【2025年秋冬】伊勢丹メンズ館バイヤーが解説、テーラードクロージングの最前線をキャッチ!2025FWトレンドレポート
真夏の暑さが続くなか、ファッションの世界ではすでに次のシーズンへと視線が向けられています。伊勢丹新宿メンズ館でも、2025年秋冬に向けた準備が着々と進行中。そんな最新情報を一足早くお届けすべく、テーラードクロージングのカテゴリーをディレクションするバイヤー、稲葉智大と溝田将法の両名に取材を実施。今季注目すべきテーマやアイテムについて、じっくりと話を伺いました。
伊勢丹新宿店 メンズ館5階 テーラードクロージング2
バイヤー 稲葉 智大
1.“王道ど真ん中”なテーラードスーツを実現「イセタンメンズ」
国内外の幅広いテーラードウェアを取り扱うメンズテーラードクロージング2バイヤーの稲葉。常に「時代の空気感」と「お客様のニーズ」の両方を見据えた提案を行うなかで、今季とくに注力しているのが、伊勢丹メンズのオリジナルブランド<イセタンメンズ>のスーツです。
「目指しているのは、“テーラードスーツのど真ん中”。世代やスタイルを問わず、多くの方にフィットする“普遍的なスタンダード”です。たとえば、肩まわりは構築的にきちんと見せつつも、着心地は軽やかであること。その両立を実現してくれるのが、岩手の『東和プラム』という工房。北イタリアのジャケットに見られるクリーンな見え方を叶える袖付けや、薄い芯地で立体感を出す技術は、日本屈指のレベルだと思っています。」
さらに今季注目すべきは、尾州の名門『葛利毛織』とともに開発したオリジナル生地「ジェントリークロス」。
「最近は無地調のスーツが主流ですが、あまりにプレーンすぎると味気ない。そこで、無地をベースにしつつも表情を感じられるよう、私の好きな英国ツイードをヒントに、白場がほんのり浮かぶようなヘリンボーン柄に仕上げました。さらに、“ジェントリー加工”という特殊な工程を施すことで、ウール100%とは思えないほどカシミヤライクな柔らかさを実現しています。」
2.オンもオフもこれ一着。現代のリアルに応える“機能系セットアップ”
「また近年、特に需要が高まっているのが“オンオフ兼用のセットアップスーツ”です。リモートワークやワークライフバランスの変化に伴って、仕事とプライベートの境界が曖昧になってきた今、どちらのシーンにもフィットするオンオフ兼用のセットアップは、これからのビジネススタイルのスタンダードになると感じています。なかでも重要なのが、“ウールライクな見た目” “通年で着用できる” “機能性がある”という3つの要素。これらを兼ね備えたアイテムこそが、現代のニーズにしっかり応えるセットアップだと思います。」
そう語る稲葉が紹介してくれたのが、<タリアトーレ>と生地メーカー〈レダ〉、そして伊勢丹の三社がタッグを組んで開発した別注商品。素材には、高級感のある表情と、伸縮性を持ち、取り扱いに優れた高機能ウール「レダ アクティブ」を採用しています。
「“本当に必要とされるスーツとは?”という視点からこの企画が始まりました。『レダ アクティブ』は高価格帯の素材ですが、3社の連携により価格をかなり抑えることができています。デザイン性・機能性・コストパフォーマンスの三拍子が揃った、“いま最もリアルなスタンダードスーツ”を実現できたと思っています。最近ではネイビーやブラックだけでなく、ベージュなど洒落感のあるカラーも人気ですね。」
クラシックな佇まいに、現代的な機能と着回し力をプラスしたオンオフ兼用セットアップ。次なるスタンダードとなるアイテムとして、見逃せない存在です。
3.本格派も唸る、クラシックパンツの真骨頂
そして稲葉がもうひとつ強調するのが、「本格志向のクラシックアイテム」への注力です。
「5階のテーラードクロージングのフロアの強みは、やはりアルチザンによる本格的なモノづくりを掲げるブランドが揃っていることです。今季は久しぶりに<アンダーソン&シェパード>のパンツを買い付けましたが、これも注目していただきたいアイテム。スタイルNo.2と呼ばれる、2インプリーツのテーパードフィットで、腰まわりにゆとりを持たせつつ、裾に向かってすっきりと収まるシルエットは、まるでクラシックなビスポークパンツのよう。既成服でありながら、極めて上質な穿き心地が味わえます。」
