2020.10.28 update

10年の沈黙を破り、ついに再起動を果たす〈BLK〉。デザイナー相澤陽介が明かすその全貌とは。


未曾有のパンデミックの煽りを受け、史上初めてデジタルプラットフォームでの発表となった2021年春夏シーズンのパリ・ミラノコレクション。誰もが初めての取り組みに悪戦苦闘するなか特に高い評価を得たのが、いまや日本を代表するブランドとしての地位を確立した〈WHITEMOUNTAINEERING/ホワイトマウンテニアリング〉だ。ライゾマティクス・真鍋大度とのコラボレーションに至った経緯、そして丸10年の歳月を経て完全復活を果たした、〈BLK/ビーエルケー〉の全貌とは? 注目のポップアップストア開催を前に、デザイナーである相澤陽介氏本人に話を訊いた。



3次元の洋服における、パターンメイキングの重要性。


ファッションというフィジカルなプロダクトと、デジタルなテクノロジーの融合──この命題に長年悪戦苦闘してきた我々は、図らずもCOVID-19というウイルスの登場によって、デジタルファッションの目覚ましい革新を果たそうとしている。

そのフロントラインにいるのが、〈ホワイトマウンテニアリング〉のデザイナーであり、欧州企業との協業も目立つ相澤陽介氏。すべてのショーがオンラインでの配信となったパリコレクションにおいて、テクノロジーを駆使したエンターテインメントで世界をリードするライゾマティクスの真鍋大度氏とチームアップ。これまで見たこともないようなデジタル・ファッションショーのスタイルを提示し、国内外で高い評価を得たのは記憶にあたらしい。

相澤陽介


「〈ラルディーニ〉などとのヨーロッパでの仕事を通じて、実はかなり早い段階から2021年春夏コレクションのショー開催については危機感をもっていました。またそれとは別に、〈ホワイトマウンテニアリング〉としてすでに12回パリでコレクションを発表し、そろそろ『ランウェイショーに向けたものづくり』というものをイチから見直したいと思っていた。ブランドとしても僕個人としても、もっとパーソナルで、自分自身の着たいと思うものをつくるべきだと考えていたんです。

僕自身はほとんど黒い服しか着ないですし、年齢を重ねてラペルつきのジャケットを着る機会も増えました。だから〈ホワイトマウンテニアリング〉のハイスペックラインとして誕生したブラックカラーオンリーの〈ビーエルケー〉を、Black Layer Knowledge(黒を重ねる知識)という新たなコンセプトのもと再構築し、通常のランウェイショーでは伝えられないパターンメイキングをビジュアル化して発表することに決めたんです」

話題性ばかりが先行しがちな真鍋大度氏とのコラボレートも、決して「ライゾマティクスありき」ではなかったのだとか。


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□伊勢丹新宿店メンズ館6階=メンズコンテンポラリー

Quarter Screw

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□伊勢丹新宿店メンズ館6階=メンズコンテンポラリー


「1枚の布から洋服ができあがるというパターンメイキングをアニメーションで表現したいという明確なイメージがあって、アイデアや絵コンテなどは自社といつものチームでかなり固めていたんです。2次元が3次元になるというのは、洋服づくりの醍醐味ですからね。でも断片的なアイデアをストーリーとしてつなげるというのは意外と難しく、技術的な面でどうしても越えられない壁もあった。だから同世代で日頃からリスペクトしている、大度くんに相談することにしました。

彼は普段から〈ホワイトマウンテニアリング〉の服を着てくれていて、私がライゾマティクスのユニフォームをデザインさせてもらったこともあるくらい、お互いのことを理解し合っています。いわゆるミスコニュニケーションがないんですよ。だからこそ彼らに委ねることができたし、どんなに有能でも大度くん以外の人では実現できなかったでしょうね」

製品としての魅力と並ぶ、社会貢献という大きな“価値”。



デジタル・ファッションショーでは、平面のテキスタイルから切り出されたパーツが、〈ビーエルケー〉を含む〈ホワイトマウンテニアリング〉のニューコレクション(立体的な衣服)として組み上がり、モデルが着用してウォーキングする様子をビジュアル化してみせた。しかしメインラインのコンセプトは、これからも変わることはないと相澤氏は語る。シーズンごとにテーマを掲げ、「自分のデザイナーとしての経験値とアウトドアとの出合いを模索し続ける」という。

それに対して新〈ビーエルケー〉は、「ユニークで先進的な素材を自身のクリエイティビティと融合させ、誰でも着られるユニバーサルでテクニカルなウエアをつくりたい」と語ってくれた。


「プロユースのアウトドアスペックを追求し、ブランドのイメージを壊すくらいパフフォーマンスを高めた以前の〈ビーエルケー〉とは異なり、新たな〈ビーエルケー〉はスピンオフレーベルのような存在。こだわるのは、夏でも冬でもシーズン問わず、デイリーに着られる服。毎日着たい、黒い服です。

黒い服って、シンプルに作ればいくらでも誤魔化しが効きます。それに僕は”造形物”をつくるタイプのデザイナーでもないから、1枚の布が洋服になるという過程を改めて見つめ直して、パターンメイキングとサイジングによって動きやすさや実用性を徹底的に追求しました」

これまで通り黒1色で構成されてはいるものの、Black Layer Knowledge(黒を重ねる知識)という新コンセプトでリブートされた”デイリー”な〈ビーエルケー〉がこだわるのは、一体どんな”黒”なのだろう?


