2020.11.18 update

【インタビュー&モデル解説】〈foot the coacher/フット ザ コーチャー〉デザイナー竹ヶ原の矜持を覗く


〈foot the coacher/フット ザ コーチャー〉デザイナー・竹ヶ原敏之介にインタビューするためアトリエを訪れた。4年前に会った場所から移転したのは、靴作りに没頭する環境を整えるためだったという。
  

  1.  新拠点。靴作りに没頭できる理想郷を求めて
  2. アップデートを重ねてきた"定番6型"のシューズを解説
    1. 1.HARDER/ハーダー
    2. 2.S.S. SHOES/エスエス シューズ
    3. 3.GLOXI ZIP SHOES/グロクシー ジップ シューズ
    4. 4.RIDERS BOOTS/ライダース ブーツ
    5. 5.MINIMAL SIDEGORE/ミニマル サイドゴア
    6. 6.SINGLE EYELET/シングルアイレット
  3. 常に新境地へ挑む竹ヶ原の「今」が込められた渾身の"新作4型"
    1. 1.SINGLE STRAP SHOES/シングル ストラップ シューズ
    2. 2.T-STRAP SHOES/ティーストラップ シューズ
    3. 3.MIDDLE-CUT SIDE-GORE/ミドル カット サイドゴア
    4. 4.MIDDLE-CUT SEAMLESS BOOTS/ミドルカット シームレス ブーツ
 

 新拠点。靴作りに没頭できる理想郷を求めて

竹ヶ原のアトリエは、以前とは全く違う街にあった。もともと靴工場だった場所をリノベーションしたビルの4階ワンフロア。
  


ここには竹ヶ原の好きなもの、彼をイメージさせるものが詰まっている。鏡面加工されたゼロハリバートンは、以前、市販のステンレス製魔法瓶を鏡面加工して持ち歩いているという話を聞いていたので納得がいった。


アンティークの什器の中にはファーバーカステル、ラミー、カヴェコなど、スタイリッシュな筆記具が並んでいる。使い慣れた文房具が廃盤になると困るからと、一生分買い溜めてあるのだそうだ。


ヨーロッパの一流ブランドに混じって、伊東屋オリジナル「ヘルベチカ ボールペン」もある。
  
若い頃は、70年代ロンドンのパンクファッションを生んだヴィヴィアン・ウェストウッドとマルコム・マクラーレンの〈worlds end/ワールズ エンド〉、80年代イーストロンドンのカルチャーシーンを牽引した〈The House of Beauty & Culture/ザ ハウス オブ ビューティ アンド カルチャー〉に傾倒していたという。90年代に渡英し、ロンドンのファッション&カルチャーに直に触れている竹ヶ原に、多分に影響を与えたエレメンツである。
 

独学で生み出した靴をもって彗星のごとく現れた。以後、今日まで第一線を走り続けてこれたのは、全身全霊で靴に身を捧げてきたからにほかならない。

   

「靴のことしか考えてこなかったし、考えられなかったんです。朝から晩まで、あの木型は甲を1ミリ削ったほうがいいかなとか、ステッチ幅をどうしようとか、そんなことばかり。時間があったら靴のことを考えていたいのです。」


この後、〈フット ザ コーチャー〉の定番・新作靴について竹ヶ原自身に語ってもらう時間を取った。 彼はコレクションをひとつひとつ説明しながら「…思い入れが深いです」「…なので、かわいくてしょうがないんです」と、まるで我が子を愛でるように語る。「だから展示会のときには、もう見たくないんですよ(笑)」と嘯くほど、一足に深い愛情を注いでいることがひしと伝わる。「履けば分かる靴」とは、斯くも愛情深く創り出されていた。

 

アップデートを重ねてきた"定番6型"のシューズを解説

〈フット ザ コーチャー〉の定番コレクションとして継続的に展開しているモデルのなかから、竹ヶ原がとくに思い入れのあるモデルをセレクト。それぞれ竹ヶ原本人の、思い入れも込めたコメントで解説していただいた。

