バイヤー稲葉が探求する<イセタンメンズ>のスーツを求めて...ウール産地”尾州”での貴重な旅の記録|ISETAN MEN'S Buyer’s blog 稲葉 智大 vol.1
伊勢丹メンズ館のバイヤーによる「ISETAN MEN'S Buyer’s blog」は、商品の企画から店頭に並ぶまでの裏側を、バイヤー自身の言葉で伝える連載企画。普段は見えにくいものづくりの現場をブログ形式で発信していきます。
今回は、メンズ館5階 メンズテーラードクロージングのバイヤー稲葉が2026年春夏シーズンに展開する<イセタンメンズ>の「スーツ」を探求する「旅(出張)」の中で、ウールの産地”尾州”で経験した発見、工場の風景や職人、スタッフとのコミュニケーションまで、リアルな体験をレポートします。
メンズテーラードクロージング バイヤーの稲葉です。
先日、伊勢丹メンズのPB(プライベートブランド)のスーツ開発に関わる出張で、尾州(愛知・岐阜)を訪れてきました。目的は大きくふたつ。ひとつはPBスーツの開発・選定の現場を見ること、もうひとつはブランド側と産地との連携について掘り下げることです。今回はその現場レポをお届けします。
今回バイヤー稲葉が出張で訪れた、愛知県一宮市の風景
世界三大ウール産地“尾州”
愛知県 名古屋鉄道 駅構内
まず押さえておきたいのは、尾州が日本を代表するウール産地のひとつであり、イタリアのビエラ、英国のハダースフィールドと並ぶ、世界三大ウール産地であるということ。
ここで作られる素材は品質が高く、世界中で評価されています。一方で産地を取り巻く環境は決して良いものではありません。量産品は海外の安価な生地に流れる傾向があり、発注量が減少しています。また高齢化や後継者不足といった課題もあります。
<イセタンメンズ>PBスーツの生地生産を担う、葛利毛織株式会社(文化庁 登録有形文化財)正面入口 外観
染色や仕上げを担う加工業者も同様に厳しい状況です。職人や設備を抱える工場は減少傾向にあり、生産力が上がらない。現場を訪れるたびに、生産者の皆さまの厳しさを実感します。個人的には「いいものを作る現場」の声を、我々がどう支えられるかを考えることが重要だといつも感じています。百貨店として良い素材や技術をちゃんと伝える「言葉」や「場」を作ることは必ず力になるはずだと信じています。
尾州とタッグを組み製作される「<イセタンメンズ>のスーツ」
伊勢丹メンズのPBに関して言うと、日本の産地との取組を軸にしている点が特徴です。また縫製は岩手にある東和プラムさんという国内屈指の縫製工場で行われています。現場で見たのは、素材をどう活かすかという細かな設計思想と、生地の個性を最大限に引き出す縫製の妙。そうした“川上からのものづくり”が、PBスーツの根底にあると感じました。
今回の出張で改めて思ったのは、現場との交流の重要性。実際に産地に足を運ぶことで見えてくる課題や可能性があるし、それを正しく伝えるための知識や表現力を持つことが百貨店の武器になる、と。写真や資料を繋げて記事にすれば、お客さまにも理解してもらいやすくなるはずです。
「MATERIAL GEEK」の異名を持つ藤内裕司氏と共に訪れた 有限会社テキスタイルラボ 入口
最後にひとこと。良い素材と丁寧な縫製があってこそのスーツ。PBだからこそできる“産地との距離の近さ”を、これからもきちんと発信していきたいと思います。次回は取材の写真や工場の声を交えつつ、もう少し具体的な生地選びの裏側を紹介しますね。お楽しみに!
Photograph&Text:Tomohiro Inaba
*価格はすべて、税込です。
*本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。商品の情報は予告なく改定、変更させていただく場合がございます。
お問い合わせ
伊勢丹新宿店 メンズ館
メールでのお問い合わせはこちら
