンの違い」に例えます。いわゆるダウンの部分を取り出したのが尾脇毛で、本毛との価格は20倍ぐらい違う。


生地に負担をかけることなくしっかり払い出して、アタリが柔らかく、コシの反発力がしっかりあるのが「尾脇毛」の特徴ですが、普通のブラシ職人にはそんな高価な毛を使って洋服ブラシにしようという発想がない。それで、「誰もやらないなら、俺がやってみよう」と思ったわけです。作ってみたら、一番安いのが当時で43,000円でした。

道具というのはね、その時代の事情にマッチしなければなりません。古いまま残るのでは道具として意味がない。洋服ブラシには尾脇毛が一番良いと思っています。


洋服ブラシ左から、ウール用 46,440円、ウール・カシミヤ用 54,000円、ウール・カシミヤ用 108,000円、シルク・カシミヤ対応 129,600円、ビキューナ対応 162,000円
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売るのが一番苦手でした…(笑)


それから、尾脇毛のブラシはできたけど、どう売っていいかわからずにパソコンを買ったのが2000年頃で、知り合いがホームページを作ってくれました。でも注文がこなかった(笑)。そんな時にイタリアの有名ブランドを扱っていた日本の代理店から、「ネットで見つけて、商品を見せてほしい」と連絡があって、とても気に入ってくれて取引になった。その次に新聞社が取材に来て、記事が出たら反響があった。
こういうブラシを欲しがっている人がいるのはわかっていたので、うれしかったですよ。

それで、「百貨店で実演してほしい」というオーダーがあって、実演したら売れました。それを聞きつけてか、静岡伊勢丹の婦人服バイヤーからも電話があって、静岡まで行きました。そのバイヤーが翌年、新宿に戻ったので、本館で実演を始めたら、当時の店長が通りがかって、「これはメンズ館の方がいい」と推奨してくれたんです。こうした縁あって、今ではメンズ館で通年でご紹介いただいています。