「テキスタイルデザイン課出身の僕からすると、どんな黒にするかというのは、基本中の基本です。黒は黒でも、どんな黒にするのかという具体的なイメージをもつことが大切。

僕は”赤みの黒”と”青みの黒”というのがあと思っていて、”青みの黒”はいわゆる墨黒ですね。薄めていくとどんどんグレーっぽくなっていく。それに対して”赤みの黒”は、赤や黄色などが複雑に溶け合った、濃度の高い黒。このふたつの黒を組み合わせたレイヤーの面白さを表現していきたいと思っています。染料はもちろん、素材によってもまったく異なる表情になる黒を、レイヤリグで楽しんでほしいですね」

この〈ビーエルケー〉によって、相澤氏はもうひとつ新たな取り組みに挑戦している。それは、洋服をブランドとユーザー、人と人とのコミュニケーションツールにすることだ。


「〈ビーエルケー〉の製品には、共通して背中の裏地などにその製品の素材や組成、パターンデータなどの情報が記載されています。食品を買うときって、みんな生産者や生産背景の情報が気になりますよね? それと同じように、僕らとお客様のコミュニケーションツールとなりうる情報を、製品に詰め込もうと考えたんです。どのパーツがどの部位に使われているのか、パズルのように解いていく楽しさもあります」

この新たな取り組みの背景には、ファッション業界の新常識となっているサステイナビリティについての、相澤氏なりの思いが込められているという。

「ただカッコいい黒い服だと、消費されて終わってしまうかもしれません。でもその製品についての知識があれば、それは愛情として蓄積されていくのではないかと考えました。結果として長く愛用いただくことができれば、それはサステナブルな服だと言えるのではないでしょうか。

説明過多なのは好きではないのですが……(笑)、どれだけ情報を提供できるかが大事。箱やショッパー、サブボタンなど、お客様に届けたい”思い”は明確なカタチとして表れているほうが良いに決まっています。一見なんでもないようなことにこだわっていく姿勢が、これからの時代は求められると思います」


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□伊勢丹新宿店メンズ館6階=メンズコンテンポラリー


〈ビーエルケー〉のトップスには、セットアップやラグランなど既存のパターンは見られない。どれも肩を大きくとり、下に流れるようなラインで腕の動きを妨げない圧倒的な可動域と着用感を実現する独自のパターンを採用している。これなら自転車移動も、クルマの運転も、PC作業も快適そのものだろう。またパンツには、脇ハギやサイドのシームが見られない斬新なパターンのものも見られた。

「一癖も二癖もある黒い服であることによって、僕のなかでのクリエイティブなチェレンジと機能的なリアリティをイーブンにしています。スタンダードを壊して、テクニカルウエアとして昇華させるという意識が強いですね」

”黒を重ねる知識”の積み重ねは、シーズンを追うごとにどんどん深みと奥行きを増していくことだろう。そして常に同じコンセプトによってつくりあげられる製品同士の相性はこのうえなく、着る人次第のアレンジの余地も多い。モノが増えるごとにワードローブを着実に進化させながら、その精度と完成度をどんどん高めてくれる、とんでもない”スピンオフ”レーベルが登場した。その全貌は、全世界に先駆け、イセタンメンズのポップアップストアで明らかになる。

 

相澤 陽介
あいざわようすけ●〈ホワイトマウンテニアリング〉デザイナー。1977年生まれ。多摩美術大学染織科を卒業後、〈コム・デ・ギャルソン〉に入社。2006年に〈ホワイトマウンテニアリング〉をスタート。これまでに、〈モンクレール〉や〈バートン〉、〈アディダス オリジナルス〉など、さまざまなブランドとのコラボレーションを展開する。現在では、〈ハンティングワールド〉、 北海道コンサドーレ札幌などのクリエイティブディレクターを務めるほか、 多摩美術大学の客員教授としても活動。

 

イベント情報
〈ビーエルケー〉プロモーション
  • 開催期間:2020年10月28日(水)~11月10日(火)
  • 開催場所:伊勢丹新宿店メンズ館6階=メンズコンテンポラリー


Photo:Yutaro Tagawa
Text:Junya Hasegawa

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