さらに、ヒップの片ポケット仕様や、2つ並んだウエストボタンなど、細部のディテールにもクラシックな趣きが宿っているのもポイント。
現代のリアルニーズに応える機能派スーツから、嗜好性の高いクラシックアイテムまで。両者を柔軟に提案できるのが、稲葉のバイイングの持ち味です。
伊勢丹新宿店 メンズ館5階 メンズテーラードクロージング1
バイヤー 溝田 将法
1.着こなしを格上げする“素材アップグレード”の提案
稲葉と同様に、メンズ館5階 メンズテーラードクロージングのフロアを担当するのがバイヤーの溝田。メイド トゥ メジャーによるオーダーウェアをはじめ、<イセタンメンズ>のシャツやネクタイ、小物類まで幅広くディレクションする溝田が今季のキーワードとして掲げるのが、“素材のアップグレード”です。
「5階にいらっしゃるお客さまは、情報感度が高く、モノ選びに対する審美眼を持った方ばかり。そうした方々にご満足いただくためには、“上質な素材”という視点での提案が最も効果的なんです。その象徴と言えるのが、<チフォネリ>のビスポークコートです。」
これまでメイド トゥ メジャーによるパターンオーダーのみだった<チフォネリ>のコートが、今シーズンからは“型紙から仕立てる”本格的なビスポークに対応。フランスを代表する老舗メゾンが生み出す、まさに本物志向のアイテム。
「なかでもおすすめなのが、こちらのカシミヤの生地。目付480gという肉厚な風合いで、しっかりとした重厚感をもちながらも、カシミヤならではの柔らかさも兼ね備えています。クラシックな趣をまとった、通な方にも響く一着に仕立てていただけると思います。」
2.極上シルクで仕立てる、<イセタンメンズ>のネイビータイ
そして、プライベートブランド<イセタンメンズ>のアイテムにも、“素材のアップグレード”はしっかりと反映されています。
「昨年ご好評いただいた“ネイビーコレクション”のネクタイも、今季はシルク素材をアップグレードしています。使用しているのは、トップメゾンのストールなどでも使われているBrazilian silk yarnのシルク。これにより、艶感がさらに際立ち、手に取ったときの“もちっ”とした質感も増しています。シンプルなネイビータイだからこそ、素材の上質さにこだわることで、違いを感じていただける一本に仕上げています。」
3.カシミア×編み地。冬の名脇役が今の気分にフィット
そして真冬のシーズンに活躍間違いなしのアイテムとして、溝田バイヤーが自信をもって紹介するのが、<イセタンメンズ>と<ピセア>の共同企画によるマフラー。昨年も好評だったモデルを、今季は仕様を一新し、さらに進化させています。
「従来は織り物だったのに対して、今季は編み物に変更しています。ニット地にすることで、スーツスタイルだけでなく、ビジカジや休日のカジュアルスタイルにも合わせやすくなりました。いまのライフスタイルの中で、“カチッとしすぎない巻きもの”が求められていると感じています。」
さらに注目すべきは、日本人に合わせたサイズ設計。一般的なマフラーが180cm前後なのに対し、こちらは173cmに設定されており、巻いたときに過不足のない絶妙なバランスが取れるように調整されています。
カラーはベーシックを中心に全12色展開。素材のアップグレードというテーマを軸に、通な服好きも納得の一本から、実用性重視のスタンダードな一本まで、多彩なラインナップが揃います。
本格志向の方も、日常使いを重視する方もきっと満足いただける幅広いニーズに応えるラインナップを取り揃えた、メンズ館5階 メンズテーラードクロージング。
そんなフロアを牽引する稲葉・溝田、両バイヤーの目利きによる今季のセレクションに、ぜひご注目ください。
*価格はすべて、税込です。
*一部展開予定日に変更があり、テキストを修正いたしました。2025年9月16日
*本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。商品の情報は予告なく改定、変更させていただく場合がございます。
Photo:Tatsuya Ozawa (Studio Mug)
Text:Shinji Hashimoto
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伊勢丹新宿店 メンズ館5階 メンズテーラードクロージング
