──では世界チャンピオンが敬意を払い、バイヤーがラブコールをおくった小野寺さん、お願いします(笑)。見どころを教えていただけますか。

小野寺
(笑)。ただ真似るだけなら誰でもできる。空手をやってきたからこそできることをかたちにしたかった。あらためて私物の道着もひっくり返して矯めつ眇めつしてつくりました。ファブリック、コンストラクション、シルエット。そのすべてを突き詰めました。


小野寺 仲間内の評判も悪くなくホッとしました。まわりは指導者になっている人間が多い。自分用に白の生地でつくったんですが、道場で着たいっていってくれました。携帯電話が入れられるポケットは喜んでもらえました。そうそう、ジッパー仕様の前開きも。道着で用を足すのは厄介ですから(笑)。


杉野 胸元に入れた携帯電話は前かがみになったときに落としますしね(笑)。

──ファブリックは、これはシアサッカーですね。

小野寺 ええ。伊勢丹といえばトラッド、プレッピーを大切にする百貨店ですからね。ただ、白地にブルーのストライプはさすがに少々派手なので、いろいろ試してネイビーのトーンオントーン、それとブラックの無地の2色に落ち着きました。



──機能素材はどこにつかわれているんですか。

小野寺 このシアサッカーはクールマックスを織ったもの。なので涼感に優れます。

──なるほど。寝苦しい夏もこれなら心地よく眠れそうです。コンストラクションはいかがですか。

小野寺 袖型にインラインでもおなじみのスプリットラグランを採用しました。フロントはセットイン、バックはラグランというコートでもつかわれるパターンですね。一般的な空手着はセットインですから、ずいぶんと着心地が違うはずです。
杉野 
関節まわりの動作がすこぶる快適で驚きました。生地もなめらかなので腕を引いたときに胸元にたまる⽣地のごわつきもない。伸びのある空⼿の動きを妨げないのですから、もちろん普段の⽣活ならノンストレスですね。


小野寺 パンツもやはりインラインで展開しているスリーピングパンツをベースにアップデートしました。Tシャツに合わせてもサマになるパターンを引いています。テーパードさせたシルエットながら、腰回りにゆとりをもたせつつ、ガゼット仕様(運動量を補うためのマチ)を採っていますので股割りもノンストレス。
杉野 手にした瞬間に見惚れたのが前えりのギザギザのステッチでした。


小野寺 G-1などのミリタリーの意匠を採り入れています。道着とトーンオントーンの糸なので悪目立ちすることはありません。わかる人がわかるこういうあしらいは服屋のこだわりということで(笑)。

──甚兵衛に変わる街着としてのポテンシャルをひしひしと感じました。

杉野 空手道における“残心”とパジャマがもつ“安らぎ”が高度な次元で調和した、まさに伝統と革新の一着ですね。ベッドから公園までというのがこの服のコンセプトとお聞きしましたが、世界を転戦していたときは高まった気持ちを鎮めるべく起き抜けに宿から公園へとひとっ走りしたものです。残念ながらそのとき身につけていたのはジャージーでした。これが着たかった(笑)。



空手道着パジャマ 30,240円


Photo:Tatsuya Ozawa
Text:Kei Takegawa

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