今に遺る皇室献上品は眼鏡という名の美術工芸品


999シリーズはシーズン毎にバリエーションを増やしてきた。かつての献上品の高い完成度をさらに進化させる作業は並大抵ではない。その努力が評価され、2013年の「GMS limited 2013」は、世界最大規模の眼鏡国際展示会「SILMO(シルモ)展」で審査員特別賞を受賞している。今年はさらに当時の技術の精度を高め「GMS 999C」として、3月29日から開催される伊勢丹新宿店の「JAPAN SENSES」で受注を受け付ける。


昭和8年に昭和天皇の福井行幸の際に献上されたものと同型の眼鏡。
献上本品に不都合が生じた際の予備品であったといい、長年<増永眼鏡>本社に保管されていた

「当時の技術は記録がほとんど残されていません。今回のGMS 999Cというモデルも、現存する献上品から工程を想像するしか無いところがいくつもありました。それを福井県でも最高位の職人が現品を見比べながら、ひとつづつ手作業で作り上げています。正円のフレームは20K金製。リムは極細の金芯に0.25mmのセルロイドを巻きつける「巻きセル」と呼ばれる当時最先端の加工技術が採用されています。耳に掛かるつるの曲線部分は「縄手」と呼ばれる非常に手の込んだ技法です。一見、一本の針金のようですが、細芯に3本の金線を繰り返し巻き、一本の髪の毛すら挟まることのないよう叩いて目を詰めています。こうすることで耳に巻き付くようにしなやかな弾力性が備わります。復刻するにあたり、いくつかの変更点もあります。当時使われていたのは20K金でしたが、現代の主流となっている18K金を採用しています。献上品のテンプルは、平行に伸びるストレートタイプでしたが、幅広いお客さまにお使いいただけるよう、より頭部にフィットするよう弧を描く形状に変更したものをご用意します」。


18金とβチタンの接合技術の開発に始まり、縄手や巻きセルなど福井が誇る技術の粋が結集し復刻した

眼鏡 256,500円から
*お渡し:約4~6カ月後

現代に継承される職人技術の粋を集めた作品は、完成までは約3ヶ月ほどを要する。価格は40万円を超えるが、その価格に見合った価値を備えている。それは80年前、献上された当初と変わらぬ美しさで今に遺る実物を目にすれば自ずと解するに違いない。“半医半商”と言われる眼鏡だが、この品は“半医”“半芸術”であることを。

当社は、良いめがねをつくるものとする。

出来れば利益を得たいが、やむを得なければ損をしてもよい。

しかし常に良いめがねをつくることを念願する。

これが増永五左衛門が遺した、増永眼鏡の社是である。

Text:Ikeda Yasuyuki
Photo:Suzuki Shimpei

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