素材の魅力を、改めて感じてもらうために


──伊勢丹メンズ館にかかわらず、優れた作り手が生み出すものに立ち返ろうという動きは、ファッション業界の中でも進んでいます。


正直に申し上げますと、商売的には百貨店さんにモノを置いてもらうのはハードルが高いんです。きちっと買い取ってもらって、初めて成り立つ商売ですから。職人さんの生活も背負ってますから、軽はずみなことはできません。今回のように、お声がけいただくことは貴重ですし、また光栄なことだと思っています。

──バッグをアートとして表現することは、いつ頃から始められたのですか。

もともとアートが好きで、プライベートではオブジェを作ったり、世界中を旅しながら写真を撮ったりと、そういった活動を続けていました。そんな中、もう30年以上も前のことになりますが、イタリア・リモンタ社(名だたるラグジュアリーブランドをクライアントに持つ、世界有数の生地メーカー)の方と話をする機会があったんです。プライベートではアートをやっている、仕事ではバッグを作っている、そういう日本人が珍しかったのかもしれませんが、とても気に入っていただき、そこからリモンタ社とのお付き合いが始まりました。世界的に有名な会社ですが、僕や「ボーデッサン」のことを非常に気に入っていただき、少ないロットでも生地を分けてくれるようになりました。


リモンタ社は、世界中でもおそらくここにしかないであろう、エプソンの巨大な生地専用のプリンターを持っています。それを使って、「生嶋の写真をプリントさせてくれないか」と持ちかけられたのが始まりです。イタリアやフランスの展示会に出品したこともありましたね。一緒に生地を作り続けて、かれこれ20年くらい経ちます。

──今回の取り組みでも生嶋さんの写真がプリントされた生地を使っています。


プリントしているのは、ライフワークでもある世界各地で撮影した壁の写真です。名も無い街の人々によって描かれたイラストや落書き、工事用に書かれたであろう専門用語や数字などを切り取っています。雨に降られ、風に吹かれた壁。これらは作為が入ってない、偶然の芸術なんです。それがリモンタ社のナイロンに載り、バッグとなることで、一つの、持ち運べるアートのようなものに仕上がったのではないかと思っています。

──最後に、今回の取り組みに対する想いを聞かせていただければと思います。

自分の中にある”アート魂”が少しでも伝われば、またこれがきっかけでリモンタ社という世界最高の技術を持つ素材屋の存在を知ってもらえればなと思っています。店内の装飾は東京芸術大学講師の澤村氏お願いしました。「五感と時間」をテーマにした装飾の中でバッグを手に取れば、きっと何か感じていただけるのはないかと。素材の魅力を、改めて感じていただく機会になればいいなと思っています。
 
イベント情報
「ART of VISUAL」バッグプロモーション
□8月21日(水)~9月3日(火)
□メンズ館地下1階=バッグ、本館地下1階=トラベルバッグ
■展開ブランド:<ボエム><ダニエル&ボブ><ステファノマーノ><ランツォ>
*<ランツォ>のみ本館地下1階=トラベルバッグで展開
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Photo:Shimpei Suzuki
Text:Ryuta Morishita

*価格はすべて税別です。
*2019年10月1日(火)より消費税率が変更されます。

お問い合わせ
メンズ館地下1階=バッグ
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