2017.11.27 update

スタイリスト青柳光則が語る、秋冬の主役「トレンチコート」のお洒落道(1/2)

ウェルドレッサーを目指すためのルールブック『男のお洒落道 虎の巻The Wearing Bible for Gentlemen』(万来舎)を今年6月に上梓したスタイリストでファッションディレクターの青柳光則氏が、先ごろ開催された「トウキョウ メンズ フェス 2017@イセタン」内の「ザ・トレンチショップ」にてトークショーを開催。<アクアスキュータム>のトレンチコート「グレナディア」より更に着丈の長い別注トレンチ“青柳モデル”を着て登場した。


青柳光則
あおやぎみつのり●1960年 東京生まれ。専門学校卒業後、スタイル社『男子専科』編集部に勤務。1983年 フリーに。スタイリスト、ファッションエディターとして、ファッション誌、広告、芸能&アーティストの衣裳制作などを手掛ける、近年は、着こなしの“師範代”をはじめ、メンズファッションの講演などにも携わる。

“ボギー風トレンチ”とはまったく異なるトレンチの好み


トレンチコートというと「中折れ帽にトレンチ」というボギー風トレンチがすぐに連想されますが、あれは<アクアスキュータム>の「キングスゲート」のような、シワっぽくたっぷりした量感で着るのが格好良いコートです。

でも僕は“キレイめ”なトレンチが好きで、それは『男のお洒落道 虎の巻』にも書きましたが、僕が初めてトレンチコートを良いなと思ったのは、映画『青春の蹉跌』とテレビ番組『傷だらけの天使』の萩原健一さんの着こなしでした。


そのときのショーケンの着こなしを見て、中学3年だった僕は、「これはアイビーを着ている場合ではない!」と、スリムジーンズを脱いで、太いパンツを穿く“コンチ”へと急速にワードローブ革命が始まって、トレンチコートを買ったわけです。

それで高校に進学して出会ったのが銀座の和菓子屋の息子で、彼は普段から<ミスターVAN>のスーツに<ビギ>の靴、<ビギメンズ>のトレンチコートを着ていて、さらにセンスも良い。僕のトレンチはラグランスリーブでしたが、彼のはセットインスリーブで、肩パッド入りで、アームも細くて、「自分が着ているのはミルスペック(軍用規格)だった!」と気づいて、「負けたな」と思ったわけです。


“青柳モデル”は、和菓子屋の息子へのリベンジ!


<アクアスキュータム>のトレンチコートは昔から大好きで、今日着ているのは<アクアスキュータム>に無理を言って作ってもらったものです。セットインスリーブで、アームが細くて、着丈は膝下で長いというトレンチをどうしても着たくて、いわば“和菓子屋の息子へのリベンジ”です。

僕は「コートをアウターとして着よう」という着こなしを提唱していて、Tシャツやニットの上に着てコートだけでスタイリングが完成するのが大の好みです。特にトレンチコートはベルトを締めても開けても表情が変わり、無造作に着てもおしゃれに見えるという万能選手。

ビジネスマンにとっては冬場の制服のようなトレンチコートですが、たとえば<アクアスキュータム>のプリンスゲートは細めのシルエットで、キングスゲートはAラインで蹴回し(けまわし)の量感があるという特徴を知れば、着こなしでいろんな楽しみ方ができるのも魅力です。

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