 

1.HARDER/ハーダー

〈フット ザ コーチャー〉HARDER 63,800円 商品を見る
□伊勢丹新宿店 メンズ館2階 メンズクリエーターズ/三越伊勢丹オンラインストア

シンプルな外羽根ラウンドトウのラバーソールは、90年代イーストロンドンで隆興したユースカルチャーを彷彿とさせるモデル。


「20年以上継続している、個人的にとても愛着のあるモデルです。ほぼ完成されたフォルムなのですが、じつは一回だけ木型を修正しています。ディテールもアップデートしていて、サイドシームは初期よりも後方へシフトしているので、初期の頃とは少しだけ見え方が違っています。」


2.S.S. SHOES/エスエス シューズ

〈フット ザ コーチャー〉S.S. SHOES 48,400円 商品を見る
□伊勢丹新宿店 メンズ館2階 メンズクリエーターズ/三越伊勢丹オンラインストア

アメ色の透明感ある「ルフトソール」は、フットザコーチャーのオリジナル。


「80年代の英国をイメージさせるシューズを作りたくて、完全日本製でソールから作り上げました。ベーシックなラウンドトウは履きやすさはもちろん、スタイルを選ばず合わせられるオールオケージョンなモデルです。」


3.GLOXI ZIP SHOES/グロクシー ジップ シューズ

〈フット ザ コーチャー〉GLOXI ZIP SHOES 68,200円  商品を見る
□伊勢丹新宿店 メンズ館2階 メンズクリエーターズ/三越伊勢丹オンラインストア

アイレットは残したままシューレースをなくしたフェイクレースアップ。「ファスナーは伊・ラッカーニ社のもの。一点ずつ職人が手仕事で鏡面磨きが施されています。

アッパーはサイドとヒールカウンターのシボ革を変えているように、4種類のレザーを使っています。アウトソールには返りのいいイタリアンビブラムを、ミッドソールにはオリジナルのEVAソールを使っているなど、デザインだけでなく素材作りからこだわっているんです。」
 

4.RIDERS BOOTS/ライダース ブーツ

〈フット ザ コーチャー〉RIDERS BOOTS 72,600円 商品を見る
□伊勢丹新宿店 メンズ館2階 メンズクリエーターズ/三越伊勢丹オンラインストア

ジップとスナップボタンの組み合わせは、ライダースジャケットがモチーフ。


「ライダースジャケットが好きなので、ライダースモチーフを取り入れたブーツは、これまで何足か作っています。このラバーソールはオリジナルで、耐久性を高めながらアセテートと天然ゴムを使って高いクッション性を実現しています。靴について機能性を謳うことはあまりないのですが、分かってくれた人はリピートしてくれると思いますし、履けばきっとわかってもらえると信じています。」
 

   

5.MINIMAL SIDEGORE/ミニマル サイドゴア

〈フット ザ コーチャー〉MINIMAL SIDEGORE 66,000円 商品を見る
□伊勢丹新宿店 メンズ館2階 メンズクリエーターズ/三越伊勢丹オンラインストア

 ありそうで無かったミッドカットのサイドゴア。


「ミニマルな印象でスリムなパンツに似合うミッドカットのサイドゴアブーツがなぜ無いのだろうか、不思議に思ってコレクションに加えたのですが、製作過程でその難しさに直面しました。履き口の筒がないとフィットしないんです。サイドエラスティックの取り付け方にもこだわったので、何度もサンプルを重ねて、ようやく思い通りに完成したときは感動しました。」
 

6.SINGLE EYELET/シングルアイレット

〈フット ザ コーチャー〉SINGLE EYELET 70,400円 商品を見る
□伊勢丹新宿店 メンズ館2階 メンズクリエーターズ/三越伊勢丹オンラインストア

内羽根のアイレットがひとつという、斬新なプレーントウ。「手持ちの内羽根靴を眺めていて、あるとき、このアイレットはひとつでいいんじゃないかな?と考えたことから、イメージしてみました。ミニマルでクラシックなデザインとして気に入っているのですが、負荷が掛かるので、シューレースが普通のものでは結びが解けやすいことがわかりました。そのため濃いめに蝋を引いたオリジナルのシューレースを作りました。」


常に新境地へ挑む竹ヶ原の「今」が込められた渾身の"新作4型"

今シーズンの新作のなかから、4品番について、竹ヶ原がそのデザインのリソースを解説する。「無いから作りたい」に始まり、「やってみてわかったこと」が多々あるというそれぞれのモデルの背景に、デザイナーの「今」が映し出されている。


1.SINGLE STRAP SHOES/シングル ストラップ シューズ

〈フット ザ コーチャー〉SINGLE STRAP SHOES 46,200円 商品を見る
□伊勢丹新宿店 メンズ館2階 メンズクリエーターズ/三越伊勢丹オンラインストア

シングルモンクのようでいて、ストラップが履き口の周りを通る斬新なデザイン。


「軽く履けるドレスシューズにしたくて、あえてアッパーはエッジをカットオフにして一枚仕立てにしています。シュータンのエッジは角を丸く削っているのですが、半径1ミリ以下の曲線でカットするために金型から作っています。ベルトを通す穴も切り込みではなくオーバル型。職人さんに苦労をかけた分、納得行く出来栄えです。」


2.T-STRAP SHOES/ティーストラップ シューズ

〈フット ザ コーチャー〉T-STRAP SHOES 46,200円 商品を見る
□伊勢丹新宿店 メンズ館2階 メンズクリエーターズ/三越伊勢丹オンラインストア

上掲のストラップシューズの変形モデルは、サイドが大きくカットされているドレス靴とサンダルのハイブリッド。「秋冬にソックスの色柄を見せる履き方ができるドレスシューズです。ヒールカップのホールド感を高めるために、完全な1枚にはせず、半分だけ月型芯を入れています。ライニングの構造も、軽量なEVAアウトソールも、ともにオリジナルです。」


3.MIDDLE-CUT SIDE-GORE/ミドル カット サイドゴア

〈フット ザ コーチャー〉MIDDLE-CUT SIDE-GORE 74,800円 商品を見る
□伊勢丹新宿店 メンズ館2階 メンズクリエーターズ/三越伊勢丹オンラインストア

しなやかで丈夫なキップを採用した、クロップド丈のドレスシューズ。「ミドルカットのドレスシューズを作ってみたのですが、履き口が中途半端な丈の場合、足首をホールドするのが難しく、木型を何度も修正しました。ソールは英国のリッジウェイソールを使うことで、英国風の表情を作り出しています。ドレス靴の顔つきに、グリップのよいソールの組み合わせというのも、デザインと機能の良好なバランスですね。」


4.MIDDLE-CUT SEAMLESS BOOTS/ミドルカット シームレス ブーツ

〈フット ザ コーチャー〉MIDDLE-CUT SEAMLESS BOOTS 74,800円 商品を見る
□伊勢丹新宿店 メンズ館2階 メンズクリエーターズ/三越伊勢丹オンラインストア

羽根のエッジに縫い目のない、シームレスなチャッカブーツ。「縫い目を極力無くすことでドレッシーな印象が増します。そこでチャッカブーツを、よりドレスに仕上げました。すっきりとシャープなラインが、足元をきりりと引き締めてくれる一足となりました。アウトソールは英国靴らしいリッジウェイ。革にゴート(ヤギ革)を使ったのは、やわらかさが必要だったので。フィッティングは吸い付くようにやわらかいんです。」


関連記事:2016年インタビュー
竹ヶ原敏之介|靴作りに魅せられた肩書のない男

Photograph:Yuichi Tajima
Text:Yasuyuki Ikeda

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